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      失敗しない,上手な花の育て方 第3章      
   (こうすれば簡単!枯らさずに咲かせるセントポーリアの栽培方法)


  今日からあなたも花博士 
 新技術で簡単! 枯らさずに長く育てる鉢花づくり,楽々手作りガーデニング
     恐らく    

      世界で最も簡単でわかりやすい趣味の園芸花栽培マニュアル

 
  

カップ栽培で育てたセントポーリア 用土は全て鹿沼土

 用土は,全て鹿沼土。鹿沼土の色の変化で,水やりのタイミングが簡単にわかります。底穴のないおしゃれなカップと植物の組み合わせで,世界に一つしかない自分だけのセントポーリアが省力,低コストで簡単に育てられます。
*写真は,2020年1月9日勤務していたフラワーパ
 ークかごしま事務所内で撮影

                  



第3章 こうすれば簡単!枯らさずに咲かせる
      セントポーリアの栽培方法
      
(この栽培方法を思いついた経緯を含む)
 

 
目 次→下線を引いた各項目をクリックすると,本文にリンクします。 

1 セントポーリアの特徴

 
2 新技術の特徴
 ◆底穴のない,おしゃれで小さなカップを鉢として使用
 ◆水やりのタイミングがわかりやすいので,水やりの失敗がなくせる
 ◆水やりの間隔が長くなる
 ◆水やり時間帯,水の温度をそれほど気にする必要はない
 ◆肥料のやり方がとても簡単

3 従来のカップ栽培との比較
 
◆容器
 ◆用土
 ◆肥料


4 この栽培方法を思いついた経緯

5 鉢上げ準備
 
◆苗の手配と鉢上げ時期
 ◆鉢の準備
 ◆用土

6 その他準備する物
 
◆用土入れ
 ◆バケツ
 ◆ゴム手袋,ビニール袋,新聞紙

 ◆水やり用のジョロ

7 鉢上げの手順

8 育て方のポイント(鉢上げ後の管理方法)
 
◆水やり
 ◆肥料
 ◆光
 ◆温度
 ◆植え替え,芽かき
 ◆増殖
 ◆病害虫対策


 

1 セントポーリアの特  

 イワタバコ科。アフリカ熱帯地域が原産地ですが,山岳地帯の冷涼な場所に生息しており,室内栽培に適しています。
 日本には,明治末期に導入され,19701980年代にはその栽培は一大ブームを起こしたそうです。その要因は,次のとおりです。


★色や花形が多種多様で,15,000種以上あるそうです。花はとても可憐です。
★室内で花を咲かせやすい品目です。適温は1825度程度で,室内の最低温度が5〜6度以上であれば冬越しできます。
夜に窓際から,室内の中央に移動してダンボールで覆ったりしなくてもかまいません。
 レースのカーテン越しの明るさが必要ですが,照度が不足する場所では蛍光灯で6000ルックス程度の明るさが保てれば花を咲かせることができます。
★挿し芽,株分けで容易に増殖できます。

 しかし,その後ブームが去って,生産者や栽培する人が現在では大幅に減少しているようです。なぜ,ブームが去ってしまったかは検証中ですが,その原因は,
  @水やりの失敗で株を枯らしてしまう
  A植え替えに手間がかかる
  B用土,根腐れ防止剤,蛍光灯,栽培棚など資材費がかかる
などであると考えます。

        (写真1)

自宅で栽培したセントポーリアカップ栽培の全ての品種 品種数が多いだけに,興味のある
方は栽培鉢数が増えると,鉢ごとに
水の乾き具合が異なるので,水管理
が難しくなってきます。植え替えの
手間もいっそうかかるようになり,
よほど時間的余裕があり,栽培が好
きでないと,継続は困難になると思
われます。
 鹿沼土を用土にした新技術では,
このような栽培上の問題点を解決し
,初心者でも安い経費で簡単に花を
咲かせ,枯らさずに長く育てられる
ようになります。開花期間が長く,魅力的なセントポーリアは,今後その魅力はますます高まり,栽培する人が大幅に増えるのではないでしょうか。
 写真1は,新技術を駆使し,自宅で栽培した品種の全てです。写真2は,その中の品種を
組み合わせて飾ったものです。
                                               (写真2)             (写真3)
  竹籠の鉢カバーに寄せたセントポーリア  事務室で育てたカップ栽培のセントポーリア

 なお,写真3(令和元年1225日撮影)は,新技術で栽培した第1号の品種(品種コラ,令和元年月中旬頃に鉢上げ,令和10日現在も生育中)です。月に咲き始め,第花が開花してから枯れるまではか月(株全体としての観賞期間は20日程度),12月は第花が開花してから枯れるまではか月(観賞期間は2か月半程度),3〜月は第花が開花してから枯れるまでは27日(観賞期間は40日程度)でした。適正な温度と日照が確保できれば,年に3回は開花すると思われます。
 また,4〜3月までは,エアコンのある退職前の職場の机の上に鉢は置いていました。毎日朝30分〜夕方7時頃までは,天井につけられた蛍光灯下にありました。疲れた時に,花に目をやるとほっとした気分になります。


2 新技術の特徴

◆底穴のない,おしゃれで小さなカップを鉢として使用
 鉢が小さく,受け皿も不要なので,移動が簡単で,掃除も楽です。狭い部屋やスペースでも飾りやすく,十分楽しめます。鉢と植物の組合せで,世界にひとつしかない自分だけのかわいい鉢物ができるのが大きな魅力で,育てるのがより楽しくなります(写真4〜15)
 もちろん通常の鉢でも栽培は可能です。
   (写真4)          (写真5)        (写真6)
 自宅で育てたカップ栽培セントポーリアの品種 自宅で栽培したカップ栽培セントポーリアの品種 自宅で栽培したカップ栽培セントポーリアの品種

   (写真7)          (写真8)         (写真9)
 自宅で栽培したカップ栽培セントポーリアの品種 自宅で栽培したカップ栽培セントポーリアの品種 自宅で栽培したカップ栽培セントポーリアの品種

    (写真10)          (写真11)         (写真12)
 自宅で栽培したカップ栽培セントポーリアの品種 自宅で栽培したカップ栽培セントポーリアの品種 自宅で栽培したカップ栽培セントポーリアの品種

    (写真13)         (写真14)          (写真15)
 自宅で栽培したカップ栽培セントポーリアの品種 自宅で栽培したカップ栽培セントポーリアの品種 自宅で栽培したカップ栽培セントポーリアの品種


◆水やりのタイミングがわかりやすいので,水やりの失敗がなくなる
 鉢栽培で最も難しいのが水やりです。鉢土の乾き具合を見て水やりをするのが原則ですが,経験のない方には乾き具合の判断がとても難しく,水のやり過ぎ,あるいは乾かし過ぎが原因で植物を枯らしてしまうことが多いようです。
 鹿沼土は,濡れていると茶褐色ですが,水分が少なくなると白くなってきます。この栽培方法では,用土表面の鹿沼土が少し白っぽくなり始めたら鉢土の表面まで水やりをします。用土の色の変化で,水やりのタイミングが容易にわかります。鉢がたくさんあると,鉢や植物の大きさが異なるので,水やりをしてから乾き始めるまでの期間は同じではありません。やむを得ずしばらく家を空けるような場合には,十分乾いていない鉢があっても,全て鉢土の表面まで水をやってもかまいません。
 ただ,水やりのかけひきをして,ときおり根に酸素を送り込んでやることは大事だと考えます。


◆水やりの間隔が長くなる

  容器一杯まで水やりできるので,水やりの間隔が長くなります。


◆水やりの時間帯,水の温度をそれほど気にする必要はない
 水やりの時間帯は,理想的には暖かい昼間ですが,日中不在の方は,冬期であっても,室温が8
度以上あれば,早朝,夜遅く帰宅後でもかまいません。また,ぬるま湯でなく水道水でも問題ありません。


★肥料のやり方がとても簡単

 この栽培方法(カップ栽培)では,全て粒状(大豆大)の緩効性化成肥料(IB化成)を使用します。粒が大きいととても取扱いやすく,数を数えて数粒施すだけなので,とても便利です。緩効性なので施肥回数も少なくて済みます。



3 従来のカップ栽培との比較


◆容器
 従来の栽培(ハイドロカルチャー,水耕栽培)では,容器は透明なガラスやプラスチック製で,中の水の量がわかる透明なものが利用されています。プラスチック製で色のついたものは,下部の一部を水位がわかるように透明にしています。水は容器の下部から4
分の1程度の高さ以上に水をやると根腐れを起こすとの理由から,透明な容器が使用されています。
 水やりの量が限られているので,水やりの回数は増えます。容器と植物の組合せのバラエティも少なくなります。長く使用していると,藻が発生して容器の汚れが目立ってきます。

 新しい栽培方法では,水は鉢土の表面までやれるので,透明でない陶器などでも栽培できます。水やりの間隔も長くなります。

 セントポーリアの場合は,できるだけ長く大きくしないで小さな姿を楽しみたいミニ観葉などと異なり,肥料を少なくするという訳にはできません。株が大きくなると,ミニ観葉より大きめの容器が必要となります。


◆用土

 従来の栽培では,用土はハイドロカルチャー専用の用土(ハイドロボール,炭など)を使用します。カラーサンドや水分を含んだビー玉状のカラーボールなどの用土も利用されます。透明な容器で,こうしたカラフルな用土を用いるととても華やかで,夏場は清涼感があります。

 新技術で利用する鹿沼土は価格が安く,再利用ができますが,従来のカップ栽培の用土は価格が高く,再利用については説明がなされていないので不明です。ハイドロボールや炭は再利用可能と思われます。


◆肥料
 速効性の肥料は,カップが小さいので,肥料が多過ぎると根が濃度障害で傷む恐れがあります。ほんのわずかな量を計量するのも大変です。
 また液肥は,初心者だと,希釈液をつくるのが面倒であったり,濃度や量を間違えて枯らしてしまったりする場合がありがちです。そこで,最も施用が簡単なIB化成を使用しています。肥料の詳細は,10
ページを参照下さい。



4 この栽培方法を思いついた経緯



 人生は思いがけないことが思いがけないときに起き,思いがけない方向に展開していきます。私がこの栽培方法を思いつけたのは,五つの偶然が重なったからです。
 高校時代の頃,人口爆発による世界の食糧危機や飢餓が,近い将来がやってくると新聞やテレビで連日のように報道されていました。そのような報道に触発されて,世界の食料危機は自分が解決するぞという意気込みから,大学は農学部を希望し作物学を専攻しました。
 小学校5
年のときに,父の仕事の関係で鹿児島から大阪に引っ越したのですが,自然豊かな鹿児島に戻りたいという強い気持ちがありました。幸いにも鹿児島県庁に入庁でき,初任地は川内市の農業改良普及所で,希望通り水稲を中心とした作物栽培の指導をすることになりました。

 ところが,入庁2年目から,長く続く消費低迷から国の在庫米が増え,水稲の減反政策が始まりました。これが,第一の偶然です。このときに将来の日本の食糧危機について,あれこれ考えましたが,外国からの食糧輸入が途絶える状況が切迫しない限り,国はその対応を急がないし,自分自身も技術者として食糧危機に取り組む課題はもはやないと思いました。いざ食糧危機がくれば,人々は猫の額ほどの土地も耕して,サツマイモや水稲などの作物を栽培し,何とかして生きていくだろうと考えました。
 こうしたことから,当時今後需要の伸びが期待できる品目,専門の仕事以外の人とも気軽に話ができる品目,自分の趣味としても楽しめる品目であることを考慮し,専門項目を花に変更しました。
 二つ目の偶然は,平成5年の頃カツオ節で有名な枕崎市で電照ギクの指導をしていた時,昼食でたまたま入ったレストランのトイレで,牛乳ビンに水を入れて飾ってあった白い根を伸ばしたオリヅルランとポトスを見つけたことでした。当時はまだキク,ユリ,カーネーションなど切り花についてしか学んでいなかったので,とても興味を引きました。同時に,容器が牛乳ビンでなくコーヒーカップなどであれば,もっとかわいく,観賞価値が高まると思いました。
 早速自宅にあったコーヒーカップにオリズルランとポトスを植えてみようとしました。ただ,コーヒーカップは直径が大きく,水では植物が固定できないので,ボラ土を用土として使用しました。この方法で,かなり長い間オリヅルランとポトスが楽しめたと記憶しています。その後いつしか,二つの植物とも枯れてしまって,それっきりこの栽培方法のことは忘れていました。

 三つ目の偶然は,平成24年4月に,キクやユリなど花苗の供給と花の新技術を実証展示,研修を目的としたフラワーセンターに3度目の赴任をしたことでした。さすがに3度目で,過去11年間勤務していたので,新鮮味がなく,当初はやや意欲に欠ける状態でした。ただし,その時は所属長として責任のある立場になったので,それではいけないと思い,花の関係者の間で大きな課題となっていた花の消費拡大に取り組むことにしました。
 四つ目の偶然は,その課題の解決策について整理し終わった頃に,指宿市花き振興会から,総会終了後に花の消費拡大をテーマとした講話を依頼されたことでした。指宿市花き振興会には,切り花だけでなく,観葉の生産者も加入していたので,観葉生産者の興味や期待にも応える内容を織り込む必要があったことが,私自身にとって大きな飛躍への第1歩になりました。その内容を検討していたところ,インターネットで観葉植物に対する次のような消費者の四つの意見を見つけました。

@水やりのタイミングがわかりにくく,水やりの失敗で植物を枯らしてしまう

A鉢が大きくて,狭い部屋やスペースに飾れない

B鉢底にアリなどのムシがすみつく

C花が咲かず,緑色のものが多いので,多様性がないように思われる

 この意見への答えは,観葉生産者にとってかなり興味深い話になるのではないかと思いました。と同時に,以前にボラ土を用土としたコーヒーカップ栽培を思い出しました。この栽培方法であれば,AとBは容易に解決できます。Cについては,観葉植物と容器の組合せで多様性が演出できます。ただし,@の解決が最も困難でした。色々考えた末,水分の減少とともに色が変わる鹿沼土にたどり着き,この栽培方法が確立しました。
 この栽培方法を他の品目にも応用できないかと考えたところ,セントポーリアや洋ランにたどり着いたわけです。
 さて,実は私が講話を依頼された理由に最後の偶然があったのです。その偶然は,私の書いた年賀状によって生まれたのでした。指宿市花き振興会の事務局担当者とは,年賀状のやり取りをしていたのですが,毎年の干支を絡めた私の年賀状がユニークなので,きっと私ならおもしろい話をしてくれるだろうと思い,彼が私を講師として推薦してくれたとのことでした。
 人生においては,自分自身が出あったことをその時々大切にして,懸命に生きていくことが大事だと思います。それらが,いつかどこかでまた結びついて,自分自身を成長させてくれることがあると考えるからです。

 

 5 鉢上げ準備

◆苗の手配と鉢上げ時期
 4〜8月に病害虫被害のない開花株を購入し,鉢上げをします。12
〜1月に開花株を購入することもできます。

  低温期の植替えは,根を傷めやすいので避けます。春は,夜温が15度以上(鹿児島市では月上旬以降)になれば安心して植替えできます。秋は,夜温が15度以下(鹿児島市では10月上旬)になる1か月前までに植え替えます。低温期になる前までに,十分に根を生育させておくことがポイントです。
  ただし,後述7(鉢上げの手順)のとおり,低温期でも不可能ということはありません。いつも常識に追随していると,新しい技術は生まれてきません。

◆鉢の準備
 植物との組み合わせを考えながら,100
円ショップや陶器店巡りをするのは楽しいことです。自宅に不要な食器類があれば,その中から選ぶこともできます。透明なガラス類は,長く使用すると,藻で汚れやすくなりますが,夏場に使用すると清涼感があります。

◆用土
 
水やりのタイミングがわかりやすく,清潔な鹿沼土を使用します。粒の大きさは,微細粒を除いた小〜大粒のいずれでもかまいません。鉢の水分が少なくなった時に,粒子が大きいと,粒子間の酸素が多くなり,根のためにはプラスになります。
 微塵が多いと思われる場合には,予めふるいをとおしておきます。
鹿沼土がなければ,ボラ土などでもかまいませんが,慣れないと水やりのタイミングがわかりづらいと思います。
 最近は,省力化のため,セントポーリアやミニ観葉のカップ栽培では,微塵もふるわずに袋からそのまま利用していますが,特に問題はありません。

  ★鹿沼土の特徴
  @栃木県鹿沼市で産出される小粒の軽石。水分が少なくなると,茶褐色から白くなる。
  A酸性が強く(酸度pH:ペーハーは4〜5程度),ツツジ・サツキの挿し芽用土とし
  て利用される。また,他の用土と配合して混合用土としても使われる。

  B軽くて安い。
  C排水性,保水性,通気性に優れる。
  D肥料分が少ない。微量要素として,ケイ酸マンガン,鉄,マグネシウム,カルシウム
  ,アルミニウムなどが含まれる。

  E有害成分がない。

  F根に絡みつかずに,ぽろぽろ落ちるので,鉢替えが容易。

  G5分くらい煮沸するか,1か月くらい水につけて置けば再利用できる。ただし,再利
  用が長くなると,微量成分が吸収されて,少なくなり,微量要素欠乏が生じることも考
  えられる。その時には新しい用土に交換するか,微量要素を補給する必要がある。

 鹿沼土は,酸性が強く,肥料分が少ないので,かわいらしい小さな状態を長く保ちたいミニ観葉には特に適していると思われます。ただし,栽培が長くなると,藻が生えて鉢土表面が汚れてきます。その場合は,表面の汚れた土を取り除いて新しいものと入れ替えます。汚れがひどい時には,容器を洗い直して植え替えるとよいでしょう。
 また,長くなると,容器の縁に白い不純物が付着することがありますが,放置しておくと固まって取れにくくなるので,見つけ次第拭き取ります。


6 その他準備する物
 
 

◆用土入れ(写真16)
 プラステチック製の物が最低一つ,大・中・小の三点セット物があれば便利です。
      (写真16)            (写真17)
                       

         便利なプラスチック製用土入れ       注ぎ口が長い便利な水やりジョロ
 
◆バケツ 二つ
 一つは振るい落とした苗の用土を入れるためのバケツ,もう一つは残った土を洗い流すための水を張ったバケツ

◆ゴム手袋,ビニーリ袋,新聞紙

◆水やり用のジョロ(写真17)
 容量1リットル程度で,ジョロ先が長く,注ぎ口が細いものが水の量を調整しやすく,小さな容器でもスポット的に水やりしやすいので便利です。


7 鉢上げの手順


          (写真18)        (写真19)          (写真20)                     
  鉢から株を抜いた状態  鉢土を振るって落とす  落ちなかった用土を水につけてふるい落とす
 
  (写真21)
用土を十分に落とした状態 苗(写真18)の用土は,できるだけ根を切らないようにして,バケツに振るい落とします(写真19)。次に水を張ったバケツの中で,さらに用土を洗い落とします(写真20)。
 品目や苗によって,根がかなり張ってがっちり土に絡んでいる場合には,この作業が手間取ることもありますが,堆肥などの有機物や土は,根腐れの原因になるので,できるだけ洗い流します(写真21)。

                    

   (写真22)           (写真23)
 カップの底に高さを調整するための用土を入れる  鹿沼土を鉢の8分目程度まで入れる
  (写真24)
鉢土の表面まで水を入れる 次に,植え付けですが,あらかじめ鉢に土を少し入れておきます(写真22)。苗の大きさや鉢の高さにもよりますが,最初は,根が底に届くらいまでのところに植物を置き,徐々に土を入れながら植物を引き上げ,バランスのいい高さに植物を配置します。鹿沼土は用土入れで8分目程度まで入れます(写真23)。鉢一杯入れると,水やりのときに入れすぎてこぼす恐れがあります。鉢土の表面が,濡れる程度まで入れるとよいでしょう(写真24)。
  初めてこの栽培方法で育てる品目については,根が水の多い新しい環境に徐々に馴れるよう,最初は水を満杯にしないようにします。多く入れ過ぎたときには,容器を傾けて水を出しきります。湿害を受けやすい品目は,特に注意が必要です。
  ただし,セントポーリアについては,植替え時点でも満杯に水を入れても問題はありません。令和元年1231日の夕方時過ぎに(このようなとても寒い環境下で,外の水道水で根土を洗い落とし植え替えをした場合,どうなるか試してみました),購入したばかりの開花株3鉢を庭で植替え,いったん満杯にした水を出し切ってから,暖房の効く室内(温度22度)に入れたところ,しばらくすると1株が葉や花がしおれてきました。そこで,水を満杯にしたのですが,まもなくしおれが回復し,その後も順調に生育しました。
  その後,令和225日に同じような条件下で開花株12鉢の植え替え(写真1)をし,無加温(最低夜温8〜10度)の部屋で育てました。数株は外側の葉がしおれたり,葉の一部が枯れ込んだりしましたが,植え替え後しばらくは株が枯れることはありませんでした。しかし,2鉢は徐々に葉が枯れ,3月中頃には枯れてしまいました。恐らく,植え替え時の低温と根が切り落とされ過ぎてしまったことが影響していると考えられます。通常,寒い時期に植え替えは絶対にしないのですが,こんな時期に植え替えができるようであれば,誰にでもこの栽培方法が可能であると期待し,思い切ってやってみた次第です。残りの株は,その後順調に育っています。
  さて,この章の終わりに,なぜ水を満杯にしても根腐れが起こらないか,その原因を考えてみたいと思います。
  サボテンや多肉植物などのような土壌の乾燥に強く,過湿に弱いと思われる品目でも水耕栽培ができます。ですから,必ずしも過湿(水分だけ)が根腐れの原因とは限りません。もともと生物は,海が発生の起源なので,過剰な水分にも適応できる植物は多いと考えられます。
  ただし,陸に上がった長い植物の歴史で,水との関わりが強い根はそうであっても,時折雨に濡れるだけの根以外の部分が水に浸かると枯死をまぬがれません。特に葉が水に浸かると,気孔から二酸化炭素の吸収が困難になり,光合成ができなくなってしまいます。呼吸も困難になります。ですから,水耕栽培のサボテンも,植物体下部の部分を水に浸け過ぎると,腐敗が始まると思います。
  根腐れは,過湿に低温,低日照,肥料不足などで,植物体全体が弱って,根腐れを起こすこともあると考えられます。肥料のやり過ぎによる根の濃度障害が原因となる場合もあります。また,土壌中の硫化物質などの悪害物質が溶け出して,根に悪影響を及ぼすこともあると思われます。土壌中の病害虫が根腐れの原因になる場合もあります。




8 育て方のポイント(鉢上げ後の管理方法)   

◆水やり

      (写真25)           (写真26)       
  鹿沼土の湿り具合 水やり適期     水やり直後の状態  

     (写真27)
鹿沼土の湿り具合 乾き過ぎ 鉢土の表面がやや白っぽくなったら(写真
25:ミニ観葉で
),鉢土の表面まで水やりをします(写真26)。写真27(
ミニ観葉です)の鉢土の表面は真っ白くなっていますが,乾
燥させ過ぎです。こういった状態になる前に,必ず水やりを
しないと,しおれてしまします。ただし,セントポーリアは
他の植物を比べると,土壌の乾燥にはかなり強いほうです。
 水をためっぱなしでもよい品目もあると思われますが,蒸
発で自然に水の量を減らし,時々根に酸素を供給することが
植物の生育にとってよいと考えます。特に低温期の冬は,根
が湿害を受けやすいので,できるだけ乾かし気味に育てます
。水を少なめにやって,鉢土の表面が毛管現象で濡れればよ
いと思います。しばらく家を空ける場合には,鉢に一杯に水を溜めて出かけてもかまいません。

  なお,水やりの時間帯は,理想的には暖かい昼間ですが,日中不在の方は,室温が8度以上あれば,早朝,夜遅く帰宅後でもかまいません。また,ぬるま湯でなく水道水でも問題ありません。
 この栽培方法でも,残念ながら水やりの失敗は起こります。しばらく見ないうちに乾かし
過ぎて枯らしてしまうという失敗です。写真27
はクロトンですが,乾かし過ぎで,しおれ始
める危機的状況にあります。まだ一部の粒子が湿っている写真25
の状況で水やりをします。

 鉢や植物の大小,植物の種類,置いてある場所によって乾き具合が異なります。ちらっと
見ればよいので,
鉢土表面の乾き具合を毎日1回必ず見るようにします。

◆肥料
 ★使用する肥料

  この栽培方法
(カップ栽培)では,全て粒状(大豆大)の緩効性化成肥料(IB化成)を
 使用します。粒が大きいととても取扱いやすく,数を数えて数粒施すだけなので,とても
 便利です。緩効性なので施肥回数も少なくて済みます。

  速効性の肥料は,カップが小さいので,肥料が多過ぎると根が濃度障害で傷む恐れがあ
 ります。ほんのわずかな量を計量するのも大変です。

  また液肥は,初心者だと,希釈液をつくるのが面倒であったり,濃度や量を間違えて枯
 らしてしまったりする場合がありがちです。

  ★施肥量と施肥時期
  容器や株の大きさによって施肥量は異なります。1回の施肥量は,目安として,コーヒ
 ーカップ程度の大きさであればIB化成を1粒,どんぶり鉢程度の大きさであれば3粒施
 します。

  植え替え後週間目から,原則としておおよそ6か月に1回施用します。月上旬に植
 替えれば,葉色や生育状況を見て月下旬,11月下旬に施用します。10月上旬に植替えれ
 ば,10月下旬 に施用します。それ以降の低温期は,無加温の室内では施しません。生育
 状況を見て,粒数や粒の 大きさを加減します。

 ★肥料のマメ知識
  @肥料による濃度障害とは

    ナメクジに塩,青菜に塩と同じ原理で,根の水分が肥料に吸収されて根が枯れてし
   まします。肥料そのものによる直接的な害もあります。
 

  AIB化成とは
    約
1か月の効き目があります。肥料成分は,チッソ10,リン酸10,カリ10の割合で
   す。ゆっくり効いていくので,根の肥料焼けの心配が少ない肥料です。速効性肥料に
   対して,緩効性肥料と呼ばれています。

  BマグアンプK(中粒)とは
    鉢栽培でよく施用されるので紹介しておきます。約半年〜
1年間の効きめがありま
   す。肥料成分は,チッソ6,リン酸40
,カリ6,マグネシウム15の割合です。肥料成
   分が少なく,長期に渡って徐々に効いていくので,肥料焼けの心配が少ないのが特徴
   です。         
    専用の計量スプーンがあるので便利です。ただし,肥効期間があまりにも長いので
   ,施肥時期を記録しておかないと,次の施用時期がわからなくなってしまいます。
    この肥料を使いこなされている方は,IB化成の代わりに施用されてもよいと思い
   ます。ただし,施肥量や施肥時期については実証が必要です。

◆光
 栽培上注意すべき点は,必ず白いレースのカーテン越しの日光によく当てることです。直射日光を当てると,日焼けします。置く場所は,明るい室内灯が一日の大半ついているところでも構いません。光が不足すると花が十分咲きません。

       (写真28)              (写真29)
                                            
        自宅での鉢の置き場所 南側障子戸の後ろ       自宅南側窓際白いカーテンの後ろで栽培
 自宅では,窓際の障子戸のすぐ後ろに腰掛を置いて,その上に鉢を並べました(写真28)。障子は白いレースのカーテンより遮光が強いのですが,残念ながらほかに置く場所がありませんでした。
 写真29は,写真3のほぼ1年3か月後で,令和2417日に自宅で撮影したもので,南側にある白のレースのカーテンの手前で育てています。

◆温度
   (写真30)
栽培に欠かせない最高最低温度計 最低夜温5〜6度以上であれば冬越しできます。自宅で,夜温が
度で強い霜が降りた時に,無加温の部屋(窓ガラスの内側に障子が
ある)の窓際の最低温度が8度になりました。自宅では外気温がマ
イナスになることは,ほとんどありませんが,そのような時には夕
方早く室内が寒くならない内にシャッターを下ろします。夏は,で
きるだけ風通しをよくし,温度を下げるようにします。

  最高最低温度計(写真31)で室内の最高,最低温度を確認しておく
ことはとても重要なことです。室内で栽培する洋ラン,観葉植物な
どを育てるためにはぜひとも必要です。

◆植え替え,芽かき
 植物が大きくなってきたら,ひとまわり大きな容器に鉢替えします。元の容器で栽培したい場合は,容器の大きさに合わせて,葉と根を切り詰めて植え替えます。
株が腰高になってくれば,植替えをします。腰高になった茎から,脇芽が出て,バランスが悪い場合は,芽かきをします。切り詰めた葉やかいた芽は,挿し芽をして増殖できます。芽かきをしたら,長い茎を短くして植え替えます。根がない場合は,挿し芽するか,茎を短くしないで深植えできる鉢に植え直します。

 植替え時期は,最低夜温が15度以上の時期が望ましいです。詳細は,第2章1(苗の手配
と鉢上げ時期)を参照下さい。

◆増殖
       (写真31)          (写真32)
   葉柄のついた葉ざしの状況  挿し芽後3〜4か月の状況

 挿し芽,株分けで増やします。葉柄のついてない葉でも挿し芽はできますが,葉柄がついていると挿しやすくなります。低温期以外は,挿し芽できます。子株ができやすいミニ種は,株分けで増やしやすいタイプです。3月21日に挿し芽したもの(写真31)は,7月3日には鉢上げできる状態になりました(写真32)。

◆病害虫対策
 
害虫は,ホコリダニ,アブラムシの発生が考えられます。ホコリダニは,購入した株による持ち込みがなければ,室内では発生することはないと思われます。アブラムシの発生も室内ではほとんどないと思われますが,発生した場合は,オルトランなどの粒剤を施用するとよいでしょう。
 病気では,灰色カビ病の発生が考えられますが,室内は湿度が低いので,ほぼ発生は見られないと思われます。
詳細は,第
章(ミニ観葉の項)を参照して下さい。

 


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