なーるほど!かゆいところに手が届く 栽品目別上手な花の育て方(自宅での栽培事例)
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2 冬から春にかけて咲く花
アイスランドポピー
キンギョソウ(金魚草)
クリサンセマム・ノースポール
シレネ・カロリニアナ
ネメシア
花菜(ハナナ)
パンジー,ビオラ
リナリア
ロベリア
(写真1)
ケシ科。中国,モンゴル,シベリアが原産地です。
写真1は,2011年4月に鹿児島県指宿市池田湖で撮影したものです。
種は微細なので,は種後土はかぶせません。9月中下旬(20日)に種をまくと,8日前後で発芽します。発芽適温は15〜20度程度で,温度が高いと,発芽が揃いません。この時期の発芽率は50%ぐらいで,育苗箱内で立ち枯れしやすくなります。このような問題はありますが,セル育苗では,種まき後約1か月で植え付けが可能で,11月末には全体の30%ぐらいは発蕾し,12月中旬を過ぎると花が咲き始めます。年末からは花壇として十分鑑賞できるくらいに咲きそろいます。
植え付け時は,本葉2葉期で,根の張りは不十分ですが,苗は小さくても活着は非常によいです。種まき時期が早い場合には,涼しい日陰で発芽させ,発芽後もしばらくは明るい日陰に置き,強い日射しに当てないことが重要です。また,種まきから発芽後苗が小さい内は雨に当てないようにします。
自宅では10月中旬頃になると,発芽に適した温度条件になりますが,種まきが遅れると生育が遅れ,12月中旬頃からの開花が望めなくなります。
日当たりがよく,排水のよい場所に植えます。植栽後1週間後から1週間おきに薄い液肥をやると生育が早まります。肥料をやり過ぎると,花茎が伸びてさらに倒れやすくなるので,蕾が見え始めたら液肥の施用は中止します。天気がよくなるとすぐに回復しますが,風と雨に弱く,花茎は倒れやすいです。
花が咲き終わったら地際から花茎ごと摘み取ります。花茎の下部をねじるようにすると,簡単に折り取れます。
育苗時から,カタツムリやナメクジの被害を受けます。ヨトウムシなどが花茎や花びらを食害します。ナメクジも花びらを加害します。ナメクジは1月中旬頃の寒い時期でも,暖かい日には花びらを食害することがあるので注意します。
(写真2) (写真3)
(写真4) (写真5)
ケシ科。原産地は北アメリカ。発芽適温は15〜20℃。こぼれダネで増えます。サヤが黄色くなって,種がはじける前に採種できます。和名は花びし草で,寒さや霜に強い花です。花は夜になると閉じます。
深い切れ込みのある葉は,地面を覆うように株の中心部から四方に広がります。クリサンスマムノースポールと混色すると,オレンジ色が一段と引き立ちます(写真2)。
3月上旬から5月上旬に,地ぎわから50〜60a程度の花茎が伸びて,その先端にオレンジやクリームイエロー(写真3)のカップ状の花を咲かせます。八重の品種もありますが,一重のオレンジキング(写真4)が代表的な品種です。
立体的な円筒花壇に植え,少し高い位置で咲かせると豪華です(写真5)。
9月下旬頃に種をまくと,1週間程度で発芽し始めます。プラグ苗を11月上旬に植え付けすると,3月上旬から5月上旬頃まで咲き始めます。種まきを遅らせると,5月下旬まで咲きます。株間は,25〜30a程度の株間に植えます。直根性ですが,小苗のうちなら,移植できます。
肥料が多いと,花茎が伸びすぎて倒れやすくなります。肥料は,基肥を少なくして,生育を見て追肥で調整するのが無難です。それに過湿が伴うと,いっそう地ぎわが黒く腐れて枯れやすくなるので注意が必要です。病害虫の被害は特にありません。
オオバコ科。南ヨーロッパ、北アフリカの原産です。花の形から金魚を連想させます。ペンステモン咲き(バタフライ系)もあります。花色は黄,白,赤,ピンク,赤,オレンジなどがあります。120cmぐらい伸びる高性種から、草丈20〜30cm程度の矮性種があります。草丈の高いものは,主に切り花用として利用されます。高性種は支柱が必要です。
発芽適温は15〜20℃で,10月上旬頃にはこぼれ種からも自然に発芽します。
(写真6)
日当たりのよい場所を好みます。種は細かく、光
好性なので、播種後土はかぶせません。株間は20〜
25a程度とします。切り花用品種で分枝をほとんど
しない品種は株間10a,摘心をする場合は株間20aで植えます。高温時期に種を播くと,発芽しても苗立ち枯れが発生しやすくなります。10月以降であれば,発生はほとんどなくなります。
少々の霜が降りても枯れることはありませんが,
温暖な地域でないと開花は4月からになります。矮
性種は10月下旬にセル苗を植えると,4月上旬から蕾が見え始め,極下旬から6月まで花が
楽しめます(写真6:2007.6.24撮影)。草丈の伸びる品種は,4月上旬から開花します。12
月に購入した開花苗も,霜が降りるような寒さになると,暖かくなるまで開花が途絶え,3
月中下旬から再び花が咲き始めます。
高温時には,立ち枯れ病が発生しやすくなります。秋,春にはハモグリバエの被害があります。
(写真7) (写真8)
キク科。原産地はペルシャからカナリー島。花色はオレンジと黄色。花芯(花の中心部)が黒い品種もあります。草丈は50〜60a程度で切り花にも利用されます。草丈が20a程度の矮性種もあります。キンセンカは霜に強い品目ですが,花径が2p程度で,小輪多花性の品種「冬しらず」は,特に寒さに強く,冬の間も咲き続けます。冬しらずは,花は小さいですが,肥料が効くと草丈は60a以上に伸びます。
9月中旬に種を播くと,4〜5日で発芽し,セル苗では2週間で植え付けできます。2月中,下旬から咲き始め,5月上旬頃まで花が楽しめます。発芽適温は15〜20℃ですが,高温でもよく発芽します。8月中旬に種をまくと,12月には開花します。株間は25〜30a程度とします。写真7は,3月上旬に撮影したものですが,写真8は3月20日の開花状況です。玄関横に植えてあるのですが,家に入るたびに,黄色やオレンジ色が,春を感じさせてくれます。
4月中・下旬頃から,葉の表面に白い粉がふいたようなうどんこ病が発生しやすくなります。蕾がたくさんついていて花がまだまだ期待できそうに見えても,排水不良などによる根傷みや肥料不足で,株に勢いがなくなると発生が助長されるので注意します。花がらは早めに摘み取り,結実で体力を消耗しないようにすることも大事です。
なお,近年,従来よりもうどんこ病に強い品種が育成されているので,利用するとよいでしょう。
(写真9) (写真10)
キク科。原産地は北アメリカ。ノースポールが一般的ですが,正式な名称はクリサンセマム・パルドーサムです。寒さや病気に強く,とても育てやすい小輪系の白い一重の清楚な花です。
暖かい地域では,9月下旬頃に種をまくと,1週間程度で発芽し始めます。早ければ11月下旬からちらほら咲き始め,1月上旬には十分観賞できるぐらい咲き誇り,4月下旬から5月上旬くらいまで花が楽しめます。写真9は,レンガを丸く並べた花壇(直径1b)で,ノースポールで白一色にしました。写真10では,ノースポールの中にカリフォルニアポピーを少し混植していますが,ノースポールの白が一段と引き立ちます。
株間は25から30a程度とします。肥料をやり過ぎると徒長して倒れやすくなるので注意し
ます。いったん栽培すると,翌年からはこぼれダネで増やせます。早く花壇を花で一杯にし
たい場合には,株間を縮めて植えます。ノースポールは,株間10a以下で密植してもかまい
ません。密植すると,それぞれの株の枝数が少なくなって,全体としては調和がとれるよう
になります。
カリホルニアポピー(オレンジ色)あるいは同じ仲間のクリサンセマム・ムルチコーレ(黄
色)との混植は映えます。ムルチコーレは,ノースポールよりやや寒さや過湿に弱く,咲き始
めも遅くなります。3月下旬から5月上旬ぐらいまで開花します。株の広がりはノースポー
ルほどではないので,株間は15から20a程度とします。
アブラムシやハモグリバエが少し発生することがありますが,防除するほどではありません。特に問題となる病気はありません。
(写真11)
ナデシコ科。原産地は北アメリカです。日本では1年草で,夏を越すことはできません。寒さには強い品目です。シレネ・ピンクパンサー,シレネ・スパニッシュフラメンコの名称で流通しています。花色はンクが多いですが,白もあります。2月下旬から5月上旬頃まで開花します。たくさん植え込むと,鮮やかなピンクのジュウタン(写真11は2019年4月20日撮影)を広げたようでとても見事です。
同じ科のツルコザクラは,花は似ていますが,宿根草で,横に這うタイプだと言われています。栽培したことはありませんが,高温多湿に弱く,暖地では夏越しが難しいとのことです。シレネ・カロリニアナがツルコザクラと呼ばれている場合が多いようです。
こぼれダネで増えます。日当たりと排水のよい場所が適しています。9月〜10月に種をまきます。株間は30a程度とします。栽培は容易です。病害虫の被害は特にありません。
(写真12) (写真13)
ナデシコ科ナデシコ属のカーネーションを除いた草花全体をナデシコと呼んでいますが,狭義には日本原産のカワラナデシコ(別名:ヤマトナデシコ)の種類を指します。近年は,ナデシコ属の園芸品種(カーネーションを除く)を学名のダイアンサスで呼ぶことが多くなりました。原産地は北アメリカ,南アフリカ,東アジア,ヨーロッパです。
セキチクは中国原産の品種,ヒゲナデシコ(別名:ビジョナデシコ,写真12)はヨーロッパ原産の品種です。テルスター(写真13)は,セキチクとヒゲナデシコとの種間交配種です。寒さには強いですが,ほとんどの品種は高温多湿には弱く夏越しはできません。テルスターなど,四季咲き性が他の品目よりも強い品種は,開花後切り戻しを行い,強光線を避け,風通しのよい明るい日陰に移植して上手に管理すれば夏越しも可能です。
セキチクやビジョナデシコは,発芽適温は20度程度。9月下旬に種をまくと,3日ぐらいで発芽し,3月下旬頃から咲き始め,5月上,中旬頃まで咲きます。テルスターは,早まきすれば12月頃から開花しますが,低温期の開花数は少なります。
最も大きな問題は,クロウリハムシによる葉や花の食害です。ナデシコ科の草花は注意が必要です。体長は7_程度で,頭部はオレンジ色,翅は真っ黒な小さな甲虫です。幼虫は土の中にいて,根を食害します。被害がひどいときには,9〜11月に大発生して,発芽後から植栽したばかりの幼苗の葉がほとんど食い尽くされることがあります。
他の植物と違って植栽したばかりのプラグ苗がしおれるものがありますが,幼虫が根を食害しているのかもしれません。成虫は,見つけ次第捕殺します。葉にとまっていると動きが鈍いので,すぐ捕まえることができます。
(写真14) (写真15)
ゴマノハグサ科。南アフリカ原産で,草丈が30a程度まで伸びます。花色は,ピンク,赤,白,黄,青,複色と豊富です(写真14,15)。
1年草のものは暑さに弱く,夏を越すことをできません。宿根性のものは,比較的暑さには強いと言えますが,夏期は明るい日陰で育てます。寒さには強く,軽い霜ぐらいは大丈夫です。
庭では,宿根タイプのものは,開花株が園芸店に出回る2月頃から,梅雨が始まる頃までは安定して花を咲かせられます。高温多湿には弱いので,梅雨に入る前に10〜15a程度の高さに切り戻して,鉢上げして雨のあたらない明るい日陰で育てた方が無難です。挿し芽も容易で,小苗で梅雨を乗り切ることもできます。10月下旬〜11月上旬頃,秋咲きの花が終了次第,庭に植えます。病害虫の被害は特にありません。
(写真16) (写真17)
ハゼリソウ科。北アメリカ原産。一般的な品種はインシグニスブルー(写真16)で,花色は外側が鮮やかな青,中心部は白です。花色は白で,花弁の外側に濃い青紫色の斑点が入るマニキュラータと呼ばれる系統もあります。霜が強く降りない所では冬を越します。写真17は,2011年5月7日に鹿児島県長島町花フェスタで撮影したものです。
発芽適温は15〜20度です。10月10日に種をまきましたが,発芽率は申し分ありませんでした。10月下旬にセル苗を植え付けすると,3月上旬から4月下旬頃まで咲きます。茎は横に這うようにして伸び,その先端に花径が2〜3aの可憐な花を,株を覆うようにして次々に咲かせます。雨にあたると草姿が乱れ,しばらく見栄えは悪くなります。鉢植えにして,雨にあてないと,きれいな草姿が保てます。
30a以上に株が広がるので,株間は30〜35a程度とします。肥料が効きすぎると,徒長して草姿が乱れ見苦しくなります。前作の栽培があれば,基肥は施用せず,生育を見て追肥で調整します。株がある程度広がってきたら,水やりはできるだけ控えます。浅植えすると株が転びやすくなります。キンギョソウ,チドリソウ,リナリアなどと混植すると,倒れにくくなります。
病害虫の被害は特にありません。
(写真18) (写真19)
アブラナ科。原産地は日本。9月上旬〜10月上旬に種をまくと,2〜3日で発芽します。発芽率はとてもよい品目です。発芽後3週間程度で,セル苗を植え付けできます。京都伏見系の太系黄葉の一代交配種「観月」を10月末に植え付けると,12月上旬に蕾が見え始め,下旬には一部花が咲き始めます。2月中旬くらいまでは花が楽しめます(写真18は自宅)。
開花時の草丈は,70a程度で,切り花にも適します。一面に広がる黄色の菜の花(写真19は指宿市池田湖と開聞岳を背景に,2008年12月29日撮影)を見ると,晴れ晴れとしたさわやかな気持ちになります。
株間は20〜25a程度とします。草丈を伸ばし過ぎると,風で倒れやすくなるので,肥料をやり過ぎないようにします。基肥は少なくして,追肥で生育を調整するとよいでしょう。
幼虫が真っ黒なカブラハバチや,葉の中にもぐって白い線を描くナモグリバエの被害が多い年もあります。被害が毎年ひどい場合には,粒剤の散布を考えます。
(写真20) (写真21)
(写真22)
アブラナ科。原産地は西ヨーロッパ。葉先が縮むちりめん系葉ボタンと,丸葉系葉ボタン,葉先が切れ込む切り葉系葉ボタンがあります。外葉は緑で,中心部は白,クリーム色,ピンク,紅色と各種あり,苗の時に分類できます。また,伸びた茎の途中の葉をかいて,先端だけに葉を残して切り花にできる品種もあります。
プラチナケール(写真20:赤系品種のルーシーワインと白系品種のルーシーバニラ,フラワーパークかごしまにて2020年2月3日撮影。桜は,「伊豆の踊子」で,見頃は2上中旬です。)は,茎が伸びるにつれて,各葉のつけねに芽キャベツのような色のついた小さな脇芽が現れてきますが,フラワーパークかごしまではその草姿がかわいいと当時は人気がありました(写真21:2018年1月17日撮影,写真22:2020年1月28日撮影)。
また,ハート型花壇に外側と内側に赤系と白系を色分けした葉ボタンを敷き詰めると洋風な感じを楽しめます(写真23:フラワーパークかごしまにて2020年1月27日撮影)。写真24は,ちりめん系の葉ボタンで,2020年1月28日にフラワーパークかごしまで撮影したものです。
寒さには極めて強い品目です。発芽適温は20〜25度。発芽率は非常によく,9月中下旬に種をまくと,は種後3日目には50%以上発芽します。
自宅では,12月上旬頃から葉が色づき始め,3月上旬に花茎が見えてきます。3月中旬〜4月中旬頃にかけて花が咲きます。菜の花に似た花が楽しめます。
(写真23) (写真24)
(写真25)
早まきすると株は大きくなりますが,7月下旬〜8月に種をまくと,ヨトウムシやアオムシなどの害虫の被害が大きくなります。自宅では,害虫の被害を少しでも避けるため9月中下旬頃まきますが,追肥を十分施せば年末には観賞できる程度の大きさにはなります。追肥は遅れないように11月上旬までに与えます。追肥が遅れたり,チッソ施用量が多かったりすると,発色に影響が出ることがあるので注意が必要です。
株間は30a程度とします。密植すると,株は小型になります。セル育苗でない場合は,発芽後2〜3枚の頃(は種後2週間目頃)に3号鉢に鉢上げし,本葉6〜7枚の頃植え付けします。鉢上げしたまま放置しておくとかわいいサイズの大きさになります。
この鉢をお正月前にライン状に(鉢ごと)植えると,とても新鮮です。なお,株が大きくならないよう基肥は施しません。株が大きくならないと,花芽がなかなか上がってこず,長く楽しめます(写真25)。
アオムシの数はかなり少なくなりますが,自宅では12月中下旬になっても見受けられます。モンシロチョウも,12月上旬頃までは飛んでいます。
害虫は見つけ次第捕殺します。植え付け後のオルトランなどの粒剤散布は有効です。ただし,株が大きくなってくると,効果はなくなってきます。育苗中や生育初期にはカタツムリの被害を受けやすいので注意が必要です。
(写真26) (写真27)
(写真28) (写真29)
スミレ科。原産地はヨーロッパ。花色が豊富で,品種数も多く,冬・春花壇で最もよく利用される花です。長期間にわたって花が楽しめ,初冬から5月上旬にかけて花壇を鮮やかに彩ります(写真26)。
寒さにはとても強く,丈夫で作りやすい花です。花径は6〜8a。ビオラ(写真27)は,ごく小輪系のパンジーと考えてよいでしょう。花径は2〜4a程度で,性質はパンジーとほぼ同様ですが,毎年こぼれダネからたくさんの苗ができます。ただし,花色はもとの株とは異なる様々な色になります。
鉢植えで,玄関ドア横などに吊り下げたり(写真28),スタンド仕立て(写真29)にしたりして目線を高くすると雰囲気が変わります。
発芽適温は20℃前後で,夜温がその程度に下がる9月になってから種をまくのが無難です。セル育苗では9月下旬(自宅では,この頃が適期)に種をまくと,5〜10日で発芽し始め,種まき後約30〜40日(10月下旬〜11月上旬)で,本葉2〜3枚の苗を植え付けできます。早い株は,12月下旬から咲き始めます。通常の育苗では,本葉2〜3枚の頃に鉢上げし,5〜7枚の頃植え付けするとよいでしょう。
8月中下旬に種をまけば,11月から花を咲かせることも可能です。ただし,高温時は発芽率が悪く,苗立ち枯れが発生しやすくなります。また,庭に植える場合は,前作の終了が10月下旬頃になるので鉢の状態で長く置く必要があります。
高温時に種をまく場合には,風通しのよい涼しい日陰あるいは黒のカンレイシャ(2重)下で,できるだけ温度を下げるように工夫します。芽が出そろったら徐々に光に当て,ならし,水分も控えめにして徒長を防ぎます。発芽直後に長雨や強い雨に当てると立ち枯れやすいので注意します。早播きする場合は,冷蔵庫の野菜室に種を1か月ほど入れておくと,発芽ぞろいや発芽率がよくなります。 種まきが遅れ,10月上旬になると発芽までの日数は変わりませんが,その後の生育がかなり遅れ,開花は3月上旬頃からになります。
パンジーを長期間咲かせるポイントは,次のとおりです。
@肥料不足では花数が少なくなります。完熟した堆肥を十分施し,葉色を見て追肥を欠か
さないようにします。化成肥料は,チッソ,リン酸,カリの成分が8-8-8か10-10-10程度
のものを月1回程度施します。液肥は,説明書に記載された希釈倍数を守り2週間に1回
程度施します。
A植え付けが遅れないようにし,寒さがくるまでに,根を十分張らせ,株を充実させます
。株間は25a程度としますが,植え付けがかなり遅れた場合には,株間を狭くします。花
壇を早く花いっぱいにしたい場合には株間を狭くするとよいでしょう。
B花がらは,灰色カビ病の発生防止と結実を抑えて花数を増やし開花期を長くするために
,早めに摘み取ります。
発芽直後,植え付け後しばらくは,カタツムリやナメクジ,ダンゴムシの被害を受けやすいので十分注意します。植え付けたばかりの幼苗は,コガネムシの幼虫に食害されることがあります。幼虫は被害を受けた株の近くの土中に潜んでいるので,周辺の土を掘り起こすと捕殺できます。
アブラムシがごくまれに発生する時がありますが,天敵により補食されているせいか大発生することはなく,薬剤で防除したことはありません。3月中下旬になり暖かくなると,ツマグロヒョウモンの被害が出始めます。きれいなチョウですが,被害がひどいようであれば,見つけ次第捕殺します。
病気で問題になるのは,立ち枯れ病,灰色カビ病,茎腐れ病です。
やや暖かくなり始める3月中下旬頃から,雨が続き,湿度が高いと,灰色カビ病が発生しやすくなります。花がらは,発生前から小まめに摘み取るようにします。
やっかいなのは,茎腐れ病(病原はリゾクトニア属の糸状菌)です。植え付け後から発生します。地ぎわが腐れるので,葉はしおれています。株を引っ張ると,地上部がすぽっと抜けるのが特徴です。被害株は見つけ次第抜き取り,廃棄します。放置すると,周辺の株が次々に被害を受けます。よく発生する病気ではありませんが,一度発生すると,毎年発生するので,連作を避けます。
薬剤は植え付け後から,株元を中心にオーソサイド水和剤(600倍)をu当たり100〜300cc散布します。発生してからの散布は効果がありません。ただし,薬剤に安易に頼らないようにすることが大事です。
(写真30) (写真31)
ハナシノブ科。北アメリカ,テキサス州原産。寒さ,霜には強いです。ドラモンディ種が一般的で,草丈は50〜60a程度(写真30)。花色は赤,濃桃,薄桃,白,黄,紫などと豊富で,花径2〜3aの小さな花が,茎の先端に群がるように次々と咲きます。
花弁は丸弁が普通ですが,スターフロックス(写真31)と呼ばれる星咲きの種類もお勧めです。草丈が20〜25a程度しか伸びないわい性種や,草丈が60〜100a程度伸びる宿根性種もあります。花は香りがよく,切花としても楽しめます。一度植えると,毎年こぼれ種で増えます。
発芽適温は15〜20度。9月中旬に種をまくと,8日程度で発芽します。高温時に種をまくと,発芽や発芽そろいが悪くなります。9月上旬に種をまくと,暖かい地域では12月下旬から花が咲きます。種まきや植え付けが遅れると,3月下旬からの開花になりますが,6月上・中旬まで花が楽しめます。
株間は25〜30a程度とします。肥料が多すぎると,草丈が伸びすぎて,倒れたり,しまりがなくなったります。肥料は基肥を少なくして,生育を見ながら,追肥で調整します。また,草丈を抑えた場合には,摘心するとよいでしょう。ハモグリバエの被害が若干ありますが,その他の病害虫は特に問題ありません。
北アフリカ原産。オオバコ科。和名は姫金魚草。金魚草を小さくしたような花で,花色は赤,ピンク,黄,白,紫と豊富です。草丈は約50aで,茎は細い。草丈25a程度の矮性種もあります。こぼれダネでよく増えます。自宅では,10月中旬に苗を植えると2月中下旬から4月中旬まで花が楽しめます。
(写真32) (写真33)
伸び過ぎると倒れやすくなります。基肥は控え,追肥で調整するとよいでしょう。矮性種を植えると,その心配はあまりしなくてもよくなります。写真32,33は矮性種です。株間は20a程度とします。
乾燥には強い方ですが,過湿では立ち枯れ病が発生しやすくなるので注意します。株が老化すると,ウドンコ病が発生しやすくなります。ハモグリバエが多少発生することがありますが,防除するほどではありません。
(写真34) (写真35)
ツルナ科。南アフリカ原産ですが,寒さには意外と強く,少々の霜や雪でも枯れることはありません。葉は多肉質。茎は,ほふく性で横に広がります。花径は4〜5a程度。花色は桃,赤,黄,オレンジ,白などで,蛇の目咲きが多く,一面に花が咲くと目が覚めるような華やかさです(写真34)。天気がよいと一斉に咲き,夕方になると花は閉じます。また,ハチが交配すると午前中に花は閉じてしまいます。写真35は,鹿児島県長島町花フェスタで撮影(2019年4月20日)したものです。
種は細かいので,種まき後土はかぶせません。発芽適温は18〜25度です。株間は20〜25a程度とします。発芽率は非常によく,9月下旬に種をまくと,5日ぐらいで発芽し始めます。セル苗を10月下旬に植えると,3月上旬には咲き始め,4月下旬頃まで咲き続けます。
開花をよくするためには,日当たりがよい場所に植えます。多湿に弱いので,排水のよい場所に植えます。花を長く楽しむためには,花がらを早目に摘み取り,肥料を切らさないようにします。
病害虫の被害は特にありません。
キキョウ科。原産地は南アフリカ。 花色は青,紫,赤紫,白などです。草丈は15〜30a程度で,半円球状に広がります。和名はルリチョウチョウで,小さなチョウに似た小さな花が株をおおいつくすように咲きます。種は細かいので,種まき後土はかぶせません。10月上旬にまき,11月上旬にセル苗を植え付けると自宅では3月上旬には咲き始めます。
(写真36)
霜には弱いので,鉢やプランターなどに植え,日当たりのよい軒下に置きます。霜の心配がなくなったら,露地に植えます。露地では雨の直後は,草姿が乱れますが,しばらくするとしっかりとします。株が大きくなるにつれてひとまわり大きな鉢に鉢替えしていくと,6月中旬頃まで楽しめます。肥料と水を控えめにして,よく日に当てるとコンパクトな草姿になります。写真36は,自宅の門扉を鮮やかに彩るロベリアです。
病害虫の被害は特にありません。