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      失敗しない,上手な花の育て方 第7章 5      
     (花木)


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シコンノボタン鉢植えの仮植え
 ダイアンサスの苗が少し大きくなるまで,鉢植えのシコンノボタンを仮植しました。降霜前に,別途養成中のカリフォルニアポピー(10号の陶器鉢に植栽)と入れ替えます。こうすると,継続して花壇の観賞価値を高めることができます。 
 なお,高さのある鉢は花壇に立体感を出すた
めに活用しています。

                



 第7章 5 
なーるほど!かゆいところに手が届く              栽品目別上手な花の育て方(自宅での栽培事例) 

 目 次→下線を引いた各項目をクリックすると,本文にリンクします。

5 花木
 

  アジサイ             エリカ
  ギョリュウバイ(魚柳梅)     クチナシ
  コニファー            サルスベリ
  シコンノボタン          ツツジ
  ノウゼンカズラ          ハイビスカス
  バラ(地植え)          バンマツリ
  フジ               ムクゲ
  ランタナ    
  


5 花木

 ★アジサイ


□特徴
        (写真1)              (写真2)
  アジサイ展示 かごしまフラワーパーク  アジサイ展示 かごしまフラワーパーク
 小雨に濡れて咲くアジサイを眺めていると,うっとおしい梅雨もしばし忘れてしまいそうな快い気分になります。ところで,去年は花がたくさん咲いたのに,今年は花数が少なかったという経験はありませんか。せん定の時期や方法,施肥などを見直せば花数は増えます。
 アジサイ科。原産地はアジア,アメリカです。日本のアジサイが海外で改良されたものがハイドランジア(西洋アジサイ)です。日本でも品種改良がなされ,品種数がとても増えています。
 寒さには強い落葉低木樹です。明るい日陰か,強い西日が当たらない場所が適しています。ヤマアジサイは,明るい日陰が適しています。強光線は好ましくありません。写真は,2015日にフラワーパークかごしまで撮影したものです。
□栽培のポイント
 放置しておくと年々株は樹高が高くなり広がるので,剪定する必要があります。
(1)
剪定の時期
 10月頃に枝の先端部に花芽ができるので,それ以降はせん定しないようにします。ただし,十月以前にせん定する場合も,剪定が遅れると,せん定後その頃までに新しく伸びた枝が充実しないと花芽ができません。ですから,開花後速やかに剪定することを勧めます。
 特に,樹高を低くするために,低い位置で剪定する場合には,できれば花後すぐに,遅くとも7月中旬ぐらいまでには終わるようにします。
(2)剪定の方法
 草丈が短い株は花から1〜2節下で切り戻します。樹高を低くする場合は,あまりにも低い位置で剪定すると,花芽分化が始まる10上旬頃までに,花芽ができる十分な大きさに生育できないので,翌年の開花は期待できません。地ぎわから4〜5節,草丈で4050a程度,節の上で切り戻します。
 地ぎわから伸びてくる枝(徒長枝)は,ほとんどが翌年に咲きます。開花する枝よりも高く伸びると,花が目立たなくなるので,他の枝の蕾が確認できたら,枝が見えない位置まで切り戻します。
 品種によって異なりますが,ヤマアジサイでないものは,鉛筆より細い枝には蕾ができない場合が多いので,地ぎわから切り捨てます。   
 枯れ枝も同様に切り捨てます。枯れ枝を放置すると,新しい枝葉が伸びにくくなります。
(3)
整枝
      (写真3)              (写真4)
    花つきがよいアジサイ   花つきがよくないアジサイ
 整枝,剪定をする前に,最終的にどのような状態で花を咲かせたいか頭に描いておくことが大切です。アジサイも,株全体を覆い尽くすようにして花が咲くことがベストです。写真は,地際から伸びた徒長枝が3本伸びて,株上部に見えていますが,これが見えないように早めに切り戻していたらベストだったと思います。
 品種によっては,あまり手をかけなくてもいい状態になるものもあるかもしれません。ただ枝数が多いと,花数は増える可能性はありますが,花は小さくなります。また,アジサイでは花の咲かない枝が増えて花が目立たなくなります(写真4)
 そこで,見応えのある花を咲かせるには,1株にどれぐらいの花を咲かせたいか決めて,枝数を制限します。そのためには,品種の特性をよく見極めておく必要があります。現在育てている株があれば,開花時に咲いている枝の数,咲いていない枝の数,花の咲いている枝で最も細い枝の太さ,最も大きな花の大きさをよく調べておきます。
 咲いていない枝の数が多ければ整枝の数を増やします。目標とする花の数よりも少し多めに枝は残しておき,蕾が出始めたら細い枝を間引きます。
 品種や株の大きさにもよりますが,直径80100aぐらいの株であれば4060輪程度花が咲けばよいと思います。ちなみに写真3のアジサイは,52輪咲いています。
   (写真5)
剪定後しばらくのアジサイの萌芽 特性がわかっていなければ,剪定後基本的に太い枝には2つ,細い枝(鉛筆よりも太い枝)には1つ花が咲くよう整枝をするとよいでしょう。細い枝にたくさん枝を残すと,ほとんど花は咲きません。整枝は剪定後新芽が出てきたら,できるだけ早めにすると,残された枝の充実がよくなります。開花終了後すぐに剪定すると,11日には写真5のように新芽が出てきます。緑色の新しい枝には節から1〜3個萌芽しますが,古い枝からはあちこちからたくさん萌芽します。
 新しい枝には枝の太さに応じ1〜2個芽を残します。古い枝については,目標とする開花数から,新しい枝に残した芽の数を引いて,できるだけ上位の太い芽を残します。また,翌々年の開花枝の確保と,株の高さをできるだけ低くするため下位節にある太い芽は残します。地際にわずかに見えている芽は徒長枝になり,翌々年に開花します。
(4)
肥料など
 2
月中,下旬には萌芽し始めるので,その頃までには肥料を施します。開花終了後,剪定と同時に追肥します。特に低い位置でせん定した場合には,花芽分化時期までに枝を伸ばし充実させるために,充分な追肥とかん水が必要です。適正な施肥,かん水,整枝でできるだけ太い枝を増やすと,花数が多くなります。
 アジサイは水分を好むので,夏場に乾燥が激しく,葉が少ししおれ始めたらたっぷり水やりします。排水のよい所は株の周辺を円状に,傾斜地は株の上部を半円形上に溝を切り,水やりや雨水が効率よく利用されるようにするとよいでしょう。また,株のまわりはわらや堆肥を敷き(堆肥マルチ),土壌の乾燥を防ぐようにします。
     (写真6)
アジサイの花色 赤色は酸性にしない アジサイの花色は品種にもよりますが,土壌酸度の影響を受けます。アルカリ性が強くなるとピンク色に,酸性が強くなると青色になりやすくなります。桃・赤色系のアジサイ(写真6)は,酸性土壌では花色がぼけるので,土壌をアルカリ性にする苦土石灰などを株元に施せば,鮮やかな色になります。青系のアジサイには苦土石灰は施さないようにします。青系の花がピンク色に変化してきた場合には,酸性肥料の硫酸カリを施用します。
(5)その他
 鉢栽培の株は,開花後剪定をして,ひとまわり大きな鉢に植え替えます。挿し木は庭土を用土にしてもよいぐらい容易で,1か月程度で鉢上げできます。
□アジサイの仲間,アナベルとカシワバアジサイ
      (写真7)
アナベル アナベル(写真)はアメリカ原産です。アジサイよりも茎が細く,一つ一つの花は小さいのが特徴です。咲き始めは薄いグリーンですが,徐々に白に変化していきます。開花期間はアジサイとほぼ変わりません。
 花芽は新しく伸びた枝の先端に月以降つくので,剪定はアジサイのように急ぐ必要はなく3月末までに終了します。
 カシワバアジサイは北アメリカ東部原産です。葉は大きな切れ込みがあり,カシワの葉に似ていることが名前の由来です。秋になると紅葉するのも特徴です。花房は円錐形で,花色は白から,ピンクやグリーンに変化し観賞期間は長くなります。ただし,そのままでは翌年の花は期待できません。7月中にアジサイと同様な方法で剪定します。
 花を長く楽しみたい場合は,一部花のついた枝を残してもよいと思います。苗木は植えた年は幹が太るばかりで,枝数が少ないので,春先の萌芽前に株元で切り戻します。八重の品種は特に花が大きく重いので枝が曲がるので,支柱が必要です。
□病害虫
 カタツムリや,時にバッタなどが葉を食害します。見つけ次第,捕殺します。乾燥による根傷みや肥料不足などで株が弱ると,品種間差もありますが,斑点病や炭そ病が発生しやすくなるので注意します。

 写真7〜17:フラワーパークかごしまで撮影したアジサイ(2019年6月6日)
      (写真7)       (写真8)        (写真9)
  アジサイ品種 アジサイ品種 アジサイ品種
      (写真10)       (写真11)        (写真12)
  アジサイ品種 アジサイ品種 アジサイ品種
      (写真13)       (写真14)         (写真15)
  アジサイ品種 アジサイ品種 アジサイ品種
      (写真16)       (写真17)
  アジサイ品種 アジサイ品種


 ★エリカ 

□特徴 
     (写真18)
エリカ ツツジ科の針葉樹のような葉をした常緑低木です。ヒースと言う言葉をよく聞きますが,これはエリカの英名です(写真18)。原産地はヨーロッパと南アフリカですが,両者は耐暑性,耐寒性に差があります。ヨーロッパ原産種は,耐寒性はかなり強いですが,高温多湿には弱いので,日本での栽培は,ある程度寒さに強い南アフリカ原産種のジャノメエリカ,メランセラ,ファイヤーヒース,クリスマスパレードが適しています。ジャノメエリカは特に寒さに強く,マイナス5度程度でも耐えます。メランセラとファイヤーヒースは,軽い霜程度なら大丈夫です。クリスマスパレードは,霜に当てないように注意します。
 開花期は長く,おおむね12月ですが,メランセラは開花始め,終了が早くなります。ジャノメエリカとメランセラは,スズランをごく小さくしたようなピンク色の花が樹全体をびっしりと覆い尽くすように咲きます。
 ファイヤーヒースとクリスマスパレードは,筒状の2〜3a程度の細長い花がたくさん咲きます。花色はファイヤーヒースがオレンジ,ピンクで,クリスマスパレードは,白,赤,オレンジ,ピンクです。
□栽培のポイント
 日光を好みますが,高温時には午後からの強い日差しが当たらない場所が適しています。肥料は,開花終了後と開花開始1か月前に施します。
 ジャノメエリカやメランセラは,1.52.5bを越す程度の高さになります。カイガラムシがつくことがあるので,開花が終了後枝を透かして,風通しをよくします。花壇の中で,全体のバランスを見て,高さや幅を調整する程度の剪定でよいと思います。
 鉢栽培では,全体の3分の1〜2分の1程度切り戻します。
□病害虫
 カイガラムシがつくことがあります。見つけ次第,硬めのハブラシなどで掻き落とします。まれに,ミノガが多数つくことがありますが,捕殺します。病気は特にありません。


 ★ギョリュウバイ(魚柳梅)

□特徴
      (写真19)
ギョリュウバイ 赤 フトモモ科。原産地はニュージーランド,オ
ーストラリア。花色は,赤,ピンク(写真19)
(写真20),複色です。一重と八重があります
。小さな花が,枝いっぱいに散りばめられたよ
うに咲きます。10月下旬〜月上旬までと,開
花期間が長いのが大きな特徴です。長年育てる
と2〜3b以上の高さになります。
 日当たりを好み,軽い霜が降りても枯れるこ
とはありません。鉢栽培では水分不足になると
,葉がポロポロと落ちて株枯れをおこしやすい
のですが,地植えではいったん活着すると,意外に土壌の乾燥には強い品目です。コンパク
トに仕立てることができます。
□栽培のポイント
    (写真20)
ギョリュウバイ 白 花芽は秋以降にできるので,剪定は花後に行います。強風で倒れやすいので,地ぎわから3050a程度の高さに切り戻し,主幹を太くします。ただし,切り戻した位置から下の部分に小枝が着生していないと枯れ込んでしまうので,注意が必要です。小さな枝が密生するので,込み入ったところは,枝を透かします。
 コンパクトに仕立てるためには,6〜7号(直径1821a)の鉢に苗を入れ,鉢ごと埋め込み,根の生育を制限します。こうすると鉢のまわりに,草花を植え込みやすくなります。肥料は,切り戻し後に施しますが,肥料を多く必要とする品目ではなく,コンパクトに育てるため,控えめにします。
 ほとんどの花木は挿し芽ができますが,ギョリュウバイについては,いろいろ工夫をしてみましたが,成功しませんでした。こぼれダネから,まれに苗ができることがあるので,完熟した種子をまけば,繁殖できるかもしれません。
□病害虫
 病気は特にありませんが,月下旬頃からミノムシが発生することがあります。まれに,大発生して葉が著しく食害され枝が枯れ込むことがあります。見つけ次第捕殺します。       


 ★クチナシ 

□特徴
      (写真21)
クチナシ 原産地は,日本,中国,台湾などの暖地,亜熱帯地域です。アカネ科の常緑低木で,成長は遅く,高くなっても2b前後です(写真21:燐家S宅にて撮影)。一重もありますが,園芸品種はほとんど八重です。矮性種も有ります。香りがとてもよいのが特徴です。諸説あるそうですが,実が熟しても割れることがないことから口無(クチナシ)と呼ばれるようになったとのことです。オレンジ色に熟す実は,つけものなどの着色料や,生薬として利用されているそうです。
□剪定の時期と方法
 春と花後の秋に,2回枝が伸び,その先端に花芽がつきます。ただし,花が咲くのは,6〜7月の年に1回です。
 ですから,剪定は,花後の7〜8月,できれば花後速やかに行います。長い枝を少し切り込む程度の剪定にすると,花数が増えます。枝葉が込み入った部分は,光がよく当たり,風とおしがよくなるよう細い枝を中心に間引きます。
□日当たりなど
 明るい日陰,午前中は日が当たっても,午後からは強い日が当たらない場所が適しています。夏の高温・土壌の乾燥,冬の強風や強い霜は苦手です。
□肥料
 鉢物は,冬を除いて2か月に1回IB化成(緩効性肥料)を施します。露地は,花後の8月と,新芽が伸び始める前の2月下旬〜3月上旬頃に化成肥料を施します。 
□病害虫
 大きな鱗翅目の幼虫(オオスカシバ)がよく発生します。放置しておくと,葉が食い尽くされます。見つけ次第捕殺します。


 ★コニファー 

□特徴
     (写真22)
這性コニファーを取り入れた玄関横の春花壇 針葉樹の総称をコニファーと呼び,たくさんの種類があります。夏の高温多湿,土壌の乾燥,それに台風に強い樹種を選定します。ゴールドクレストはやさしい緑色で人気がありますが,元来ヨーロッパで室内の鉢用として育成されています。ですから,露地植えとしては日本の夏の気候に適しているとは言えません。
 その他にも,灰青色の葉が美しいブルーアイスなど,ヨーロッパや北アメリカ原産の樹種は,高温時は土壌の乾燥や過湿で葉先や枝が枯れ込みやすくなります。また根の張りが悪いために強風で倒れやすいので注意します。
 コフニファーと石をうまく組み合わせて,ロックガーデン風に庭を造ると,雑草が生えにくく管理がしやすくなります。草花を少し配置し,年に2〜3回植え替えると季節感が出て変化も楽しめます(写真22:玄関前)。ただし,大きくなるとかなり根が伸びるので,周辺の花壇などへの影響を考慮して,植え付け場所を選定する必要があります。
□栽培しやすい樹種
      (写真23)
ヨーロピアンゴールドと東側春花壇 従来から馴染み深いカイヅカイブキや黄金クジャクヒバを除いて,土壌の乾燥に比較的強い樹種をいくつか紹介します。ヨーロピアンゴールド(写真23)はニオイヒバの品種で,葉は黄金色で美しく,手で触ると香りがよく,形も円錐形で整っています。樹高は5b程度です。
 ローズダリスやエレガンティシマはコノテガシワの品種です。ローズダリスは樹形がもこもことした卵形で,コノテガシワと言えば,一般的にはローズダリスを指します。3月から5月の頃は新緑がひときわ鮮やかです。樹高は3b程度になります。エレガンティシマは円錐形で,樹高は約5bです。土壌が乾燥すると,葉先が少し枯れることがあります。冬季は葉が茶褐色になります。
 ブルースターは灰青色で,伸びは非常に遅く,樹高は3050a程度です。エクスパンサー・オーレオ・バリエガータは,ほふく性で横に広がります。株の広がりはほぼ2bです。樹高は6090a程度で,緑色に黄色の斑入りの葉が特徴的です。
□栽培のポイント
 新芽が伸び始める前の2月に剪定します。カイヅカイブキなど樹種によっては,樹が大きくなって芽のついていないふところ枝の部分を剪定すると,新芽が出てこない場合があります。そのような樹種は,芽がついている部分を残して剪定します。植え付けの適期は,3〜4月です。

 
  ★サルスベリ 
 
□特徴
     (写真24)
サルスベリ サルもすべり落ちそうな(?)ツルツルした枝の先端に,小さな花を房状にたくさんつけて夏の暑い盛りに鮮やかに咲き誇ります。ミソハギ科。原産地は中国。新しく伸びた枝の先端に花芽をつけます。4月上旬に新梢が伸び始め,6月下旬から8月中旬頃まで開花します。開花後,枝を先端から3分の1程度切り詰めると台風対策にもなりますが,ほぼ一か月後の9月中旬頃から10月極上旬まで再び花が楽しめます。花色は赤,ピンク,白,藤色などです(写真24:真夏の青空を背景にさわやかに咲くピンクのサルスベリ)。
 狭い場所には,枝の伸びが小さい一歳サルスベリが向いています。この系統は,種をまいたその年に開花します。翌年は,通常のサルスベリ同様に管理します。近年夏を彩る街路樹として,低い樹形でまとまって植栽とされています。
□栽培のポイント
 庭が広ければ問題はありませんが,放任すれば4〜5b以上の大きな木になります。低くコンパクトに仕立てたい場合には剪定します。前年枝から出る枝は細く,放って置くと花が貧弱になります。
 冬に備えてできるだけ木を充実させるために,すっかり葉が落ちてから剪定します。地域によって異なりますが,暖かい所では3月中旬頃から萌芽し始めます。落葉から,この萌芽一か月ぐらい前までに剪定を終えます。
 20
30a程度に低く切り戻しても,よく萌芽し,条件がよければ新しい枝は2b以上伸びます。地際で切っても,枝が伸び開花します。細い枝は基部から切り落とし,太い枝は基部を5a程度残して切ります。
□病害虫
 病害虫の発生を避けるために,風通しのよい場所に植えることが良い花を咲かせるポイントです。剪定時に細い枝を残すと過繁茂になり,風通しが悪くなってアブラムシやカイガラムシ,ウドンコ病など病害虫発生の原因にもなります。アブラムシが大量発生すると,その排泄物を栄養源として,葉や枝がススのように真っ黒くなるスス病が発生します。カイガラムシが発生していたら,固めの歯ブラシなどで掻き落としておきます。


 ★シコンノボタン 

□特徴
      (写真25)
シコンノボタン ノボタン科。原産地はブラジルです。花色は紫(写真25),ピンクが主ですが,白もあります。8月下旬に蕾が見え始めます。開花は,8月中旬〜11月ととても長く,株を覆うようにたくさん花をつけるのが特徴です。霜が降りない地域では,4〜5b程度の高さに生長します。
 霜が降りなければ,12月になっても咲きます。春先に開花することもあります。 
□栽培のポイント
 日当たりを好みますが,明るい日陰であれば十分開花します。寒さには弱いので,霜が当たらない場所,あるいは室内で冬越しさせます。月に挿し芽して,冬越しをさせるとよいでしょう。土壌の乾燥には強い方です。
 挿し芽は容易です。80aの長さの枝でも,挿し芽は可能です。詳細は,第章5のとおりです。挿し芽後3週間程度で鉢上げできます。花が終わってから,大きくしたくない場合は,好みの高さに枝を切り詰めます。
 強風で折れやすいので,しっかりとした支柱を添えます。台風の接近をまぬかれない場合には,予め挿し芽をしておくとよいでしょう。
□病害虫
 8月上旬にミノムシが発生することがあります。


 ★ツツジ 

□特徴
     (写真26)
ツツジ 原産地は日本,中国などの東アジア。全般的に花や葉が小型のキリシマツツジ,それより大きめの中型のクルメツツジ(写真26:「品種:太陽」),さらに大型のケラマツツジやヒラドツツジなどが代表的です。常緑性のものがほとんどですが,ハヤトミツバツツジのように落葉性のものもあります。
 サツキは,ツツジ科サツキツツジ属で,一般的にツツジ(ツツジ属)と呼ばれるものとは属が異なります。サツキは,ツツジより開花始めが1か月ぐらい遅れ,葉や株が小ぶりです。
 なお,アザレアはヨーロッパでツツジから改良された室内観賞用品種で,花は八重咲き,フリル咲きです。生産者は,冷蔵処理した株を温室で育て,104月まで出荷します。ツツジと異なり,寒さにはやや弱く,冬は室内に取り込む必要があるとされていますが,強い霜にあわなければ外でも冬越しができます。
□栽培のポイント
 開花終了後,剪定が遅れると徐々に花数が減少します。ただし,花数が減少しても花が大きくなるため,全体としての観賞価値が保たれますが,開花後1か月程度以内の剪定が無難です。品種(開花時期)によって異なりますが,花芽が形成される6月下旬以降は,剪定は避けます。
 深い剪定は,萌芽数は増えますが,花芽の数は少なくなります。高さを調整するため深く刈り込む場合は,開花後速やかに行います。
 ツツジは酸性土壌を好むので,植え付け時に苦土石灰などのアルカリ性肥料は施しません。根鉢の用土と,植え付け場所の土壌の種類が異なる場合は,そのまま植え込むと,新しい根が長期に渡ってほとんど出てこないことがあります。
 根鉢の用土を半分程度落として植え,周りに完熟たい肥やピートモスを混ぜた鹿沼土を入れて,新根の発根を促します。
□日当たりなど
 日照を好みます。高温,低温に強い品目です。土壌の乾燥にも強く,露地植えのものには,自宅ではこれまで水やりをしたことはほとんどありません。
□ 病害虫
 蕾を食べるベニモンアオリンガが発生することがあります。オルトラン水和剤などを散布します。グンバイムシやハダニが発生することもありますが,自宅ではこれまで薬剤散布をしたことはありません。
 肥料不足などで生育が思わしくない場合は,グンバイムシやハダニの発生が多くなるように思われます。


 ★ノウゼンカズラ

□特徴
        (写真27)             (写真28)
   駐車場まわりのノウゼンカズラ   玄関前,東側花壇のノウゼンカズラ
 夏の青空を背景に,淡いオレンジ色の涼しげでさわやかな花が,見事に咲き乱れます。つる性のノウゼンカズラは,支柱を利用したスタンド仕立てや棚仕立てにするとよいでしょう(写真2728)。蜜を求めて集まるアゲハチョウが,美しさをよりいっそう引き立たせます。
 ノウゼンカズラ科。中国原産の落葉樹です。日当たりのよい場所を好みます。3月中旬に新芽が吹き,5月下旬には発蕾します。一つの枝の先端に3050輪の蕾が房状につきます。一輪の開花期間は2〜3日と短いのですが,蕾の数が多いので3週間程度花を楽しめます。6月中旬から7月上旬,7月下旬から8月中旬頃まで二回に分けて,咲きます。肥料や水が不足して,わき芽の伸びが止まると花が咲かなくなるので注意します。
 アメリカ原産のアメリカノウゼンカズラは花がやや小型で,赤,オレンジ,黄色の花色があります。つるの伸びはよいのですが,小苗からでは開花までは3年以上かかります。
□支柱の立て方
 つるや葉が多くなると強風で倒れやすくなります。支柱の高さは2〜3b程度,太さは直径3a以上のできるだけじょうぶでさびにくいパイプを使用します。
 倒伏防止のために,支柱の其部はブロック(1〜2個)の穴に入れ,セメントで固定します。支柱の4分の一程度は埋め込むとよいでしょう。なお,このような支柱はバラなど他の植物のスタンド仕立てにも応用できます。
□栽培のポイント
 植え穴の広さと深さは根鉢の2倍程度にします。小苗の場合は30aぐらい植え穴を掘り,スコップで2〜3杯の完熟した堆肥と,IB化成一握りを入れます。その上に土を被せてから,苗をポールに寄り添うように植えます。植えつけ後は水をたっぷりかけます。
 早く花を咲かせるには,幹を早く太らせるようにします。地ぎわから出るひこばえは取り除き,枝は一本にします。ポールの先端まで枝が伸びたら芯を止め,つるが先端の部分から多く出るようにします。つるは落葉後に基部まで深く切りつめます。太くて勢いのよいつるが出ると,花つきがよくなります。
□病害虫
 ごくまれに,スズメガの幼虫が発生して,葉を食害することがあります。幼虫は枝の色とよく似ているので,見つけにくいですが,放置しておくと葉がみるみるうちになくなってきます。食害の跡がないか,ときおり注視する必要があります。


 ★ハイビスカス 

□特徴
       (写真29)            (写真30)
   オールドタイプのハイビスカス   ハワイアンタイプのハイビスカス
 ハイビスカスは,3つのタイプがあります。流通しているものの多くは,オールドタイプ(写真29,在来系:201510月フラワーパークかごしまにて撮影)で,花の大きさは中くらい,花数は多いほうです。コーラルタイプは,花に切れ込みがあり,うつむき加減に咲きます。花数は多く,他のタイプより寒さ,暑さに強いと言えます。ハワイアンタイプ(写真30201510月フラワーパークかごしまにて撮影)は,他のタイプより花は大きいのですが,花数は少なく,暑さ,寒さに弱いのが特徴です。
 ハイビスカスは,新しく伸びた枝の先端に4月中,下旬頃から花芽を着け,5月から次々に開花します。基本的に1日花ですが,近年は2日咲く品種も出てきました。真夏に咲き誇るイメージがありますが,30度以上の高温は意外と苦手で,夏が終わると花数が増えてきます。ハワイアンタイプは,特にその傾向があります。
 霜が降りる地域での露地栽培は望めません。日当たりを好みますが,夏は,午後から強い西日が当たらない場所が適しています。
□栽培のポイント
(1)剪定の時期
 剪定は,霜が降りる前までに行います。露地では霜の恐れがない地域では,開花が終わり次第速やかに剪定すると,脇芽が伸び,翌年の開花が早くなります。春に行う場合は,芽が動き出す前に剪定すると,萌芽や新芽の伸びが早まり,開花も早くなります。
(2)剪定の方法
     (写真31)
剪定が必要な良く伸びたハイビスカス 鉢物は,全体の分のから分の程度の高さまで切り戻します。露地では,品種によっては年で草丈が1.5b以上伸びます(写真31202010月フラワーパークかごしまにて撮影)。草丈が伸び過ぎると,台風による倒伏を招くので,4050a程度の高さに切り戻します。よく伸びる品種は,さらに低く切り戻します。
 中心部へ伸びる枝は風通しを悪くするので取り除き,最終的に太い枝を主幹として4〜5本残します。この主幹が年々太くなり,強風に強くなります。主幹の高さ半分以下から伸びている枝は,風通しをよくするため,基部から全て切り捨てます。上の方に残っている10a以上の枝は伸び過ぎるので,基部で切り捨てます。残りの10a以下の短い枝は,次年度の開花枝として据え置きます。
(3)肥料
 露地では,萌芽が始まる月中,下旬頃までに基肥(肥料成分が8-8-8もしくは10-10-10)を施します。その後は,2か月に1回追肥をします。鉢栽培では,冬を除いて,萌芽が始まる頃から,2か月に1回IB化成(8号鉢であれば8〜10粒)を施します。肥料不足で枝数が少なくなると,花数が減少します。
(4)冬越し
 霜が直接当たらない場所であれば,外でも冬越しできます。狭い室内に持ち込む場合は,コンパクトに剪定します。あるいは,月下旬頃に挿し芽をして,発根した小さい苗で冬越しします。
□病害虫
 風通しが悪くなるとアブラムシやコナカイガラムシ,ハマキガなどの発生が増えてきます。枝が密集している部分は,見つけ次第細い枝を中心に切り捨て,風通しをよくします。



 ★バラ(地植え)


□特徴
        (写真32)            (写真33)
   バラ品種 ストロベリーアイス   ストロベリーアイス咲き始め
 バラ科。原産地は中近東,東アジア。「風通しがよく,日当たりのよい場所」がほとんどの花にとってよい環境なのですが,バラにとっては特にこのことは重要です。適温は,1525度(厳密に言えば昼温2025度,夜温1518度)で,冷涼な気候を好みます。
 バラは,全体の形状から木立ち性(ブッシュローズ),半木立ち性(半つる性),つる性(クライミングローズ,略記:CL)に分類されます。また,花の大きさや輪数などから,主な系統として,ハイブリッドティー(略記:HT,四季咲性大輪一輪咲き品種,木立ち性),フロリバンダ(略記:FL,四季咲性中輪房咲品種,木立ち性でハイブリッドティーとポリアンサの交雑種),ポリアンサ(四季咲性小輪房咲品種,木立ち性と半つる性),ミニチュア(ポリアンサを親とした交雑種,四季咲性小輪房咲品種,木立ち性,小型のバラでミニバラと呼ばれることもある)に分類されます。
 ちなみに,1867年に育成されたハイブリッドティーの第一号品種は「ラ・フランス」ですが,それ以降のバラをモダンローズ,それ以前の品種をオールドローズと呼びます。オールドローズは,一季咲で香りのよいものが多いのが特徴です。
      (写真34)
ツルバラ品種 ドルトムント 自宅では,ストロベリイーアイス(写真32,33:木立ち性,FL,八重のピンクで底白)とドルトムント(つる性,一季咲,一重の赤)などを栽培したことがあります。
 ストロベリィーアイスは,月中旬に剪定すると,月上旬に発蕾し,月上旬(日)〜月下旬(23日)に開花します。16日に剪定すると,1026日〜11月末まで花が楽しめます。剪定が928日になると,細い茎については一部咲きましたが,他の茎は蕾が出て着色し,ほんの少し花びらが開いた状態ままで,咲ききらず,観賞価値が全くありませんでした。
 ツルバラのドルトムント(写真34)月中旬に剪定すると,月上旬に発蕾し,4月下旬(28)月下旬(27日)に開花します。
□栽培のポイント
(1)株間
 株間は広いほうがよいのですが,少なくても50aは保ちます。株間が狭い場合には,株同
士の茎葉が重ならないように整枝,剪定します。
(2)施肥
 地植えの場合は,一度植えると,株が枯れない限り,植え替えることはないので,最初の
土づくりはとても重要です。植穴は,根が広く深く広がるよう,できるだけ大きく(縦横40
50a程度)掘ります。基肥には,完熟たい肥,苦土石灰,ペレット状ケイフン,油かす,
有機化成A801(N8-P8-K8)を施し,土とよく混ぜます。
 肥料のやり方は,バラの種類や品種,施肥時期や株の状態などで異なり,一概に言えませ
ん。毎年の施肥と生育結果を考慮しながら,自分なりの施肥のやり方を学んでいくしかあり
ません。ちなみに自宅では,追肥は,春の開花後(月上旬),秋剪定の直後(月下旬)
,冬剪定の直後(2月中旬)に施用しています。有機化成A801と,油かすやぺレット状ケイフンを1回の追肥で,1株にそれぞれ手で3〜4掴み施し,その上に毎回土壌の乾燥防止
と微量要素の補給をかねて完熟たい肥を敷き詰めています。
 なお,台風で被害を受けた場合にも追肥をします。その時は,速効性の有機化成A801だけ
を施します。
(3)剪定
 バラの種類,品種,生育状況,剪定時期ごとに剪定の方法を変える必要があるので,説明
がとても難しく,一概にこうだと言えません。色々な参考書を読んでも,なかなかわかりづ
らいところがあるのは,そのせいだと思われます。
 剪定にあたって,次項を留意すればわかりやすくなると思います。
  @品種の特性を十分把握する。
   品種,剪定時期,生育状況,剪定位置の茎の高さと太さによって,剪定後の茎の伸び
  ,茎の太さ,開花までの日数(至花日数),蕾の数や花の大きさが異なります。このよ
   うな品種の詳細な特性が十分に整理されたものが残念ながらありません。ですから,
  自分自身で栽培しながら,品種ごとの特性を把握し,栽培方法を改善していく以外にあ
  りません。
 A剪定の高さ
   低い位置で切るほど,その後の茎は太く,長く伸びます。一つの茎の蕾の数は多く,
  花も大きくなりますが,株全体の枝数と花数は少なくなります。ただし,全ての枝を一
  斉に極低い位置で切ると,株の勢いがなくなるので,注意が必要です。
   高い位置できれば,その後の茎は細く,茎の長さは短くなります。一つの茎の蕾の数
  は少なく,花は小さくなりますが,株全体の枝数や花数は多くなります。ただし,全体
  としての高さは高くなり,支柱がなければ強風で倒れやすくなる場合もあります。
   なお,切った位置の茎が太いほど,その後の茎は太く,長く伸び,蕾の数は多く,花
  も大きくなります。
   一般的に,秋剪定は全体の3分の1程度,冬剪定は全体の3分の2程度の高さで剪定しま
  す。最終的にどの高さで切るかは,周辺の草花,花木や背景にあるフェンスとの調和を
  考慮しながら,自分がどの高さで花を咲かせたいかで決めます。初めて剪定する品種は
  やむをえませんが,一度剪定した品種については,剪定後どの程度の高さまで枝が伸び
  るか把握しておくと,次年度からは,自信を持って剪定の高さを決めることができます
  。
   ちなみに,病害虫防除や剪定,剪定した枝の片づけなどを考えると,低い位置で剪定
  すれば全体の枝の量は少なくなるので,管理はとてもしやすくなります。
 B高さを決めた後の剪定の方法
   ポイントは二つあります。一つ目は,全体の葉によく光が当たるようにすること,二
  つ目は病害虫発生防止や薬剤散布の効果を考えて,風通しがよくなるようにすることで
  す。
   もっと簡単に言えば,それぞれの枝が重なり過ぎないようにすればよいのです。病害
  虫が発生しやすい品種は,特に風通しがよくなるよう茎葉の重なりを少なくするように
  することが重要です。
   最終的に,品種ごとに残すべき,地ぎわから伸びる主となる枝(主枝)の数を決める
  必要があります。自宅の品種「ストロベリーアイス」は,基本的にできるだけ太くて新
  しい主枝を5本残すようにしています。まず,地ぎわから伸びている枯れ枝や細い枝(
  鉛筆より細い枝),内側に向いている枝を切り捨てます。次に,枝同士が接近あるいは
  重なりあっている場合には,各枝がバランスよく配置されるよう,より細い枝や古い枝
  から除去します。株によっては,鉛筆より太い主枝の数が少ないことがありますが,そ
  の場合にも思い切って細い枝は切り落とします。というのも細い枝からは,勢いのある
  太い枝は出てこないからです。
   なお,枝を切る時には,枝が株の外側に向かって伸び,株の内部に光がよく当たり,
  風通しがよくなるよう,必ず外芽(外側に向いてる芽)の上で切ります。
   また,主枝から出た前年の側枝を残す場合には,3〜5a程度残して切ります。
 C整枝
   剪定後,各枝からはたくさんの枝(側枝)が出てきます。その上,残した主枝がバラ
  ンスよくほぼ等間隔に出ていればよいのですが,実際はそのようにはなっていないので
  ,茎葉が重なりあいます。そこで,剪定と同じく,風通しと全体の葉によく光があたる
  ように考えて,内側に向く枝や弱枝,重なり枝は基部から切り取って,整枝をします。
  病害虫の発生しやすい品種は,整枝を徹底します。
   ちなみに,自宅のストロベリーアイスは,主枝5本に,全体で14本の側枝を残すよう
  にしています。1本の主枝に,各主枝の配置や枝の太さを考え,2〜4本残しています。
 D剪定時期
   剪定は秋と冬に年2回します。夏が冷涼で冬の訪れが早い地域では,秋ではなく夏に剪
  定します。暖地で夏に剪定すると,開花が早く,温度がまだ高い時期に咲くので,花色
  が冴えません。
   一般的に秋剪定では,至花日数は4060日で,ほとんどの品種は50日前後で開花する
  と言われています。至花日数の長い品種ほど,剪定の時期を早めます。至花日数の長い
  品種の剪定時期が遅くなると,開花時期の気温が低くなり,発蕾しても開花できなくな
  ります。至花日数の短い品種は,剪定時期を早めると,気温が高い時期に咲き,花色が
  ぼけて冴えません。
   初めて栽培する品種で,至花日数がわからない場合には,最低夜温が1015度になる
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月下旬から11上旬頃に花がピークになるよう,ピークの日から50日ぐらい前に剪定し
  てみるとよいでしょう。
   冬剪定は,芽が動き出す前に行います。自宅では,月上旬に萌芽しますが,剪定は
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月中旬に行っています。整枝は,月上旬に行っています。
 E生育が悪い場合
   秋剪定の時期に,病害虫被害,台風被害などで葉が著しく少なくなった場合には,葉
  が残っている枝は,株の回復をはかるためそのままにしておきます。その他の枝は,通
  常のやり方で剪定をします。なお,葉が被害にあった場合には,速やかに追肥を行いま
  す。
   これまでに,台風被害でほとんどの葉が落ちたことがありましたが,その後秋の開花
  は思わしくなかったものの,春の開花は順調でした。
(4)ピンチ(摘心)
 株元から出てくる勢いのある若くて柔らかい枝(ベーサルシュート)は,将来充実した主
枝になる大事な枝です。そのまま伸ばすと,枝がほうき状になり,小さいながら花数は増え
ますが,ベーサルシュートだけが伸び過ぎ,全体のバランスがとても悪くなります。また,
その花を咲かせると,シュートとしての充実が悪くなります。さらに,残りの枝に行く養分
が少なくなるので,全体の生育も悪くなります。
 そこで,茎の先端に現れた蕾が小豆大になった頃に,先端部分を蕾ごと軽く摘み取ります
(ソフトピンチ)。 新しく植えたばかりの苗は,特に枝や葉の数を早く増やす必要があるの
で,べーサルシュートのピンチは重要です。回目のピンチ後,伸びてきた枝はソフトピン
チを2〜回くり返します。植え付け年目は,株作りを優先させ,ベーサルシュート以外
の枝も,摘蕾して花は咲かせないようにします。2年目以降は,枝数が増え,株が充実すれば
,秋に花を咲かせてもかまいません。
 シュートの伸びは品種によって異なります。よく伸びる品種は,樹高を抑えるため,まだ
蕾が見えないうちに,低い位置,場合によっては茎の固い5枚葉のすぐ上でピンチします(ハ
ードピンチ)。
(5)花がら摘み
 花後結実すると,次の生育,開花が遅れるので,花の観賞価値がなくなり次第,花びらが
下に落ちない内に花がらを取り除きます。房咲きの場合は,開花が終わったものから順次花
首の付け根で摘み取ります。全て(一輪咲きの場合は一輪)咲き終わったら,株が若かった
り,その枝の葉数が少なかったりする場合には,最上位の枚葉の上で切り取ります。充実
した株で,長い枝の場合は,枝の中間辺りの5枚葉の上で切り取ります。
□病害虫
(1)病気
 バラ栽培で最も問題になる病気は黒点(黒星)病です。自宅では,黒点病以外のウドンコ
病やベト病などの病気は発生していません。病原は菌で,気温が20〜25度(胞子の発芽適温
),葉が雨で時間程度濡れていると発生しやすくなります。雨が多い梅雨や秋は,特に発
生が多くなります。病原菌は茎や,落ち葉で越冬し,雨の跳ね上がりで再感染します。
 いったん発生すると,農薬散布をしても効果はありません。農薬散布は,週間天気予報を
見て雨の日の前に行います。雨が続く時期は,週間に一度,雨の合間を縫って散布に努め
ます。
 自宅では,病気については,農薬を散布していません。対策としては,次のとおりです。
 @発生の少ない品種を植えます。品種によって病気の発生に差があるので,購入時に,そ
 の点を考慮するとよいでしょう。黒点病で,株が枯れ込むことはありません。少々の発生
 は,止むなしとします。ミニバラの中には,病気に強い品種が案外あります。
 A病葉は見つけ次第,除去します。落ち葉は,発生原となるので放置しないようにします
 。
 B雨の跳ね上がりが少なくなるよう敷きわらをします。
 C水やりする場合は,夕方までに葉が乾くよう早めに水やりします。
(2)害虫
 自宅では,害虫は,チュウレンジバチ,クチヒゲハバチ,スリップス(アザミウマ),ハ
ナムグリ,ハキリバチが問題になります。ダニ,アブラムシの被害はほとんどありませんで
した。
 @チュウレンジハバチ
  3月下旬〜月上旬には,産卵前のチュウレンジハバチの成虫が見られます。数株程度
 の栽培であれば,よく観察すれば産卵前のチュウレンジハバチを見つけることはできます
 。お腹が動きが鈍いので,簡単に捕殺できます。これまでに,日〜日の間に,
 匹捕殺したことがあります。
  チュウレンジハバチは,月下旬から11月まで長期間に渡って被害が発生します。これ
 まで月上旬,月下旬,10月中旬,11月中旬に発生し,年によって異なりますが,年に
 2〜回薬剤を散布(スミチオン1000倍液)しています。
  クシヒゲハバチと違い,初期のうちは葉の縁を食害し,幼虫が数枚の葉にまとまってい
 るので,早期発見すれば簡単に捕殺でき,農薬散布をせずにすみます。
 Aクチヒゲハバチ
  バラ栽培の参考書にもあまり出てはいませんが,実際栽培してみると問題になるのがク
 チヒゲハバチの被害です。葉に小さな穴が開き出したら,幼虫がいます。幼虫は葉裏にい
 るので,農薬は葉裏にかかるように散布します。4〜月に被害が見られ,これまで最も
 多いときで月中旬,月上旬,月中旬の3回防除(スミチオン1000倍液)しています
 。
 Bスリップス(アザミウマ)
  ピンク系のストロベリーアイスについては,春の開花期にはスリップスの被害がひどく
 ,週間もしないうちに花を楽しめなくなることがあります。夏と秋に咲く花には被害が
 少なくなる傾向があります。この頃になると,花にとても小さなアリが見られますが,こ
 のアリがスリップスの天敵となっているのかもしれません。
  これまで,赤系のミニバラやドルトムントについては,スリップスの被害はほとんどあ
 りませんでした。
 Cハナムグリ
  開花始めると,花を食害始めます。捕殺しますが,発生数がかなり多い時もあり,結構
 大変です。捕殺しきれない場合には,やむをえず薬剤散布(スミチオン1000倍液)します
 。
 Dハキリバチ
  体長1214ミリのミツバチに似た黒っぽいハチです。成虫により,葉が半円形上にきれ
 いな曲線を描いて切り取られます。被害は,4月上旬頃から見られますが,被害がひどく,
 どうしようもないというような状況ではないので放置しています。


 ★バンマツリ

□特徴
 ナス科。南アメリカ,ブラジルが原産地です。月下旬から月中旬まで,2025日程度開花します。月上旬に,一部また咲きます。花弁は,咲き始めは青紫ですが,咲き進むにつれて白くなっていきます。青紫と白い花が混在する様は見事です。花の香りが良いので,咲くのがより楽しみな花のひとつです。
 常緑樹ですが,寒いと,落葉します。軽い霜程度なら寒さに耐えます。生長しても2〜3b程度の低木なので,鉢栽培も可能です。
□栽培のポイント
     (写真35)
バンマツリ 匂いが良い 日光を好みますが,明るい日陰であれば,十分花が咲きます。花後剪定をします。剪定後伸びすぎて見苦しい枝は,適宜切り詰めてもかまいませんが,深く切りすぎると花が少なくなります。写真35日撮影)は,花後剪定をした後に伸びた枝が秋になって生長が止まってから,草姿を整えるために丸く剪定した後の開花状況です。
□病害虫
 ナスの主要害虫であるテントウムシダマシにより葉が食害されることがあります。鉢植えではダニが発生することがあります。


 ★フジ
 
□特徴
        (写真36)            (写真37)
    フジ   フジだな周りの南側春花壇
 開花期間はそう長くはありませんが,桜同様春の訪れを感じさせる季節感のある花です。花色は,紫(写真36)とピンクを基調に,濃い色から淡い色まであり,微妙な色の変化を楽しめます。
 棚仕立(写真37)てにして木陰をつくり,楽しい団欒のひとときを過ごしてみませんか。家族や隣人とお茶を飲んだり,会話を楽しんだりするのもよいでしょう。
 マメ科。つる性の落葉樹で,日本,中国などが原産地です。日当たりのよい,ある程度土壌水分のある場所を好みます。品種によって異なりますが,沿岸暖地では3月下旬から4月上中旬に約2週間花が楽しめます。花芽は,6月から8月に,短枝や前年に伸びた充実したつるの基部につきます。
 なお,成長すると,根が長く伸び,周辺の花壇に食い込んできます。根が硬く,除去するの手間がかかるのでノウゼンカズラに植え替えました。
□栽培のポイント
 花を早く咲かせるには接木苗を植えます。植え穴には完熟堆肥や腐葉土を十分すき込んでおきます。チッ素肥料の施用は,棚につるが広がるまでは差し支えありません。ただし,その後は効き過ぎるとつるはよく伸びますが,花つきが悪くなるので注意します。
 植えつけは休眠期が適期ですが,その他の時期でも支障はありません。つるは棚の上に対角線上に伸ばし,枝が左右均等になるように仕立てます。枝が棚の端に届いたら先端の芯を止めます。
 
落葉後から3月上旬頃までの休眠期に,花芽を残して剪定します。花芽は丸みを帯びているので葉芽と区別がつきます。葉に光が当らないと短枝が枯れたり,花芽がつきにくくなったりするので,込み入っている枝や,弱枝は基部から切り取ります。
 
花をよく咲かせるためには,短枝を多く出すようにします。そのためには,6月下旬以降はよく伸びたつるは,葉を3〜4枚残して剪定します。
 地ぎわから出るひこばえはそのつど取り除きます。台風の直撃が予想される場合には,伸び過ぎたつるは切り戻し,枝葉がみ入った部分は透かして風の抵抗が小さくなるようにします。


 ★ムクゲ

□特徴                                   
     (写真38)
ムクゲ 夏の間に華やかに咲き誇っていたムクゲも,パンジー,葉ボタン,ポピー,スイートアリッサムなどの花々が冬花壇を彩り始める季節になると,全ての葉を落として,冬支度を始めます。来年もきれいに咲かせるには,冬の間に剪定をしておく必要があります。
 アオイ科。原産地は中国,東南アジア。ハイビスカス,フヨウ,オクラ,ハマボウなどと同じ仲間です。耐寒性は最も強く,露地で越冬できます。花色は白,白に赤目,ピンク,薄紫,薄紫に赤目など。八重咲きもあります。こぼれ種からも発芽し,挿し木も容易です。
 3月中旬頃から萌芽が始まり,新しく伸びた枝の,それぞれの葉の基部に花芽をつけます。5月中旬から発蕾し,一か月後には開花し始め,6月下旬にはたくさんの花が咲きそろいます(写真3819日撮影)。一日花ですが,9月下旬頃まで次々に花が咲きます。10月になると,葉が少しずつ落ち始めます。
□栽培のポイント
 庭の広さや景観,風当たりなどを考えて,低くコンパクトに仕立てたい場合には剪定します。放任すると細い枝が増え過繁茂になり,強風で倒れやすくなります。冬に備えてできるだけ木を充実させるために,すっかり葉が落ちてから剪定します。地域によって異なりますが,暖かい所では3月中旬頃から萌芽(新芽が出ること)し始めます。落葉から,この萌芽一か月ぐらい前までに剪定を終えます。
 地際で切り戻しても,よく萌芽し,条件がよければ2b以上伸びる枝もあります。花芽は新しく伸びた枝につくので,思いきり剪定しても心配はありません。 細い枝は整理し,太い枝を4〜5本残します。
□病害虫
 病気の発生は特にありませんが,ハマキムシの発生が多い年があります。見つけ次第,捕殺します。葉の大きな品種や,細い枝が多く過繁茂になると被害が大きくなるようです。


 ★ランタナ

□特徴
 「花は好きだけど,こまめな管理が苦手なので花作りはどうも・・・」という方にお勧めなのがランタナです。
 夏の暑い時期に管理作業がほとんどありません。成長が早く地面を覆い尽すので,広い庭のスペースをもてあまして草取りに苦労されている方にもうってつけの花です。
 クマツヅラ科。原産地は熱帯アメリカ。15度以上の温度では周年花が咲き,常緑低木になります。枝の先端に小花がたくさん集まった半円球状の花が,暖地では5月中旬頃(切り戻しをしている場合)から霜が降りるまで咲き続けます。ツル状に伸びる藤色のコバノランタナは3月下旬頃から咲きます。白や黄色など花色の変わらない品種もありますが,咲き始めは黄やオレンジから次第に赤やピンクに変化していきます。花色が豊富なので,品種をそろえれば長期間華やかな熱帯花園を楽しめます。
 花をよく咲かせるには排水と日当りのよい場所に植えます。病害虫は特にありません。土壌の乾燥にも強く,地植えでは通常の年は水やりしなくてもよい,じょうぶで育てやすい花です。肥料は萌芽前の3月上旬頃に施します。
□せん定
       (写真39)            (写真40)
   コバノランタナ 白   コバノランタナ 黄
       (写真41)            (写真42)
   ランタナ 赤   パンジー開花終了後ランタナ株の花が咲く 
 庭のスペースに支障さえなければ横方向へは放任してもかまいません。縦に伸ばし過ぎると,草姿が乱れます。伸び過ぎるようであれば適宜せん定します。コバノランタナ系(写真3941)の品種は,横に伸びるタイプで,草姿が比較的乱れないので,育てやすいと言えます。
 霜が降りて葉が落ちたら地ぎわで切り戻します。3月下旬に萌芽すると,6月には直径2bぐらいまで株が広がります。寒さが厳しい地域では,株枯れの恐れがあるので,春に霜の心配がなくなってから切り戻したほうがよいと思われます。毎年この切り戻しをしないと枝が太くなって管理がしにくくなります。また草姿が乱れます。
 切り戻した跡には,パンジーなどの草花を植えることができます。春になると,ランタナはパンジーの株の中から新芽を現わします(写真42)。病害虫の被害は特にありません。
 
鉢植えや花壇に向く,枝が伸びにくい矮性の品種があります。鉢栽培では枝数が増えてきたら,地ぎわから葉を2枚ぐらい残して少しずつ枝を切り戻していくと長く花が楽しめます。月に一度を目安に化成肥料を施します。

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