(室内で毎年簡単に咲かせる洋ランの育て方)
★自宅で咲いた洋ラン各種です。用土は全て鹿沼土:中〜大粒で,水やりのタイミングが
初心者でも簡単にわかります。従来より,一段と省力,低コストが可能な栽培方法です
。栽培方法はコチョウランと同様。ワイルドキャットは,オンシジューム類交雑種です
。セロジネは,高温に弱いので注意が必要です。
ワイルドキャット ワイルドキャット セロジネ
室内で毎年簡単に咲かせる洋ランの育て方
目 次→下線を引いた各項目をクリックすると,本文にリンクします。
1 室内で簡単にできる栽培技術の確立
2 新技術の特徴
◆水やりの失敗がない
◆水やりが簡単
◆一時的に受け皿に水を溜めても良い
◆施肥も簡単
◆ほとんどの洋ランが室内で栽培できる
◆植え替えがとても簡単
◆用土は安く,再利用が可能
◆大幅な省力化,コスト削減の実現
4 主な品目の特徴
◆コチョウラン(ファレノプシス)
◆デンドロビューム
◆オンシジューム
◆デンファレ栽培
◆ミニカトレア
◆シンビジューム
5 栽培管理の実際
◆品目,品種の選定
◆鉢の種類や大きさ
◆購入株の鹿沼土への植え替え,株分け
◆鉢の置き場所及び遮光管理
◆温度管理
◆肥料
◆水やりの時間帯など
◆葉水はしなくともよい
◆支柱立て
◆古葉の除去,花摘み
◆病害虫
◆その他
1 室内で簡単にできる栽培技術の確立
豪華な洋ランをせっかくプレゼントしてもらっても,花後の管理がわからずに,無残な姿になってしまうことが多いのではないかと思います。また,洋ランは高価だというだけでなく,温室などの設備が必要で,栽培管理も難しいと思い込み,自分で買ってまで楽しもうと考える人は,とても少ないのではないでしょうか。
実際,洋ランの栽培は,かん水,液肥を中心とした施肥,葉水,遮光,温度などの管理が複雑で ,とうてい素人には困難なように思われます。できれば加温や遮光設備のある温室があることが望ましいのですが,残念ながら一般家庭ではそれは望めません。しかし,家庭の室内だけで,誰でも簡単に花を咲かせられる栽培方法を確立し,洋ランをより身近な花にすれば,もっと栽培する人が増えると思われます。
さて,植物にとっては,原産地に近い環境条件下で育てることが最もふさわしいのですが,必ずしもそのような恵まれた条件下でなくても,花を咲かせられないわけではありません。
そこで,プロの生産農家が育てた花には及ばないものの,誰もが取り組みやすい方法で,手始めにコチョウランの花を咲かせる技術を自宅で実証してみました。その結果,明るく,風通しのよい,冬は無加温で最低温度が6〜7度保てる部屋があれば,開花は遅れるものの,一般家庭でも十分満足できる花が楽しめることがわかりました。
できれば,品目,品種をうまく組み合わせて,周年洋ランの花が季咲き(本来その花が自然に咲く時期)で楽しめるようにしたい,と考えています。これまで,コチョウラン(4〜8月:自宅喜入での自然開花期,以下同様),デンドロビューム(3〜4月),セロジネ(3月),エピデンドラム(3〜5月:),デンファレ(8〜12月),秋〜冬咲ミニカトレア(9〜3月,大輪カトレアは春〜夏は戸外で栽培4月に開花),オンシジューム(トゥインクル:1月下旬〜3月上旬,オブリザタム:2月中旬〜4月下旬,アロハイワナカ゛:3月上旬〜4月中旬),ワイルドキャット(1月中旬〜5月中旬)を栽培しました。パフィオペディラムについては,まだうまくいっていません。
自宅で実施した各品目(コチョウラン,デンドロビューム,デンファレ,オンシジューム,ワイルドキャット,パフィオペディラム,エピデンドラム,ミニカトレア,セロジネ,ラバーバスト)に共通する栽培方法は,次のとおりです。なお,シンビジュームは株が大きい,日照を好むなどの点から,室内栽培には不向きなのではないかと思い,栽培しませんでした。他の品目についても,室内のスペースが狭い場合には,大型種を避けて,中型や小型のものを栽培するとよいでしょう。小型のシンビジュームについては,2018年春から栽培していますが,室外と室内の栽培を組み合わせて,開花させることができることがわかりました。
2 新技術の特徴
最も工夫したのは用土です。一般的に用土は水ゴケが使用されますが,水ゴケは,表面は乾いているように見えても,中は湿っている場合があるので,特に初心者には水やりのタイミングがわかりづらいのが欠点です。コチョウランに限らず,洋ラン栽培の失敗の多くは,特に冬期(低温期)に,水のやり過ぎによる過湿が原因となって生じる根腐れです。逆にバークやヤシガラは水はけがよく,過湿による根腐れはほとんどありませんが,鉢を持ち上げてみないと乾き具合がわかりにくいので,油断すると乾燥させ過ぎて根を枯らしてしまいがちです。
葉やバルブがしわしわになっている洋ランは,水分不足か,過湿で根が衰弱しています。また,根腐れがひどい場合には,特に低温が続くと葉が枯れ,蕾や花が落ちてしまうことがあります。また,病気の発生も多くなります。
そこで,乾き具合が誰にでもわかりやすいように,排水がとてもよい鹿沼土(乾けば白っぽくなる)の中粒を使用しました。その後,コチョウランのように根が太い洋ランについては,大粒の方が,生育がよいことがわかりました。大粒であれば,太い根が用土の中に入いりやすくなると思われます。デンドロビュームなどの根が細い品目は,中粒でもよいです。
用土に使用する鹿沼土は,水やりのタイミングが色の変化で一目でわかるので,ほとんど水やりの失敗がありません。水分で湿って黄褐色になった鹿沼土は,乾いてくるとやや白っぽくなりますが,その時が水やりのタイミングです。
ちなみに,水ゴケの場合は,プラスチック容器については,1〜2月の低温期は,1度水をたっぷりやったら,その状況にもよりますが,その後1か月程度は水をやらなくても大丈夫です。
新技術では,水は鉢表面からやりません。受け皿に水を溜めて,毛管現象を利用して鉢全体に水を行き届かせます。受け皿の大きさは,鉢よりひとまわり大きなサイズとします。3号鉢なら4号,4号鉢なら5号,5号鉢なら6号,6号鉢なら7号の受け皿を使います。
水は,最初受け皿の8分目くらいまで入れます。鉢の大きさ,用土によって,鉢表面に水が届き,鹿沼土が濡れ始めるまで半日〜1日半程度かかります。鉢表面の鹿沼土が十分濡れているのに,受け皿に水が溜まっているようであれば,残っている水は捨てます。次から水を入れる場合は,残っていた水の量をみて,7分目,6分目といったぐあいに徐々に水の量を減らします。
7号鉢以上の大きな鉢では,鉢の高さや土の量が多くなるので,最初に8分目くらい水を入れても鉢表面に水が届きません。ですから,最初の水がなくなったらすぐにまた8分目くらいまで水を足します。そうすると,2日目くらいには表面の鹿沼土が濡れてきます。2回目に入れた水が残るようであれば,その水は捨て,次に2回目に水を入れる場合は,残っていた水の量をみて,7分目か,6分目ぐらいに水の量を減らします。
こうして,適正な水の量がわかってきたら,受け皿の水の高さのところにマジックで印をつけておくと便利です。
受け皿に溜めっぱなしはよくありませんが,用土の鹿沼土がやや白っぽくなるまでは,一時的に水を溜めてもかまいません。そのために,過湿で根腐れを起こすことはありません。鹿沼土の粒子は濡れていても,粒子と粒子の間に通常の土壌より大きな隙間があるので,根が酸素不足になることがない,と考えられます。
小粒は隙間が少なく,微塵も出やすいので,この栽培方法では用土としてふさわしくありません。鉢底の網目が細かいと目詰まりにより排水が悪くなり,根腐れが発生しやすくなります。
受け皿に水を溜めてもよいので,水やりの間隔が長くなります。受け皿の7〜8分目まで水を溜めると,高温期の8月でも10日〜2週間程度の長い間隔で水やりをすればよくなります。鉢の大きさに応じて受け皿は変えていますが,鉢の大きさに関
肥料は,セントポーリと同様緩効性化成肥料(IB化成)のみで,受け皿の上に置きます。肥料は,受け皿に溜めた水で溶かし,毛管現象で根に届けます。鉢土表面に肥料を置くと,その部分に水をかけないと,肥料成分が溶け出しません。茎葉が茂っていると,さらに水やりがしにくくなります。また,鉢表面から水やりをする場合には,受け皿にたまっていく水の量を気にしながら水やりをしなければなりません。
液肥を使用してもよいですが,省力化のためと,初心者は濃度の間違いをしやすいので,使用しない方が無難だと思います。施肥の詳細は,後述「5 栽培管理の実際」を参照して下さい。
室内の最低温度が6〜7度程度の低温でも栽培できます。夕方に窓際から,室内の中央に移動してダンボールで覆ったりする必要はありません。冬に洋ランが枯れやすいのは,低温と用土の過湿が根腐れを引き起こすからですが,この栽培方法では用土の過湿,株枯れは心配ありません。
夏季に,窓は締め切ってあっても,部屋の東側や南側は白いレースのカーテンで,西側は遮光カーテンで直射日光が入らないようにし,他の部屋に通じるドアを開けておけば,室内の毎日の最高温度が33〜35度,一時的に37度になっても,栽培可能です。
ただし,エピデンドラム,ワイルドキャット,セロジネ,パフィオペディルム,オンシジウム(アロハイワナガ,ラバーバースト,オブリザタム,シャーリーベイビー,トゥインクル)は35度以上の高温にならないように管理しないと枯死する場合があります。
ミズゴケと異なり,根が用土に絡まないので,植え替えがとても簡単です。
鹿沼土はミズゴケやバークと異なり,値段が安く,簡易な消毒方法で,何度も使用できます。
ハウスなどの施設や加温設備がなくても,上述のように室内で大幅な省力化,コスト削減を実現し,初心者でも簡単に洋ラン栽培ができるようにしました。
3 鹿沼土の特徴
セントポーリア第3章3(1)鹿沼土の特徴を参照のこと。
4 主な品目の特徴
,年間の降水量3,000〜5,000ミリの高温多湿の環境条件下で育っています。樹木の表面に
根を張り巡らせて生きる,いわゆる着生ランです。
生産者は,一定期間おおむね昼間は25〜21度,夜間は18度の変温管理をして花芽分化を
させて,周年出荷できるようにしています。自宅では早ければ11月下旬から12月上旬に花
茎が見えてきますが,遅ければ3月下旬になることもあります。
無加温で,最低温度6〜13度の状況で育てていますが,開花は早い株で4〜5月になり
ます。
(写真1) (写真2)
最も開花が遅い株の開花終了は,8月上旬になることもあります。開花期間は長く,2
〜3月程度は花が楽しめます(写真1,2)。開花が遅れても,次年度も咲きます。早く花
を咲かせたければ,花茎が見えた株を,暖房している部屋に移動して育てます。
なお,品種や栽培状況によって異なりますが,展開(開き切った)した葉が,4枚程度
になると,花茎が一つ,6〜8枚程度になると花茎が二つ現れます。上手に葉の数を増や
せれば,たくさんの花を楽しめることになります。この栽培方法では,毎年新しい葉は1
〜3枚増えます。
コチョウランは,ごくまれに高芽や脇芽が発生することはありますが,他の洋ランと異
なり株が増えることはほとんどありません。ですから,栽培を続けると年々茎が伸びてバ
ランスが 悪くなります。その改善方法は,後述5栽培管理の実際のとおりです。
後述5 栽培管理の実際を参照のこと
(写真3)
東南アジア,オーストラリアなどの熱帯,亜熱帯地域の山岳地帯が原産地です。着生ランです。霜が降りないところであれば,戸外で育てられるほど寒さに強いランです。
日照は好みますが,日焼けの原因となる夏の午後からの強光線は避けます。
ただし,洋ランの中でも,施肥のやり方を間違えると,花芽をつけるのが難しい品目のひとつです(写真3)。
品種によって,開花状況は異なりますが,自宅での開花は次の表のとおりです。室内の温度条件はコチョウランと同じです。
品 種 | ステム(花茎) 発生時期 |
開花期 | 花茎長(p) |
フジッコ(淡桃) | 12月上旬 | 2月下旬〜4月上旬 | 30 |
フェアリーフレークカルメン (濃桃,芯黒) |
12月下旬 | 3月下旬〜5月上旬 | 40 |
低温の温度と低温期間がとても重要ですが,文献によって『8度前後の温度が2週間,
6〜7度の低温に20日前後,6度前後の温度が10日間程度,10度以下の低温に1か月程度
,14度の気温に20〜 25日程度当てる』と様々です。品種によっても異なると思われます
。
からは肥料や水を控え,茎葉をいわゆる「アメ色」にする必要があるとよく言われていま
す。同時に日照不足にならないようにします。
自宅では日当たりのよい南側の室内で栽培してきましたが(室内の栽培状況については
後述を参照のこと),日照的には戸外が望ましいとも考えられます。そこで,2019年の4
月から,午前中だけ日が当たる東側軒下で2品種2鉢を育ててきました。その結果,次の
ようなことがわかりました。
11月下旬に花芽は十分形成されました。しかし,1月上旬に霜が直接当たったわけでは
ありませんが,低温で花芽がほとんど落ちてしまいました。霜が降りる前に室内に取り込
む必要があります。
低温期に雨に当たると,黒斑病の発生が目立ってきました。11月以降は,雨の当たらな
い軒下で育てます。室内では湿度が低いので,黒斑病が発生することはありません。黒斑
病が発生している株も栽培を続けていると,被害がなくなります。
,鉢を入れて倒れないようにしましたが,強い風が吹くときには鉢を移動しました。
病気の発生,風による鉢の倒伏,低温期の室内への鉢移動を考えると,室内栽培の方が
とても省力的でよいと考えます。
ただし,室内で育てる場合は,日当たりのよい窓辺で育てます。自宅では4段の棚で栽
培していますが(後述),デンドロビウムは窓辺に最も近い場所に鉢を置いています。戸
外での栽培と比較はできていませんが,花数が少なくて見苦しいということはないと思い
ます。
(写真4)
強い霜が降りない暖地では,庭木に着生させて,開花させ
ることができます(写真4:フローランテ宮崎にて2013年4
月27日撮影)。着生のポイントは,次のとおりです。
●日光を好みますが,真夏は午後から直射日光が当たらな
い場所が適しています。
●木の葉が茂り過ぎて,着生させる幹や枝に雨が伝わって
こないと,乾燥で枯れてしまいます。雨の日に,着生予
定の幹や枝の濡れ具合をよくみておく必要があります。
●強風で吹き飛ばされないよう根を麻ヒモなどでしっかりくくりつけます。根が少ない
場合には,ミズゴケを巻きつけます。通常は,ミズゴケは使用しません。ミズゴケを
つけすぎると,根がミズゴケの中に留まって木に張り付くのが遅れます。
●木付けは,4月に実施し,梅雨が終わる頃までには新根が十分出るようにします。
●木付け後発は,雨が降らなければ1週間に1度軽く水をかけます。梅雨明け以降は,3
週間雨がない場合は水やりをします。
●肥料は施す必要はありません。
後述5 栽培管理の実際を参照のこと
(写真5)
着生ランです。原産地は中南米です。低地から標高の高い山
岳地で生息しているので,種類はたくさんあります。花や草姿
,開花時期などは異なりますが,特徴としては小さい花がたく
さん散りばめられたように咲きます。一般的な品種は,アロハ
イワナガのようなタイプです(写真5)。トゥインクルは,香
りがとてもよいのが特徴です。
開花時期は,種類・品種や温度管理によって異なりますが,
自宅の室内(喜入地域:無加温,最低夜温6〜13度程度)では
次のとおりでした。最低夜温は5度程度で越冬できる,と思わ
れます。
種類・品種 | ステム(花茎) 発生時期 |
開花期 | 花茎長(p) |
トウインクル(淡オレンジ・淡桃) | 9月上旬 | 1月下旬〜3月上旬 | 20 |
オブリザタム(淡黄) | 9月上旬 | 2月中旬〜3月下旬 | 20 |
アロハイワナガ(黄色) | 11月下旬 | 3月上旬〜4月中旬 | 65 |
本来花芽になるはずが,日照不足や肥料過多で葉芽になったものが高芽であると言われ
ています。根の老化や根腐れなどで,株が老化衰弱してくると,種の保存のため高芽が発
生しやすくなると思われます。高芽をそのまま放置していると,株が衰弱するので見つけ
次第取り除きます。株を増やしたい場合には,高芽の根が植えれる長さに伸びたら,鉢植
えします。
後述5 栽培管理の実際を参照のこと
(写真6)
着生ランです。原産地はオーストラリア北部,ニューギ
ニアです。セッコク属デンドロビュームの一種で,デンド
ロビューム・ファレノプシスを略してデンファレと呼ばれ
ています。花型は小型ですが,ファレノプシス(コチョウ
ラン)に似ていることが名前の由来になっています。ファ
レノプシスとの交配種ではありません。
花持ちがよく,花茎が長いので,切り花としてもよく利
用されています。1b近く伸びる品種もありますが,室内では場所を取らない小型の品種
が育てやすいと言えます。
一度開花したバルブから葉がほとんどついていなくても2年目,場合によっては3年も
開花することがあります。
自宅室内(無加温)では,品種「花すみれ」(写真6)は,7月下旬〜9上旬に花茎が見え
始め,早ければ9月上旬頃から葉数が8枚の茎に,6輪の花が開花し,2か月程度は花が
楽しめました。
が必要です。
ただし,デンドロビュームほど施肥や水やりに気をつかわなくても花を咲かせることが
できます。施肥はコチョウランに準じます。
洋ランの室内栽培で過去(平成25年12月)に一度だけ,デンファレにクリバネアザミウマ
(黒いスリップス,幼虫は透明)が発生したことがあります。葉にカスリ上の白い斑点が
生じ,発生が多いと,排せつ物が黒い斑点となって葉が汚れます。見つけ次第,オルトラ
ンなどの粒剤を散布します。
後述5 栽培管理の実際を参照のこと
(写真7) (写真8)
(写真9)
中央アメリカから南アメリカ一帯を原産地とする着
生ランです。ひとつのバルブに一つの長い葉がつくの
が特徴です。一つの花茎に2〜4輪咲きますが,なか
には香りのする品種もあります。
(写真9)品種がよいと思います。過去に大型品種を
室内で2年間栽培したことがありますが,開花しませ
んでした。そこで,午後から強光線の当たらない玄関先で育てたところ,夏に花茎が見え
始め1月から開花しました。
他の洋ランと違って,開花時期が異なるタイプのものが多くあります。春咲き,夏咲き
,秋咲き,冬咲きの4タイプに加えて,開花時期が一定しない不定期咲きがあります。春
咲き,冬咲きは花芽が低温時期を経過し,花を咲かせるためにはある程度の高温が必要と
されています。
ただし,自宅で無加温で12〜3月に咲く品種がけっこうあるので,冬咲きタイプでも比
較的低温で開花する品種もあると思われます。
小輪系で,11〜1月に購入しました。
夏咲き,秋咲きはとうぜんながら花芽分化時期が低温でないので育てやすいと言えます
が,温度が高い時期に咲くので,開花日数は短くなります。品種,温度管理で異なると思
われますが,自宅では無加温で,9月開花で2〜3週間,11月中旬頃からは25日,それ以
降次第に長くなって,2〜3月は60日程度開花します。無加温で育てられる品種が手に入
れば,冬咲きタイプはお勧めです。
後述5 栽培管理の実際を参照のこと
(写真10)
地生ランです。樹には着生しません。原産地はアジ
ア,オーストラリアです。日本の春ランや寒ランもシ
ンビジュームの仲間です。霜に当たらないところであ
れば,冬越しできます。
強い日差しは葉焼けの原因になるので,夏は午後か
らは直射日光が当たらない場所に置きます。
日照を好むので,サンルームなどがない場合は,室
内での栽培には向いていません。
シンビジュームはおおまかに,大きさで小型(写真10),中型,大型の3タイプに分別で
きます。室内で開花を楽しみたい場合は,部屋の大きさにあったタイ プを選びます。
自宅では,東側の玄関横に小型のタイプを周年置いて育て,開花時は時折室内で観賞し
ています。令和元年度に初めて購入したのですが,12月末から咲き始め,2月上旬に咲き
おわりました。
ちなみに生産者はお正月前から開花株を出荷します。ハウスで加温栽培すると,5〜6
月に花芽が見えてきますが,シンビジュームは25度以上の高温下では蕾が落ちる,いわゆ
るアボーションが起きます。そこで,夏場は涼しい温度下で育てるため山上げ栽培をしま
す。たくさんの株を山に上げたり,下げたりして出荷する生産者の苦労があって,立派な
花が消費者のもとに届いています。
花茎数,花数が多く,病害虫のない健全な株を購入します。その鉢と同じように生育,
開花させることを目標とします。その鉢の大きさ,株のバルブの数,花茎数,花茎長,1
花茎当りの花数,葉の長さなどをよく観察し,記録しておきます。
●植え替え
購入した株は,開花終了後4月になったら鹿沼土の大粒を用土にして植え替えます
。バルブが用土に埋もれないようにします。根が鉢内に納まらないようであれば,切
ってもかまいません。
次年度以降は,鉢内に新芽が大きくなるスペースがなくなってきたら植え替えをし
ます。一般的には,2年に一度を目安に植え替えます。
●水やり
基本的に他の洋ランとやり方は変わりません。ダニ発生防止を考え,軒下でなく,
雨の当たる場所で栽培しますが,新しい栽培方法では,鉢の下に受け皿を置きます。
雨が降り続けて受け皿の水が溜まりっぱなしでも,水はそのままにしておきます。受
け皿の水がなくなり,表面の鹿沼土の色がやや白っぽくなり始めたら,水をやります
。病気が発生するようであれば,軒下に鉢を置きます。
●施肥
4月からバルブが肥大する10月まで,小型種は,月始めにIB化成を6号鉢は5粒
,5号鉢は4粒を目安に施します。
●芽かき
毎年安定して花を咲かせるためには,開花させる芽の数を1鉢当たり2本に制限し
ます。芽の数を増やすと,立派な花が期待できなくなります。2本咲かせることがで
きたら,小型,中型品種は3本に挑戦してもよいでしょう。上記の目標は,プロの生
産者だから達成できる数値ですが,品種,鉢の大きさによってはたくさんの花を咲か
せることができると思われます。
●芽かきの時期
春に新芽(葉芽)が出始めたら,大きいものを2つ残して,以降出てくる芽は全て
摘み取ります。秋には花芽と葉芽が同じ時期に出てきます。両者は似ていますが,花
芽はふっくらとしてやや幅広なので区別がつきます。葉芽をたくさん残したままにし
ておくと,花芽が充実しません。
秋に出た葉芽をそのままにしておくと,次年度に早く花茎が伸びて蕾が見えてくる
ものもありますが,残念ながら高温で蕾が落ちてしまいます。
●病害虫
開花後しばらくしてから,花が枯れ始めたことがありましたが,よく見るとスリッ
プスがたくさん発生していました。オルトラン粒剤を散布して,その後の被害を食い
止めましたが,花茎が見え始めたら予防的に散布しておく必要があります。
フラワーパークかごしま:2015年3月24日撮影
5 栽培管理の実際
(写真11)
部屋の大きさを考えて,品種を選びます。一般家庭用には,中小輪系の品種(写真11)がよいと思います
。初めて洋ランを栽培されるかたであれば,コチョウ
ランから始めることをお勧めします。鹿沼土を用土と
した栽培であれば,室内で最も育てやすい品目である
と思います。開花期間が長く,夏の高温,低照度など
への適応力が最も高いと考えます。
栽培上好ましいのは,通気性のよい素焼き鉢です。ただし,そのために鉢土の乾き具合が
速く,水やりの間隔が短くなります。長く使っていると,藻やカビが生えてきて汚れてきま
す。プラスチック鉢は軽くて取り扱いもしやすいし,鹿沼土を使えば排水もよく,これまで
生育や開花に特に問題はありませんでした。
ちなみに生産者は,出荷までは小さなポリポットで栽培し,出荷するときにはみばえのよ
い陶器の鉢で出荷しています。大鉢は,小さなポリポットが寄せ植えされています。
鉢の大きさについては,株の大きさに比して鉢が大きすぎたり,着生ランは根が木にへば
りついているだけなので,深鉢にしたりすると栄養生長が盛んになり,花芽がつきにくくな
ると言われることもあります。
そこで,購入した陶器鉢を有効に活用できないかと考え,再度この鉢に植え替えて育てて
みました。その結果,深鉢であっても開花に支障はありませんでした。ちなみに,シンビジ
ュームなどの地生ランは,株も大きく,地中に深く根を下ろすことから,深鉢(プラスチッ
ク性)が使われています。
低温期は植え替えに適していないので,適期になるまで,特に水管理に注意が必要です
。というのは,ミズゴケ栽培の場合,初心者は,低温期は水のやり過ぎによる根腐れで株
枯れを起こすことが多いからです。用土がバークの場合は,乾き具合をよく見ておかない
と,過乾燥で株枯れを起こす場合があります。
また,通常購入した大きな鉢は,数株の開花株を寄せ植えしてあります。株ごとにビニ
ールポットに植えてあるので,それぞれの株元にしっかりと水やりをやらないと,過乾燥
で株枯れを起こす場合もあります。
最低温度が15度以上(自宅では5月)になったら,一回り大きなサイズの鉢に植え替える
か,株分けします。秋に植え替える場合は,最低夜温が15度になる1か月ぐらい前までに
植え替えます。栽培経験を積めば,最低温度の目安をおおよそ10度(自宅では4月)として
もかまいません。
●用土を取り除く
(写真12) (写真13)
用土がミズゴケの場合は,乾燥していると取り除きにくいので,水を溜めたバケツ
にしばらく鉢をつけます。ミズゴケが十分湿ると,やりやすくなります。手で取れな
い場合は,棒でつついてかき落とします(写真12)。少々根が切れても問題はありませ
ん。枯れた根や,伸び過ぎた根,鉢に入らないほど多すぎる根は切り落とします。最
後に水洗いして,用土をできるだけ取り除きます(写真13)。
●鉢に植える
(写真14)
鉢上げの手順は,第3章セントポーリア,第4章ミ
ニ観同じです。まず,株の大きさに応じた,鉢底が網
目になったプラスチック鉢を選びます。鹿沼土の微塵
や小粒がこぼれ落ちるくらいの網目がよいと思います
。網目が細かいと,微塵がたまって水はけが悪くなり
,根腐れが発生することがあります。
次に,株を鉢に入れてみて,株元が鉢の7分目ぐら
いの高さになるように,予め鉢底に鹿沼土の大粒を置
いておきます。後は,土入れで大粒を徐々に入れて,株元が8分目ぐらいの高さになるよ
う調整します。葉は用土で埋もれないようにします。一番上の根は少しぐらい見えても
かまいません(写真14)が,できれば根が全部見えなくなるぐらい用土を入れます。洋
ランなので少しぐらいは鉢の中に隙間があってもかまいませんが,割りばし等でつつい
て大きな隙間を埋めます。
(写真15)
通常は2年に1回植え替えをします。全体的に葉色が薄くなり,根や株が鉢から多数はみ出し,かん水をしても鉢の中に水がしみ込みにくいような状態になれば植え替えが必要です。
植え替えずにそのままにしていると,鉢の中が老化した根で一杯になるので(写真15),排水,酸素の供給,養水分の吸収がうまくいかず生育不良,不開花,病気の発生,株枯れの原因になります。花が咲いても,花数が少なくなります。
コチョウランは,栽培を続けると,年々腰高になり(写真16),茎からたくさんの根も出てバランスが悪くなります。その時には,茎や根を切り詰めて(写真17)植え替えます。
(写真16) (写真17)
コチョウラン以外の洋ランを株分けをする場合には,バックバルブ(花は咲き終わってい
るが,まだしわが寄らず元気な株)も含めて3〜4株程度に分け,あまり小さく分け過ぎな
いようにします。小さく分けると,株が花芽をつける大きさになるまで時間がかかります。
バックバルブには,新しいバルブが生育するための養水分が含まれているので,枯れるまで
はつけておきます。
マニュアルには夏は,風通しのよい戸外で50〜70%程度(デンドロビュームは30%程度
,オンシジュームは50〜60%程度)の遮光をするなどと書かれていますが,そのような遮光
ができる場所(庭やベランダ,木陰など)がない家庭は多いのではないでしょうか。
(写真18)
そこで,室内だけで栽培できる方法を検討しました。
自宅では,ちょうど2階の南向きの6畳の部屋がよいと思
い,鉢を4段のステンレス製棚(写真18:45×横90×高さ
155p,キャスター付き)に周年置き育てています。
日光が差し込む9月上旬〜5月上旬までは,レースの
カーテン1枚越しで育てています。どん雨天の時と,その
他の期間は,カーテンは空けたままです。西日が入り込む
西側の窓は,夏の午後からは遮光カーテンをしています。
こうすることで,戸外での遮光資材や施設は必要とせ
ず,台風などの強風時や長雨の際に鉢の移動をしないです
むようになります。
す。
なお,開花した鉢は,ある程度の明るさがあるところ
であれば観賞期間中置いていても問題はありません。ただ
し,感覚的に暗いと感じる光線不足のところでは,生育や開花不良になります。蕾がついても途中で落ちたり,花数が少なくなったりします。ひどい場合には,蕾がつきませ
ん。
また,たまに戸外で葉水をすることはよいのですが,急に強光線に当てないようにして下さい。葉焼けを起こすので,必ず日陰で行います。
生育できないような高温,低温を避けることが重要です。これまでの室内栽培結果や情
報収集から,コチョウラン,デンファレ,デンドロビューム,オンシジューム,カトレア
,シンビジュームなどは,開花は遅れますが,最低夜温は5〜6度以上,最高温度は33〜
35度以下であれば栽培可能だと思われます。
現在の自宅に移る前に,コチョウランと中輪系のカトレアを一冬最低温度が2〜5度に
なる部屋(縁側)で,鹿沼土を用土とした新しい栽培方法で一冬育てたことがあります。一
晩だけ0度まで下がったことがありますが,無事冬越しできました。ただし,0度に下がっ
たと言ってもその時間がごく短時間であれば問題がない場合もあります。高温につていも
同じで,一時的に36〜37度になっても,枯死することはありませんでした。
自宅での冬季の最低温度は,無加温で6〜13度程度です。夜間は10〜11時まで,温度を
20〜22度に設定して暖房すると,早朝は12〜14度に下がっています。最近の住宅は気密性
が高いので,無加温でも最低温度5〜6度以上は十分確保できると思われます。
温度管理の失敗をなくすためには,育てている場所の季節ごとの最高,最低の温度をよ
く把握していることがとても大事です。最高最低温度計(第3章セントポーリアを参照下
さい)はぜひ備えておくべきです。
なお,エアコンなどの風が直接当たると,葉や花が傷んだり,蕾が落ちてしまうことが
あるので注意します。
室内は無加温,無冷房で,冬は最低温度が6〜13度,夏は最高温度が33〜35度,まれに
37度になることがあります。植物の生育上や,病害虫の発生防止のためには,風通しのよ
いことが必要です。寒い時は,窓は閉めっぱなしでよいのですが,気温が15度以上の場合
は,窓を開放します。
外出する場合は,室内の入口のドアと南側と西側のアルミサッシ窓の上部枠にある小さ
な換気口だけを開けておきます。直射光線が入る恐れがあれば遮光カーテンは必ず閉めま
す。
なお,鉢は周年同じ場所で育てています。寒いからと言って,暖房のある部屋に移動さ
せたり,窓から離れた場所に移動させたりすることはありません。寒い夜間は窓辺から,
部屋の中央に移した方がよいと言われることもありますが,実際かなり大きな部屋でない
と,窓際と反対側の壁の温度差はほとんどないと考えます。また,留守のときには,どう
しようもありません。
やり過ぎると,濃度障害で根が傷み,株が衰弱するか,ひどい場合は枯れてしまいます
。洋ラン栽培では,生育期に2週間に1回程度ごくうすい液肥を施用しますが,慣れないと
希釈濃度を誤ってかなり濃い液肥を使用してしまうことがあります。デンドロビュームで
は,花芽ができる頃に,肥料が多いと,茎葉の色が濃くなり,大きくなるばかりで,花芽
がつかないということになりかねません。施肥の失敗をなくすためには,肥料は量だけで
なく,施肥時期も考慮しておくことが重要です。
逆に肥料が少なすぎると,植物体が花芽のできる大きさに育たなかったり,花芽ができ
ても数が少なかったり,花が小さくなったりします。
自然界では着生ランは,樹木の表面に根を伸ばしへばりついているだけなので,肥料は
ごく少ない状況で生育しています。ですから,施肥量があまりにも多過ぎると,根の濃度
障害をおこして株が枯れてしまいます。施肥量を増やす場合には,前年度の鉢や植物体の
大きさ,開花輪数,葉色,葉の長さや垂れ具合などを考慮しながら,少しずつ増やします
。
通常,5〜9月(デンドロビュームは7月まで)にかけて2週間に1回程度液肥をやりま
すが,省力化のため,また初心者がやりやすいように,緩効性肥料のIB化成しか使用し
ていません。
これまで肥料(IB化成)は,当然のこととして鉢土の上に分散して置いていました。
しかし,この方法では,肥料は水に溶けないと効かないので,置いたIB化成に直接水が
かかるようにしなければなりません。そこで,受け皿に肥料を置くようにしましたが,水
やりがとても簡単になりました。
初年度鉢上げ時は,鉢上げ後2か月目に,鉢と苗の大きさを考え,IB化成を1〜3粒
(4号鉢は1粒,5号鉢は2粒,6号鉢は3粒とします),その2か月後にも同量の粒数
を施します。11月以降の低温期には肥料は施しません。
2019年までは,6〜7月に開花が終了したら,鉢と株の大きさに応じて,それぞれ1〜
3粒を施し,追肥は,その2か月後に,半分を施していました。
2020年4月から,植え替えしない鉢については,10月まで2か月おきに計4回(デンド
ロビュームは3月から7月まで計3回)追肥するようにしました。施肥量は,1回目と同
じ粒数にしました。
ラン類については,通常開花期間中は肥料を施さないのが通常ですが,それは低温期に
開花している場合のことだと考えます。本来,植物は花芽分化後から開花までは肥料の吸
収が急激に増える時期であり,また4月以降は植物の肥料養分吸収,生育に適した温度に
なります。
こうしたことから,施肥量を従来より増やすことにしました。また,これまでの生育開
花状況と,販売されているラン類の葉色の濃さから,もう少し施肥量を増やした方が,株
が充実し開花輪数が増えるのではないかと考えたからです。
理想的には,冬期は日中暖かい時間帯に,少し温かい水をやります。ただ出勤が朝早く,
退社が夜遅い方は,朝晩寒い時間帯に,どうしても水やりせざるをえません。そのような場
合には,理想的には湯沸かし器からのぬるま湯を水やりするとよいでしょう。
ただ自宅では,朝でも夜でも自分の都合の良い時に,用土の乾き具合をよく見て,室温が
5度以上あれば水道水をそのままやっています。それでも,これまでは問題はありませんで
した。用土が過湿にもかかわらず,あるいは過乾燥になってからかん水することが最もよく
なく,根腐れの大きな原因になります。
自然状態では,洋ランは時折霧や雨で葉が濡れて,体温調整がされたり,葉がきれいにな
ったりして呼吸や光合作用がよくなると思われます。ですから,本来なら葉水はした方がよ
いと考えます。 しかし,鉢数が増えたり,室内で育てたりする場合にはその場で簡単にできないこともあ
ります。そこで省力化を考え,葉水をしないことにしました。その結果,問題はないと判断
しました。葉がホコリで汚れるといったこともあまり感じられませんでした。 そうした汚れが気になる場合は,濡れティシュでたまに葉を拭くか,外に持ち出し,風通
しのよい日陰で,ジョロで水をかけてやるとよいでしょう。
室内では,デンドロビュームの茎や洋ランの花茎は光の当たる方向に曲がるので,支柱を
立てます。曲がったまま花を咲かせても趣があります。鉢を時折回転させると,真っ直ぐ伸
びていきます。
コチョウランについては,花茎が伸び始めたころは固く折れやすいので,15〜20a程度伸
びたら,支柱を立てます。専用のテープで,最初は仮留めをします。徐々に株もとからでき
るだけ直立させて,第1花の手前から緩やかにカーブさせていきます。最初に購入した株に
ついていた支柱を,継続して利用すると便利です。
花茎は,光の当たる方向に伸びていくので,曲げたい方向に株の向きを変えると支柱立て
がしやすくなります。
古葉は手で無理やり引きちぎらず,自然と枯れ落ちるまで放置しておきます。ハサミを使
う場合は,完全に枯死してからにします。ウイルス病が発生している場合は,生きている葉
を切ったハサミをそのまま他の株に使うと,伝染させる危険性があります。
花はある程度咲かせたら,その後の株の生長を促し,次年度の開花をよくするため,ステ
ムを切り取って切り花として楽しんだ方がよい,と言われることがあります。
理論的には株のためにはその方がよいと考えますが,これまで最後の一輪が散るまで待っ
ていても,特に問題はありませんでした。過去に8月初めに開花していたコチョウランを購
入したことがあります。この株は,9月中旬に咲き終わってからステムを除去しましたが,
翌年も同様に咲きました。
ただし,品種や株の生育状況などによっては,早めにステムを切り取った方がよい場合も
あると思われます。株の生育が思わしくない場合には,そうした方がよいと考えます。
梅雨時期を始め,長雨に当てると,黒斑病、炭そ病,軟腐病などの病気にかかりやすく
なるので注意します。同様に,根腐れをさせると,抵抗力が弱り,このような病気にか
かりやすくなるので,適正な水やりに努めます。
また,アブラムシ,カイガラムシ,ダニ,アザミウマ(クリバネアザミウマ:
ス),ナメクジなどの害虫は,早期発見防除に努めます。アブラムシによりウイルス病が
発生した場合には,速やかに処分します。
病害虫の発生がないかよく観察して,健全な株を購入します。室内で鹿沼土を用土にし
て栽培すると,病気の発生はこれまでありませんでした。黒斑病や炭そ病にかかっていた
株を購入したこともありますが,室内は湿度が低いのと,鹿沼土は排水がよいので,根を
始め株の生育が健全になり,病気の伸展が止まり,新しいバルブへの伝染はありませんで
した。
室内での栽培では,害虫の発生は非常に少なくなります。ナメクジの発生は当然のこと
ながら全くなくなります。
これまで,クリバネアザミウマがデンファレに,アブラムシがエピデンドラムに一度だ
け発生したことがありましたが,農薬散布がより安全で省力的な粒剤(オルトラン粒剤な
ど)の施用で速やかに(施用後4〜5日程度で効果が見え始める)防除できました。
デンドロビュームには,カイガラムシが発生しましたが,ハブラシとつまようじで掻き
落としました。カイガラムシは株全体をよく見て,一回ではなく,5日おき程度に根気強
く何度も注意して防除しないと再発します。カイガラムシは,恐らく購入株に付着してい
たものと思われます。購入時に,ダニやカイガラムシの発生には十分に注意しますが,こ
れらの害虫の見落としを完全になくすことはとても難しいと言えます。
ダニは,デンドロビュームに発生しました。濡れティッシュでかすり状に白くなった被
害葉を挟み込み,葉が傷つかないように何度か拭き取りましたが,発生初期だったので何
とか防除できました。文献によるとシンビジューム(栽培していない)やデンドロビュー
ムには他のものよりも発生しやすいようなので,特に葉裏を注意して観察します。
ダニはいったん発生すると,粒剤はなく乳剤などの薬剤に頼るしか防除方法がありませ
ん。なお,まわりの植物にダニが発生していないか十分に気をつけます。風通しの良い戸
外では,雨(ダニは乾燥を好む)や天敵により発生しない場合もあります。
ただし,雨が多いと黒斑病や炭そなどの病気が発生する場合もあるので注意します。
この栽培方法を継続していると,鉢によって差はありますが,鉢土表面に少しずつ藻が生
えてきます。藻が表面を覆い尽くすと,鹿沼土の乾き具合がわかりにくくなってくるので,
その前に鉢土表面の藻が生えた部分だけ入れ替えます。受け皿も藻が生えてきたり,鹿沼土
の微塵が溜まってきたりするので,汚れが目立ち始めたら洗い落とします。