10号鉢で育てたレッドカサブランカ。植え替えなしの2年目の鉢です。次回は植え替える予定です。地植えの場合は,花数が少なくなってきたら,植え替えるとよいでしょう(後述のユリ類の項を参照下さい)。
なーるほど!かゆいところに手が届く 栽品目別上手な花の育て方(自宅での栽培事例)
目 次→下線を引いた各項目をクリックすると,本文にリンクします。
4 球根,塊茎類
アガパンサス
カラー
ダッチアイリス
ハナショウブ
ユリ類
(写真1)
ユリ科。南アフリカ原産です。花色は青,紫,白の3色。冬の低温にとても強く,暖地では下葉は幾分枯れますが,葉が青々として枯れないのが魅力です。夏季の高温,土壌の乾燥にも強い品目です。6月中旬〜7月中旬頃まで咲きます。
花茎は長く,伸びると120a程度にもなります。その先端に球状に小さな花が集まって咲きます(写真1:6月24日撮影)。葉幅は少し狭いですが,アマリリスと類似します。小輪系のわい性種もあります。大輪系より出蕾開花が早く,6月上旬から咲き始めます。
日当たりは好みますが,明るい日陰でも花は咲きます。開花後,花茎を切り取り,肥料を施します。肥料や水が多いと,花茎が長くなります。株が込み入ってきたら,10〜11月頃,株分けで増やします。親指より小さい株は,開花まで2〜3年かかるものもあるので,大きな株に1〜2芽ぐらいつけて分けます。株間は30a程度とします。病害虫の被害は特にありません。
(写真2)
日増しに暖かくなり,いよいよ生命の躍動が感じられる春になると,冬の寒さにじっと耐えていた植物も,次々に新芽を出します。アマリリスは,3月中旬頃に萌芽すると,早ければ4月下旬には花を咲かせます(写真2:品種はアップルブロッサム)。ヒガンバナ科。ブラジルやペルー原産で,半耐寒性の球根植物です。花は中小輪系もありますが,花径が20〜25a程度の大輪系が豪華です。花色は赤,桃,朱,白,複色などで,主に一重ですが,八重咲きもあります。
葉が4枚になると,花芽ができます。品種や球根の大きさによって異なりますが,1〜3本の花茎が60a前後伸び,各花茎の先端に2〜6輪花が咲きます。一つの花はほぼ4,5日咲きますが,一つの球根で二週間程度は花が楽しめます。品種がそろえば,4〜6月まで順次花を観賞できます。
(写真3)
強い霜が降りなくなったら,日当りと排水のよい場所に植えます。株間は30a程度とし,球根の上部を少し出す程度の浅植えにします。深植えや排水がよくないと,球根が腐れたり葉に赤斑病が発生しやすくなったりします。
花が咲き終わったら,種子ができないように花茎ごと折り取り,球根の肥大をはかります。あわせて追肥をします。軽い霜が降りる程度なら冬越しできますが,霜が強い地域では,秋に葉が枯れてきたら掘り上げて貯蔵します。
鉢栽培では,6号鉢であれば一球植えます。用土は庭土がなければ,花専用用土を使います。露地で育てた球根を鉢上げしてもかまいません。写真3は,開花期間中だけ花を楽しむために,蕾の時に掘り上げ,8号鉢に高さの異なる2品種を4球植え付けています。花が大きく豪華な大輪系で,色鮮やかな赤の品種はレッドライオンです。用土は庭土を使用しました。開花直前までは,光のよく当たる戸外で育て,入室後は光があたる窓際に置きます。花が終り次第,元の露地に移植すると管理が楽です。
(写真4)
「庭で眺めるだけでなく,切花としても観賞できる,手間のかからない花を育てたい」という方は案外多いようです。スイセンやユリ類などの他に,畑地性のカラーはお勧めのひとつです。
なかでも濃い緑の葉に白の斑が入いる,花(実際は苞)色が白の品種は,一度植えたらあまり手間がかからない,じょうぶで育てやすい花です(写真4)。ひとつの花は2週間程度楽しめ,後は斑入りの葉を観賞できます。病気にも強く,生育や繁殖が旺盛です。
サトイモ科。南アフリカ原産。湿地性のものと,水分が少ない畑でもよく育つ畑地性のものがあります。花色は白の他に黄,赤,ピンクなどがあります。一見花に見える部分は,葉が変形した苞と呼ばれるもので,花は中心にある棒状の部分です。
畑地性の白の品種は,自宅では早ければ2月中旬から開花し,6月上旬まで次々と花茎が伸び,花が咲きます。強い霜が直接当ると地上部は枯れますが,地下部(塊茎)は生き残り,春には萌芽します。明るい日陰を好み,午後から日が当らない場所であれば,夏場もよく育ちます。
強い霜が降りない時期であれば,いつでも株分け,植え付けができます。植え穴には緩効性の化成肥料を軽くひとつかみと,完熟堆肥あるいは腐葉土を十分すき込んでおきます。株間30a,深さ5a程度に植え付けます。
乾燥には強いので,露地では極端に土壌が乾かない限り水やりをする必要はありません。肥料が効けば,葉や茎はかなり大きくなり草丈は60aを超えます。花が咲き終わったら,花茎を基部から切り取り,次の花茎の発生と伸張を促します。
冬,凍結の激しいところでは,霜が降りる前に掘り上げて,風乾してから貯蔵するとよいでしょう。
害虫はスズメガがまれに発生し,気がつかないでいると大きな幼虫が,葉がなくなるほどに食害することがあります。花がナメクジの被害を受けることもあります。これらは,見つけ次第,捕殺します。
高温多湿時に軟腐病や白絹病が発生することがあるので,排水のよい場所に植え付けます。こうした病気が発生しても,自宅では株が全て枯れることはなく,長年花を楽しめています。
赤系の品種は,スリップスの被害で,花がカスリ状の筋ができるので,蕾が見え始めたら,粒剤を散布しておきます。
(写真5) (写真6)
スイセンの蕾が開くと,ほのかな甘い香りに誘われて,愛らしい春の妖精がどこからともなく踊り出してきそうです。一度植えれば,毎年花が楽しめる,とても育てやすい花です。ヒガンバナ科。原産地は地中海沿岸。耐寒性は強く,病害虫の被害もほとんどありません。花色は白,黄,二色咲き(中のカップがオレンジの品種もあります:写真5)があり,一つの茎に小さな花がたくさん咲く房咲きと,一つの茎に一輪だけ咲くタイプがあります。八重咲きもあります(写真6:黄色の房咲きスイセン。まとめて植えると1月上旬〜2月中旬頃まで花が楽しめます)。
品種を組み合わせれば12月下旬から4月まで花を楽しむことができます。最も開花が早いのが白の房咲きタイプで,わが国では日本スイセンと呼ばれています。10月下旬に萌芽し,12月下旬から1月上旬に咲き始めます。
引き続いて黄色の房咲きタイプが11月中旬頃に萌芽し,1月中旬から咲き始めす。その他の品種は12月下旬から1月上旬に萌芽し,ほとんど3月中下旬頃から開花します。口紅スイセンは開花が遅く,4月中下旬に咲きます。一品種の開花期間はおよそ2週間程度です。
病気や傷のない,できるだけ大きな球根を購入し,9〜10月頃に,開花の早い品種から順番に植え付けます。できるだけ深く耕し,完熟堆肥を十分施しておきます。株間は15〜20a程度とします。鉢植えの場合は,15a鉢なら5球,プランターでは8〜10球植えます。
花数を多くするには,日当たりと排水のよい場所に,球根の三倍ぐらいの深さに植えます。浅植えすると,分球し球根が小さくなり,翌年は花数が少なくなります。
花が咲き終わったら,球根の肥大を促すため花を摘み取り,追肥をします。球根は毎年掘り起こさないで,3年ぐらいは植えたままにしておいても大丈夫ですが,春の萌芽時に追肥をします。
据え置き年数が長くなると,球根が密生してくるので,花数が少なくなります。その場合は,花後葉が枯れてきたら(4月下旬過ぎ),晴天が続いて土が乾いている時に球根を掘り上げ,冷暗所に貯蔵し,秋に植え替えます。用土を入れた鉢の中に,球根を埋め込んで秋まで庭の片隅に水やりもせず放置しておいてもかまいません。芽がわずかに出始めたら植え付けます。球根が少ない場合は,この方が簡単です。
害虫の被害は特にありませんが,病気ではまれに白絹病が発生することがあります。白絹病は,白い絹糸のような菌糸が絡み付いて球根を腐敗させます。一般家庭では防除法が難しく,いったん発生した場所には,白絹病の発生しやすい植物は4〜5年以上植えないようにします。球根類の中では,アイリスは白絹病が発生しやすいので注意が必要です。
(写真7)
アヤメ科。地中海沿岸地や西アジア産の原種からオランダで交配された園芸種です。秋植えの球根で,花色は青(写真7),青紫,白,黄,複色です。暑さ,寒さには強い品目です。10月下旬に萌芽し,品種によって異なりますが,早いものは3月中旬頃から,遅いものは4月下旬頃から咲き始めます。ひとつの茎に1〜3輪の花が順次咲きます。ひとつの花茎の開花期間は1週間以内ですが,全体としては,2週間程度,品種を組み合わせれば長く花が楽しめます。
初雪カズラの中に球根を埋め込んでおいても,毎年花を咲かせてくれる丈夫な花です。
日当たりと排水のよい土壌を好みます。肥料は植え付け時に施します。株間は10〜15cm程度,5cmぐらいの深さに植えつけます。開花終了後は花がらを摘み取り,球根を肥大させるためお礼肥えを施します。茎が枯れてきたら切り捨てます。
一度植え付けると,何年も楽しめますが,花着きが悪くなったら分球して植え直します。
花や茎にモザイクウイルス病,地ぎわや球根に白絹病が発生することがあります。これらは,見つけ次第速やかに堀上げ処分します。白絹病が発生した場合は,菌核が長く残るので5〜6年はその場所に植え付けることはできません。
(写真8) (写真9)
キク科。原産地は,グアテマラ,メキシコの涼しい高原地帯です。草丈は,50a以下から2b近くまで,花径も3a程度から30a近くまでたくさんの品種があります。花形,花色も多種多様です。切り花用にする場合は,草丈が高い品種がよいですが,花壇用には強風を考慮すると草丈の短い方が育てやすいと言えます(写真8,9)。
品種によって,一輪の開花日数が異なるので,できれば開花日数が長い品種の購入をお勧めします。
種からも育てることができます。種から育てると,様々な花色,花形,草丈の株が楽しめます。発芽適温は20〜25度ですが,4月中旬にまくと,1週間程度で発芽し始めます。2週間後に植栽すると6月上旬に蕾が見え始めます。その後20日程度で花が咲き始めます。6月下旬から10月下旬頃まで花が咲き続けます。草丈が30a程度で咲き始め,60aぐらいにまで伸びる株もあります。2年目からは球根(正しくは塊茎)が利用できます。
矮性品種は,花は大きくはありませんが,倒伏の恐れがなく,摘心,脇芽取り,整枝,摘蕾などの作業がないので,庭植え,鉢植えともお勧めです。梅雨の長雨にも強く,毎年塊茎で増殖できるので,とても育てやすい品目です。
庭に植える場合は,株間は40a程度とします。日光を好みますが,特に夏期は午後からは強い日差しが当たらない場所がよいでしょう。花がらは見苦しいのと,次の開花促進のため速やかに取り除きます。
霜が少し降りるぐらいの地域では,庭植えの株は,秋になり茎葉が枯れてきたら塊茎を掘り上げ,健全な塊茎を鉢に植えます。次に,鉢上部を地表面より少しだけ出して鉢ごと埋め込みます。土の中で冬越しさせた方が,塊茎のためには適湿が保たれてよいようです。後作を考えなければ,掘り上げないで,その場所で冬越しさせてもよろしいです。花数が少なくなってきたら,健全で大きな球根を選んで植え直します。
自宅では4月中旬には鉢の中でわずかに発芽しています。芽が伸びすぎると芽が折れやすくなるので,適期に鉢を掘り上げ,6〜10号鉢に塊茎を1〜2個に分けて植えなおします。鉢植えで楽しみたい場合は,できるだけ大きな鉢に植えます。塊茎は,芽の出る位置が鉢の中心にくるように深さ5a程度に植えます。
庭植えする場合は,小さめの鉢でかまいません。春花壇が終了後,苗が大きくなったら,4月中旬頃までに鉢から抜いて庭に植え込みます。その後,まもなく発蕾し,早ければ5月上旬から花咲き始めます。写真127は,中輪系品種「ハーモニー」の購入後3年目の開花状況です。
ナメクジやカタツムリの被害を受けやすいと言えます。ハマキムシが発生することがあります。春と秋の年2回発生します。春は5月24日に被害を確認しましたが,植え付け時に粒剤を散布しておくとよいでしょう。葉がギザギザして少しねじれたりするスリップスの被害が発生することもあります。被害があれば,粒剤を施します。ウドンコ病が発生しやすい品種があります。発生すれば薬剤防除しかありませんが,そのような品種は廃棄し,栽培しないようにしています。
(写真10)
アヤメ科。原産地は日本,東シベリア,朝鮮半島です。花色は,白,薄紫,紫,青紫(写真10),黄,絞りです。寒さ,暑さには強い品目ですが,暑い時期の土壌の乾燥は苦手です。落葉性宿根草で,3月上旬に萌芽します。開花期は,5月下旬〜6月中旬です。
1輪の開花日数は1週間以内ですが,1つの茎に1〜3輪の花が咲き,1株に花茎が数本出てくるので12日程度開花します。品種をそろえれば,長く開花を楽しめます。
日当たりのよい場所,あるいは明るい日陰で育てます。開花時期に水を溜めた状態で育てられているのをよく見ますが,それは一時的なもので,カキツバタと違い,水がずっと溜まったままの状態では生育できないとされています。ただし,湿潤な土壌を好みます。自宅では,底穴のない火鉢(写真123:内径35a×高さ30a)で,午前中日がよくあたる庭で育てていますが,長く雨が降らない場合には,極端に乾燥しないように水やりをしています。
ハナショウブは連作ができないとする文献もあります。しかし,自宅では平成15年4月に火鉢に植え付けてから一度も植え替えもせず育ててきていますが,全然問題はありませんでした。毎年萌芽時に一度肥料を施し,花がらを摘み,秋に茎が枯れたら除去するだけで,手入れはとても簡単です。ただし,1鉢に数品種を混ぜて植えると,栽培年数が長くなると最も生育が優勢な品種しか残らなくなります。
株分けをする場合は,後の生育や開花を考慮すると,茎数を3〜4本程度にします。
ヨトウムシやバッタが葉を食害することがあります。
(写真11) (写真12)
(写真13) (写真14)
(写真15) (写真16)
ユリ科。原産地は,地中海沿岸,中央アジア。花色が豊富で(写真11〜15:フラワーパークかごしまにて2020年1月28日撮影。写真16:同2月3日撮影),花形も一般的な一重の他に八重咲き,フリンジ咲き,パーロット咲き,ユリ咲きなど多様です。
自宅では,11月極上旬に植え付けると,12月下旬に萌芽し,3月下旬〜4月上旬に咲き始めます。
翌年も咲かせるためには,開花後,球根を肥大させるため,花がらを摘み取り,追肥をします。葉が枯れたら(自宅では,4月極下旬〜5月中下旬),掘り取ります。病気や傷のある球,小さな球根を取り除き,風通しのよい日陰でよく乾燥させた後,ネットに入れできるだけ涼しい日陰で貯蔵します。親球と同程度の球根が得られたら成功です。ただし,暖地では,オランダや北陸などの球根生産地より外気温が高く,葉が枯れるまでの期間が短いために,球根の肥大が悪く,病気で腐敗することが多いので,球根を更新した方が無難です。
(写真17) (写真18)
(写真19) (写真20)
春化処理(一定の期間,一定の低温処理をして早く咲くよう花芽をもたせる冷蔵技術)をした球根を植え付け,フラワーパークかごしまでは1月下旬から花を咲かせています(写真17,18:2015年2月20日撮影。写真19:2016年2月17日撮影。写真20:2020年2月11日撮影)。この時期は,外気温が低いので,花も1か月程度と長く楽しめます。
大きなよい花を咲かせるには,健全な球根の購入がポイントです。カビや腐れ,傷がなく,大きくてしまりがあり,外皮が光沢のあるものを選びます。鉢植えで楽しむ場合には,6号鉢では5〜6球程度植え付けます。通常サイズのプランターの場合には,2列に10〜12球植えます。
鉢やプランターに植える場合には,2a土を被せる程度の浅植えとします。庭植えでは,チューリップ単独の場合には,株間は10a程度とし,球根2個分の深さに植えます。 チューリップだけだと,開花期間が短いので,パンジーやビオラ,デージーなどと混植するとよいでしょう。その場合は,株間は20〜25a程度とし,チューリップの芽が出る頃に,花の苗を植えます。
(写真21)
チューリップは,植え付けが遅れると,十分な生育ができず花が咲きません。パンジーなどと混植(写真21:フラワーパークかごしまにて2020年3月19日撮影)すると,植え付け遅れは致命的で,パンジーの葉の下に隠れてしまいます。自宅では,混植しない場合には,遅くとも12月中旬頃(最低温度4〜5度)までに植えます。混植する場合には,10月中旬から11月上旬頃までには,植え付けを済ませます。
なお,チューリップは,12〜15度程度が発根の適温なので,あまり早く植えても根が出ません。また,高温で球根が腐敗する場合があります。病害虫は,健全な球根を植えれば病気の発生はありません。害虫も特に問題はありません。
(写真22)
ユリ類は,球根の大きさ,施肥量と降水量(水やり量)によって草丈は,かなり異なります。大きい球根は,100〜120a程度は普通に伸び,支柱が必要となります。
一度植えると,数年花を楽しめます
テッポウユリ(写真22)は,9月下旬から11月にかけて植えますが,いったん植えると, 毎年11月上旬頃に萌芽します。4月中旬に発蕾し,5月下旬〜6月上旬に開花します。蕾が7輪あると,観賞期間は10〜12日程度です。1輪は5〜7日咲いています。
(写真23) (写真24)
オリエンタルユリは,品種によって異なりますが,3月中旬〜4月上旬に萌芽します。5月上旬〜中旬にかけて発蕾し,6月下旬〜7月頃に開花します。主な品種では,カサブランカは6月中旬,コンカドール(写真23)やマルコポーロは6月下旬,スターガザール(写真24)は7月上旬に開花します。蕾が7輪だと14日,3輪だと7〜8日程度開花します。
スカシユリについては,品種名はわかりませんが,自宅で過去栽培したものでは,3月中旬頃に萌芽,4月下旬に発蕾し,6月上旬に開花しました。
花数が多く,大きな花を咲かせるには,健全な球根の購入がポイントです。大きくてしまりがあり(しなびれていない),傷やカビ,腐れがないものを選びます。特にユリ類は色に注意し,白くない,黄色みを帯びたツヤのある完熟した球根を購入します。
テッポウユリ,スカシユリ,オリエンタルユリ,オニユリはできるだけ日当りのよい場所に植えますが,6〜7月に咲くスカシユリとオリエンタルユリは西日の当たらない場所を選びます。ヤマユリ,カノコユリは明るい日陰で育てます。
植え付ける場所はできるだけ深く耕し,完熟したたい肥を一平方b当たり2`程度施します。基肥はチッ素,リン酸,カリ成分が各10l程度の緩効性の化成肥料(肥料分が徐々にとけて効き目が長い肥料)を1u当たり100〜150cぐらいを目安として施します。数球植える場合には,一球当たり軽くひとつかみの肥料を与えます。
通常球根の2〜3倍の深さに植えます。ユリ類は,茎の基部から上根がたくさん出て養水分を吸うので,浅植えしないようにします。浅植えすると,子球の数は増えますが,球根が小さくなるので,年々花数が減少し,花も小さくなる傾向があります。
花が終わったら,球根を肥大させるために,結実しないよう花がらを摘み,追肥をします。施肥量は,基肥の半分程度とします。茎葉が黄色くなったら,球根を掘り上げます。掘り上げた球根は,ピートモスやおがくずなどを入れたビニール袋に入れホッチキスで軽く封をし,植え付けまで乾燥しないように保存します。
植え替えをしない場合は,萌芽時に植え付け時と同様の肥料を施し,地表面を軽く耕し,土と肥料を混ぜます。自宅のスターガザール(写真24)は,15年以上植え替えをしていませんが,毎年3〜4輪咲いています。輪数が少なくなってきているので,植え替えしたいと思っています。
せっかくできた花芽が蕾として現れる前に,あるいは3a程度の蕾の大きさになるまでに不良環境条件で少なくなる現象をブラインド(花飛び)と言います。この現象は,花芽の数に対して,葉で行われる光合成量(デンプンの生産量)が不足すると発生します。日照不足,水やり不足,肥料不足,極端な高温や低温,土壌の過乾燥や過湿などによる根傷み,密植による株間の光・水・肥料他の競合などがその原因となります。
風通しや日当たりが悪いために,雨や朝露による葉の水分が乾きにくい場所では,葉枯れ病が発生しやすくなります。また,肥料不足や排水不良により,根の働きが弱り,葉の色が薄く生育が悪くなると病気が出やすいので注意が必要です。
害虫では,特に蕾が出る頃に,アブラムシが発生することがあります。アブラムシの被害を受けると,ウイルス病が発生する可能性があります。ウイルス病にかかると,葉がねじれたり,委縮(草丈が極端に縮む)したり,葉にモザイク症状(濃淡ができる)が出たりするなど,品質が著しく低下します。いったんウイルス病に感染すると,回復することはないので,見つけ次第,掘り上げて処分します。
また,蕾と花弁が,ナメクジやカタツムリの被害を受けることがあるので注意が必要です。