簡単,早わかり!!水やりを失敗しない方法→詳細は本文を見て下さい。
給水口のない鉢で育てるエラチオールベゴニアの事例紹介
★水と肥料は,鉢の受け皿に入れ,鉢底から吸収させます。
★鹿沼土の色の変化で,水やりのタイミングがわかります。
★1:水やり前 | ★2:水やり後 | ★3:水やりの適期 |
鉢上げした鉢土の表面が隠 れる程度に鹿沼土を敷きます 。水分のない鹿沼土は,真っ 白です。もとの鉢土が指で触 ってみて乾いていれば,すぐ に受け皿の7分目ぐらいまで 給水します(→★2へ)。 鉢土に水分が残っていれば ,毛管現象で水が鉢表面に届 き,徐々に鹿沼土は茶色に変 化していきます。水分が少な いと鹿沼土が濡れ始めるのに 時間が長ければ1日程度はかか ります。 その後,乾くにつれて茶色が薄れてきます。★3の状態になったら,水やりのタイミングです。 |
半日〜1日程度経って,受け皿の水がなくなり,鉢表面の鹿沼土がしっとりと茶褐色に濡れ,受け皿に水が残っていなければ,給水量は適量であったということです。 鹿沼土が十分濡れてこなけ なければ,再度7分目まで水 を受け皿に足します。その後 十分濡れてきた時に,受け皿 に水が残っていれば捨てます 。残っている水の量を見て, 次回以降の水の量を決めます 。残っている水の量が多かっ た場合には,次回は受け皿の 8〜9分目まで給水します。 残っている水の量が少なか った場合には,受け皿を大き くして,水の量を再検討しま す。 受け皿に水が残らないよう に水の量を決めるのがポイン トです。 |
時間の経過とともに,鹿沼土は乾いてきますが,粒子の一部ががやや白っぽくなり,全体としてうす茶色になった状態が,水やりのタイミングです。 水やりの適量がわかったら,受け皿にマジックで印をつけておくと便利です。 |
ここがポイント!水やり,育て方の
マル秘テクニック
目 次→下線を引いた各項目をクリックすると,本文にリンクします。
イラストは,「ホームページ・ビルダー16」の素材集からの引用です。
1 こうすれば簡単!失敗しない鉢物の水やり
◆経験と勘に頼る従来の水のやり方
◆水やりのタイミングが簡単にわかる新技術
◆この栽培方法の注意点
◆水やりで失敗しない新技術のまとめ
◆室外の受け皿を使用しない,ジョロで水やりをする鉢栽培
2 上手な夏越しと冬越し
◆上手な夏越し
◆上手な冬越し
3 庭の水やり回数を減らす方法
◆しょっちゅう水をやらない
◆セル苗を植える
◆植える場所の日当たり,雨のかかり具合をみて植える品目を決める
◆根が深く広く張れるような土づくり
4 花が咲かない原因と,花をたくさん咲かせる方法
◆適日長下で育っていないこと
◆種子,苗や球根などが,一定期間,一定の高温や低温にあっていないこと
◆花芽ができてから,剪定をしたこと
◆剪定後,花芽ができるまでの期間が少ないこと
◆植え付け後,一定以上の生育日数を経過していない幼木,若枝,若苗であること
◆花芽ができ,成長するために必要な養分をつくる光合成が,不良な環境条件の影
響で十分行われていないこと
◆肥料,特にチッソ肥料の多用により,植物体が栄養成長(葉が増え,茎が伸び,植
物体が大きくなること)だけを続け,生殖成長(花芽ができ,花が咲き,実がなる
こと)に転換できなくなること
◆肥料が不足していること
◆枝数が少ないこと
5 挿し芽の省力化,大きな挿し穂で挿し芽を成功させ,生育期間を大幅に短縮する
画期的な挿し木(芽)の技術
◆新しい技術の内容と特徴
◆これまでの技術の特徴
◆その他共通する挿し木技術
◆私の挿し木方法の実際
7 鉢替えの目安と鉢替えの方法
◆鉢替えの目安
◆鉢替えの方法
8 露地栽培における適切な肥料のやり方
◆肥料の三大要素
◆基肥
◆追肥
◆肥料不足が植物に及ぼす影響
◆肥料のやり過ぎ
9 台風による倒伏を防ぐ方法
◆一般的な対策
◆切り戻し他
10 楽々除草
◆敷地内のチガヤなど宿根草の徹底除草
◆除草しやすい花壇の形状にする
◆花壇以外の部分は,砂利や敷石で埋める
◆カバープランツの活用
◆2回耕うん整地後に播種,植え付けをする
◆除草は雑草ができるだけ小さいうちにする
◆除草剤の有効活用
11 農薬をできるだけ少なくして病害虫を防ぐ方法
◆病害虫のない健全な苗を植える
◆接ぎ木苗,抵抗性品種などの利用
◆病害虫被害の少ない品目,品種の栽培
◆植え付け前の十分な排策
◆風通しをよくする
◆連作を避ける
◆適正な施肥をする
◆捕殺
◆天敵
◆マルチ栽培
◆適期は種・育苗
◆その他栽培管理
12 その他栽培技術の基本
◆土づくり
◆品目,品種の選定
◆種まき(は種)・育苗
◆苗の増殖
◆植え付け(植栽)
◆有機物マルチ
1 こうすれば簡単!失敗しない鉢物の水やり
水やりがしっかりとできるようにならなければ,園芸では一人前とは言えません。ですが,夏は,土は暑さですぐ乾き,ちょっと油断すると植物はしおれてしまいます。冬は,なかなか土は乾かず,それに気づかずにどんどん水をかけ続けていると,湿害で根が腐れ,植物は枯れてきます。基本的には鉢土の表面が乾いたら,鉢底から水が流れ落ちるまでたっぷりとかけます。受け皿にたまった水は,しばらく留守をする場合を除いて,根が湿害を受けるので捨てます。
季節,植物の大きさ,天候,鉢が置かれた場所の環境,鉢土の種類などによって,一度水やりしてから鉢土が乾くまでの時間はかなり異なってきます。ですから,何日おきに水をかけるというのではなく,あくまで植物の種類,植物のしおれ具合や鉢土の乾き具合を見て,水やりができるようになることが大切です。ただし,経験を積まないとどのぐらいの乾き具合でよいのかわかりません。また,土の乾き具合だけでは判断できないこともあります。
多肉植物やサボテンは季節によっては,鉢土が乾いていてもかなり長い間水やりをしなくてもよい場合があります。極端な例では,サンスベリア(トラノオ)は,12〜3月の寒い時期は全く水をやらないようにすると,冬越しができます。 また,土の表面だけでなく,鉢内部の乾き具合も考慮しないと,特に低温時期は水やりを失敗することが多々あります。その代表的な事例が,ミズゴケ栽培のコチョウランです。冬期に,鉢の表面が乾いているからといって水をやっていると,鉢内部は過湿になっていることがあり,低温と過湿で根腐れをおこし,株が衰弱したり,ひどい場合には枯れたりします。低温期の無加温栽培では,コチョウランはミズゴケ栽培では1か月に1回ぐらいの水やりでも問題はないと思われます。このように,経験や勘がないと,なかなか水やりは上手になれません。
栽培技術を向上させるには,長年の経験や勘で学習した知識の積み重ねは大いに役立ちます。とりあえず,ここで従来のやり方で,水やりのタイミングをつかむ方法を紹介します。そのためには土の乾き具合を的確に判断できるようになることが必要です。
まず,目で乾き具合を見て判断できるようにします。水やりをした後,毎日の鉢表土の湿り具合や色を観察します。見た目だけでは判断できない時には,鉢土の表面を指で触って,土の湿り具合を確認します。指の感触と指につく土の量や状態で土の乾き具合がわかります。土壌水分が多いほど,指に土がついてきます。
(写真1)
ところが,写真1でわかりますように,鉢から葉がいっぱいはみ出していると,鉢土が見えないので水の乾き具合がわかりません。それで,次に鉢を持ち上げてみます。水をたっぷりやって重力水が抜けた後の鉢,それから一日経過するごとに鉢を持ち上げてみます。当然次第に軽くなってきますが,鉢の重さである程度水やりのタイミングをつかむことができます。
さらに,葉や花がしおれ始めるまで経過を見ます。しおれの兆候をいち早く察知できることが大切です。葉は水分が少なくなると,葉が下に垂れ始めます。葉が,内側あるいは外側に巻く場合もあります。ベゴニアセンパフローレンスは,葉の色が白っぽく薄くなってきます。水をたっぷりやってから,葉が少ししおれ始めるまでの日数がわかれば,しおれ始めるまでの1日前に水をやります。
こうして経験を積んでゆけば,徐々に水やりが上手になっていくと思われます。しかし,初心者には水やりのタイミングをつかむことは,なかなか難しいことです。
こうしたことから,水管理に自信のない方には,近年増えているシクラメンのような,受け皿から専用の布で毛管現象を利用し,鉢土に自動給水できる「底面給水鉢」が便利でお勧めです。受け皿に水がなくなったら,水を補給するだけで簡単です。
ただし,給水皿がついていない鉢物はたくさんあります。また,給水皿が透明でないものは,給水口が小さいと,給水量がわかりにくいのが欠点です。そこで,もっと水やりを簡単にするために,普通の鉢受け皿に水を入れて,鉢底から吸水させる方法を検討してみました。
セントポーリア,洋ラン,ミニ観葉などの簡単な水やりと栽培方法は第1〜3章のとおりです。ここでは,普通の鉢物,具体的には水やりで失敗し枯らしやすいと思われるポインセチア,エラチオールベゴニア(リーガースベゴニア),グロキシニアで,誰にでもわかりやすい簡単な水やりの方法を実証してみました。次項はやや難しく書いているので,読むのが大変だと思われる方は,少し後に述べる(クリックするとリンクします)をご覧ください。
ポインセチアは特に水やりのタイミングがわかりにくく,葉枯れや株枯れを少しもさせず
に春まで育てるのはとても難しい品目です。温度の高い夏季は,毎日水をやっても枯れませ
んが,冬室内で購入した鉢を育て始め,過湿にするとすぐに葉が傷んだり,枯れたりしてき
ます。
室内が低温(8度以下),光不足であると,葉の傷みは助長されます。その原因は,根傷
みであると考えます。 用土や鉢が置かれた環境によって異なるとは思いますが,これまで購入した4〜5号鉢は,
水やり後8〜10日程度経って,かなり表土が乾いた状態になってから,水やりをすると葉傷
みは少なくなります。ただし,水やり後の日数を忘れたり,水やり間隔日数だけに頼り,指
先で土の湿り具合を確認しなかったりすると,水やりが遅れ過乾燥で根傷みが生じ,葉枯れ
が発生することになります。そこで,鉢受け皿を利用した底面給水方法を考案しました。
(鉢受け皿を利用した底面給水方法) 水やりは鉢土表面からはしません。まず,鉢土表面が隠れる程度に白く乾いた鹿沼土を敷き詰めます。次に受け皿に水を溜め,毛管現象で下から水を吸わせると,表面の鹿沼土が茶褐色に湿ってきます。この湿った鹿沼土がやや白っぽく乾いてきた時を,水やりのタイミングとします。
この方法だと,葉や花に水をかけることがなく,灰色カビ病他の病気が従来の方法より,発生しにくくなります。今までこの方法では,他の品目も病気が発生したことはありません。「受け皿に水を溜めてはいけない」がこれまでの原則で,受け皿に溜まった水を捨てなくてはいけませんでしたが,捨てなくても良くなりました。鹿沼土の色の変化で初心者でも水やりのタイミングが簡単にわかり,過湿あるいは過乾燥で植物を枯らす失敗が防げます。 実証に使用した購入時の鉢は,ポインセチア3号鉢,エラチオールベゴニア3号鉢,ポイン
セチア5号鉢(2鉢)でしたが,鉢と植物体のバランスを考え,庭土を足して,ポインセチア
は3.5号鉢(12月22日),エラチオールベゴニアは4号鉢(12月5日),ポインセチアは6号鉢
(12月2日)に植え替えました。なお,速効性化成肥料(10-10-10)を4号鉢は大匙で軽く1杯,6号鉢は大匙で軽く2杯鉢を根が直接触れないように鉢底に施用しました。
(写真2)
植え替え後,鉢土の表面に,表土が隠れるくらい白く乾いた小粒の鹿沼土(写真2:白い粒子は全く水分がない乾ききった状態)を敷き詰めます。購入したばかりの鉢は,土壌水分が残っていれば,鹿沼土はしばらくすると,鉢土の水分を吸って次第に茶褐色になります(写真3:水分を十分吸った鹿沼土)。水分が少ない場合は,鹿沼土が湿るのに時間がかかるので,1〜2時間は待ちます。表土に水分がわずかでも残っていると,鹿沼土は湿ってきます。鉢表面の土が明らかに乾いている場合には,鹿沼土を敷いたら,すぐに次のとおり水やりをします。
鹿沼土がやや白っぽくなった(写真4:水やりのタイミング)ところで,受け皿の7〜8分目くらいまで水を入れます。受け皿は,鉢よりもひとまわり大きいものを使用し,3.5号鉢は4号皿,4号鉢は5号皿,6号鉢は7号皿とします。受け皿の水が毛管現象で吸水され,
(写真3) (写真4)
やがて鉢土表面の鹿沼土が十分濡れてくるのを待ちます。その時点で,受け皿に水がなかったら最初に入れた水の量がその鉢の適正な給水量となります。水が残っていたら,その分を差し引いて適正な給水量とします。鹿沼土が濡れなければ,濡れるまでさらに給水し,その分を加えて適正な給水量を決めます。
ちなみに鹿沼土が濡れるまでには3.5鉢で1時間,4号鉢で7時間かかりました。ただし
,6号鉢ではおおむね18時間後に少し濡れ始めますが,十分濡れるまでには1日以上かかる
ので,入れた水がなくなったからと言って,すぐに水を足さないようにします。
その結果,今回使用した3.5号(ポインセチア)では100cc,4号鉢(エラチオールベゴニ
ア)では200cc,6号鉢(ポインセチア)では400ccがおおむね適正な給水量であることが分
かりました。適正な水を入れたときに,受け皿にその高さにマジックで印をつけておくと次
回からの給水が便利です。
ここで得られた数字は,あくまで今回使用した鉢での結果です。鉢の大きさ,土の種類,
鉢が置かれた温度などの環境条件で適正量は異なるので,この結果を参考にしながら,自分
が育てる鉢については,自分自身でデータを得る必要があります。
給水すべき適正な量については,鉢表面からまんべんなく少しずつ給水し,受け皿に水が出てくるまでの量としてもよいと思われます。ただし,一挙に給水すると鉢土全体に水がしみわたらず,適正な給水量が把握できなくなります。 なお適正量を給水してから,鹿沼土が白っぽく乾くまでは,3.5号鉢で7日,4号鉢で4〜7日,6号鉢で8〜10日でした(12月2〜5日に実証を開始。午前6時から,午後10時まで,室温が18度以下になったら,22〜23度になるようにエアコンで加温。夜温は最低13度でした)。
購入店が異なる別の6号鉢(ポインセチア:葉が大きい)では,5日でした。これらの日数は,植物(葉)の大きさ,鉢土や鉢の種類,鉢が置かれている場所の温度,湿度,風などによって異なると考えられますが,栽培条件が変わっても,鹿沼土の色の変化で誰にでも一目で水やりのタイミングがわかり,水やりの失敗がなくなることがわかりました。水やりのタイミングが特にわかりにくいポインセチアで,簡単で失敗しない水やりの方法が確立できたことの成果は大きいと考えます。栽培上全く問題は発生しませんでした。
ちなみに,受け皿の表面が隠れるほど敷き詰めた白く乾いた鹿沼土を,一昼夜十分湿らせると,同上の鉢と同じ条件下で16時間後に元に戻ります。
(写真5)
グロキシニアについてもこの方法で栽培してみました。前年6月に購入した3号鉢の株(写真5の左側)が夏越し,冬越しに成功し,令和3年4月2日に萌芽を確認した時点で5号鉢(受け皿は7号)に植え替えたところ,5月28日に発蕾し,6月20日から咲きはじめました。写真5の右側は,令和3年6月18日に購入した3号鉢(受け皿は5号)で,グロキシニアは1年育てたものは,株がかなり大きくなり,花数も前年の3〜4倍程度増えることがわかりました。
なお,水は受け皿の7分目まで入れました。5号鉢は10日前後,3号鉢は5日前後の間隔
で,鹿沼土の乾き具合を見て水やりをしました。グロキシニアは特に花が咲いていない時は
,土壌の乾燥に強く,かなり乾燥させても葉はしおれません。水のやり過ぎが枯れる一番の
原因だと思われます。花が終わったら,霜が当たらない場所で球根を大きくするため葉が枯
れるまで育て,春に萌芽したら大き目の鉢に植え替えます。葉が枯れたら萌芽するまで水や
りを中止します。冬に温度が十分にある場所では葉が枯れない場合には,水やりをやめます
。
グロキシニアは,魅力的な品目ですが,開花後しばらくして小さな蕾や花茎の途中が枯れ
たりすることがあります。その対策として,令和3年度は鹿沼土を使用した新技術を用い,
室内温度が28度を超える時には冷房(夜間除く)の入った居間で育てています。結果が楽し
みです。
なお,過乾燥で枯らしやすいアジアンタムや,高温多湿で枯らしやすいフランネルフラワー,プラチーナについてもこの方法だと水やりのタイミングがよくわかるので水やりに失敗することがなくなりました。
鉢用土の水分含量は,植物の種類や大きさ,温度・照度・風などの環境条件,鉢や用土の種類,鉢の大きさなどによって刻々と変化していきます。鉢表面に置いた鹿沼土も鉢土に応じて水分含量を変え,色の変化でそのことがわかります。
@鹿沼土の小粒を鉢土表面の土が隠れる程度敷きます。
A鉢の受け皿は,鉢より一回り大きめのサイズを使います。3.5号鉢は4号,4号鉢は
5,5号鉢は6号,6号鉢は7号の受け皿とします。
B水やりは,受け皿の7分目ぐらいためて,鉢の底穴から毛管現象を利用することとし
ま
Cこれまでの結果では,受け 皿の7〜8分目まで水を溜めれば支障はありませんでした
。
てこ
いるのに,受け皿に水が溜まっているようでしたら,最初の水の量をその分減らしま
す。
Dできれば最初に入れる水の量をしっかりと計っておくとよいです。
E水やりが上手くいったら,受け皿に入れた水の高さのところに,マジックで印をして
お
F鉢の高さが15a以上のものは,鉢表面に毛管水が届くのに1〜2日以上かかるので,
根が伸びていない苗については,植え付け後しばらくは鉢表面から水やりをします。
G追肥はおおむね植え替え1か月後,植物の種類や生育状況,鉢の大きさによって異な
り
4粒,5号鉢で5粒程度施します。生育状況を見て粒数を増減します。
Hこの方法での失敗の原因は,何日も鉢土表面の鹿沼土の乾き具合を全く見ないことで
す。鹿沼土の粒子が真っ白くなってもそのままにしておけば枯れるのは当然です。毎
日
I出張の時など,土の乾き具合が鉢によって異なり,水やりの判断を迷う場合には,受
け
合に
この方法は,室外の受け皿を使用しない,ジョロで水やりをする鉢栽培でも,鉢土表面に鹿沼土小粒を置いておけば,その色の変化で水やりのタイミングができ,今のところ,ガーデニングシクラメン,パンジー,マーガレット,ペチュニア,アネモネ,ラナンキュラス,プリムラ,ゼラニューム,フクシアなどでは水やりの失敗はありません。 なお,鹿沼土は,葉で鉢土が隠れるようになると,全面にばらまいておいた方が葉をめくった時にどこからでもわかりやすいです。鉢の大きさについては,尺鉢以上の大きさの鉢でも特に問題はありませんでした。
2 上手な夏越しと冬越し
高温多湿のために株枯れして,通常の栽培方法では梅雨時期,夏期を越せないフクシア,ネメシアなどの植物がたくさんあります。そのような植物は,もともと原産地の気候が冷涼で高温多湿でないので,日本の夏を過ごすには適していません。 全ての品目が夏越しできる訳ではありませんが,次のような対策で夏越しが可能になる品目もあります。
梅雨時期に入り,株が枯れる前に,挿し芽をして小苗を育てます。植物体が大きいと,
高温による体力消耗が激しくなります。また,風通しが悪いので,下葉や株の内部が枯れ
込んだり,病気が発生したりしやすくなります。
ちなみにフクシア,マーガレット,ネメシア,フレンチラベンダーなど挿し芽は簡単で
す。鉢上げ後,露地での夏越しはほぼ無理なので,鉢上げして,できるだけ温度の低い,
風通しが良く,雨の当たらない明るい日陰や,室内で育てます。直射日光が当たる場所は
絶対に避けます。鉢の水やりは,適湿を保つように留意します。
株で夏越しする場合には,株を全体の3分の1〜4分の1くらいの高さに切り戻し,鉢上
げします。その後の管理は,上記@と同じですが,株が元気なうちに鉢上げするのが,成
功のポイントです。ただし,マーガレットなどは,株が老化し株元の茎に亀裂が入いるな
どして枯れる場合が多いので,この方法はあまりお勧めではありません。
高温期を乗り切るためには,土壌の過乾燥,過湿を防ぎ,適湿に保つ必要があります。
適正な水やりについては上述のとおりです。
低温期に株を枯らす原因は,もちろん温度不足が大きな原因ですが,水やりが多過ぎて過湿で根腐れを起こすことが案外多いようです。失敗しない水やりは,別項を参照して下さい。
露地で冬越しできない品目は,切り戻した株を鉢上げして,品目(耐寒性)にもよりますが,霜の心配がなく日当たりのよい軒下,あるいは室内に移動させます。強い霜が当たらなければ,軒下で冬越しできる品目は,アゲラータム,ポーチュラカ,ペンタス,サルビア,ペチュニア,カリブラコア,パキスタキスなど案外あります。
3 庭の水やり回数を減らす方法
鉢物ほど水やりに気をつかう必要はありません。夏季に晴天が続き,葉がわずかにしおれ始めたら,朝か夕方に水やりします。植物の養分をつくる光合成は,午前中10時前後に最も盛んになるので,その時に土壌水分が不足すると,光合成がかなり低下します。
暑い日が続くからと言って,毎日水をかけていると,根が土の表面にしか集まらず,乾燥に弱くなってしまいます。そうなると,庭が広いと毎日の水かけは大変です。自宅では,よほど天気が続かないかぎり水やりはしません。
種まきを自分でする人は,セル育苗をするとよいです。セル苗を鉢上げせず,そのまま花壇に植えます。セル苗は,苗が小さい上に,根が用土にしっかり絡んでいるので,植え付け時の水やり量がとても少なくてすみます。
軒下など雨がかからない場所には,サボテンや多肉植物など乾燥に非常に強い品目を植えます。一日中日があたる場所には,トレニア,ニチニチソウ,マリーゴールド,ペンタス,メランポジューム,ヒャクニチソウ,ポーチュラカ,ペチュニア,イソトマ,宿根ガザニア,花コショウなどの乾燥に強い品目を植えます。 ダリア,カラー,クリスマスローズなどのやや乾燥に弱い品目は,午前中だけ陽があたる場所,あるいは明るい日陰に植えるとよいでしょう。ヒューケラ,ホスタ,ベゴニアなどについては,明るい日陰が適しています。ただし,6月下旬頃までは,午前中だけ陽が当たる場所であれば栽培可能です。
深く耕し,土が柔らかくなるように,完熟たい肥などの有機物を施すことがとても大切です。有機物をたくさん施すと,土壌中の微生物が活発になり,微生物が出す粘液などで,土壌の粒子が単粒から,単粒がたくさんくっついた,より大きな団粒になります。団粒が増えると,粒子間のすき間が大きくなるので,保水性,排水性がよくなります。土壌中の空気が占める割合も増え,根の生育によい,いわゆる団粒構造ができます。
4 花が咲かない原因と,花をたくさん咲かせる方法
花芽ができるためには適正な日長下で育つ必要があります。ごく簡単に述べると,日長が一定さになる春になって咲く植物を長日植物,日長が一定以下の長さになる秋になって咲く
植物を短日植物,日長に関係なく咲く植物を中性植物と言います。 品種改良によって,日長の影響を受けずに咲く品種も作出されていますが,コスモスは本来短日植物です。種を4〜5月に播くと,日長が長いので花芽をつけず草丈ばかりが伸びて倒れやすくなります。春にコスモスが咲くことがありますが,まだ日長が夏に比べて短く,ドン雨天が多いと,短日条件になって花芽ができてしまうからです。 ランコエやポインセチアも短日植物で,夜間照明が長くついているところに置いておくと,カランコエは花芽がなかなかつかず,ポインセチアは葉が赤くなってきません。
春に咲く球根類は,花後休眠に入り,夏の高温で休眠から覚め,秋以降に一定の低温期間を過ごすことで花芽ができます。人為的に高温処理,低温処理をされた球根は,開花が早くなります。正月に飾られる鉄砲ユリ,1〜2月頃から咲くチューリップはそのような処理がされています。また,スターチスなどは,種子あるいは苗の時に一定の期間,一定の低温にあわせることで花芽分化を早めることができます。そのことで,切り花の出荷が12月から可能になっています。
このような温度処理がなされていなければ,早く咲くことはありません。ちなみに,花を咲かせる(花芽分化をさせる)ために,人工的に低温処理をすることを春化処理と言います。
アジサイは10月頃になると,花芽ができますが,8月下旬以降に剪定すると,花芽が十分できる大きさに茎が成長しないために花芽ができにくくなります。
品種や環境,生育状況などによって異なりますが,一般的に展開葉がコチョウランは4枚,クンシランは8枚になると花芽を持つようになります。サクラは種子が発芽して,3年ほど経過しないと開花しません。樹種によっては,花芽を持つためには,一定の樹齢に達する必要があります。接ぎ木をすると,開花が早くなります。果樹の苗木は,ほとんど接ぎ木苗です。
アジサイについては,地ぎわからすーっと伸びる徒長枝は,次年度にならないと咲きません。また,花ミズキなどは,大きな木であっても,移植した翌年度は花つきが悪くなります。花芽をつけるためには,根がしっかりと伸びて養水分を十分吸えるような状態になっている必要があります。
植物が順調に生育できない条件,例えば極端な低温や高温,しおれが長く続くような土壌水分不足,長期間の曇雨天(弱光),病害虫被害の多発などで植物の光合成能力が著しく低下すると,花芽ができなかったり,蕾ができても正常に発達せず,落ちてしまったりします(この現象をブラスチング,洋ランではアボーションと言います。蕾が落ちることを,ただ単にドロップと言ったりもします)。
買ったばかりの蕾がたくさんついたシャコバサボテンを部屋の中で育てると,小さな蕾がポロポロと落ちてしまうことがあるのは,日照不足,低温,水分不足などで,蕾の数に見合うだけの光合成による養分供給ができなくなるからだと考えられます。蕾を落とすのは,植物体を維持すための植物の防衛体制であると思われます。
切り花のユリ栽培で,蕾が多くついている株ほど,日照不足,土壌水分の不足,高温や低温,肥料不足などで光合成が少なくなると,蕾の数に見合うだけの光合成による養分供給ができなくなるので,小さい蕾から順次落ちていきます。逆に蕾を落とさないと,植物体を維持できなくなります。なお,密植にしているほど,環境条件が悪くなり,光,土壌水分,肥料,光合成に必要な二酸化炭素などの株同士の奪い合いが激しくなるので,ブラスチングの発生は多くなります。
土壌水分の過多,日照不足が重なると,さらにこの現象が助長されます。こうした現象が顕著な植物は,フジ,ブーゲンビレア,ペトレアなどです。鉢栽培の株を,庭に移植すると,根が急に伸びやすい環境になるので,枝(ツル)だけが伸びて花が咲かない,いわゆるツルボケ現象が発生しやすくなります。ブーゲンビレアは,本来花芽になるべきものがトゲに変化してしまいます。
基肥を十分施用していても,植物体が大きくなり,花数が増えてくると,次第に肥料が不足してくるので,追肥が必要になります。そのまま放置しておけば,花数が少なくなるばかりか,葉全体の緑が薄くなり,下葉が枯れ上がってきます。
枝数を増やすためには,摘心,切り戻しが必要です。だだし,枝が増えすぎてもよくないので,整枝や剪定も欠かせません。
草丈が高くなって,倒れるのを防止したり,枝数を増やし,花や実の数を増やしたりす
るために摘心や切り戻しを行います。
摘心は,茎の先端にある生長点(芯)の部分を指で摘み(折り)取ることを言います。
できるだけ,先端の部分を小さく摘むと葉の数が多くなり,それだけ枝数も増えます。枝
数を増やしたい場合には,植え付け後苗が十分活着して,ある程度苗が大きくなり,葉の
枚数が増えてきてから摘心を行います。葉の枚数が少ないときに実施すると,枝数が少
なくなります。一般的には,植え付け後,展開した(開ききった)葉が4〜5枚程度にな
ったら,中央の小さな葉を含めた生長点をしっかりと摘み取ります。摘み取りにくい品目
は,葉の枚数が多くなってから行います。
草丈を低くしたり,枝数をさらに増やしたりするために,摘心を2回することもありま
す 。ただし,摘心が遅れると,草丈が高くなります。なお,摘心を行うと,開花は遅れ
ます。
切り戻しは,花が咲いていても草丈が伸び,株が茂り過ぎて全体のバランスが悪くなっ
たり,下葉が枯れ始めたりする場合に,全体の草丈の3分の1とか,地表面から15aの高
さとか,適当な高さに切り込むことを言います。切り戻しにより,株が若返り,品目や時
期によって異なりますが,早ければ20〜30日後に花が咲きそろうようになります。前に述
べたように,台風対策として切り戻しをすることもあります。
切り戻しをする際に大事なことは,次のとおりです。
@下葉が枯れ込み過ぎてから行うと,光合成(葉でデンプンなどを作る)能力が低下
し,特に高温乾燥が激しい夏期には,株自体が枯れてしまうことが多くなります。
元気な葉がたくさん残っているほど,後の再生はよくなり,花が早くたくさん咲き
ます。茂り過ぎは要注意です。株内部の光が不足したり,ムレたりして葉が枯れやす
くなったりします。そのような株は,特に梅雨入り前には切り戻しをしておきます。
A切り戻し前に下葉が枯れないように,定期的な追肥,適切な水やりが必要です。蕾
がつき,花が咲き進むと,特に肥料の吸収が多くなります。下葉がほとんどなくなっ
てから切り戻すと,株枯れを起こしやすくなります。下葉がない場合には,上部に葉
がついている茎を数本切り戻さないで残し,脇芽の発生を見てから,残りの茎も切り
戻します。
B切り戻しと同時に追肥を忘れないようにします。
C一斉に切り戻しをすると,次の開花まで20〜30日程度花が咲かない期間が生じます
。初心者は,ペチュニアなどで,下葉を多く枯らしてしまい,株枯れを起こしたり,
草姿が乱れ,花数が減少したり,開花遅延を起こしたりする場合が多いようです。
そこで,これを回避する新技術として,枝が込み入った部分から順次切り戻しとい
うよりもむしろ次項の整枝をしていくと,下葉も枯れにくく,開花が途絶えることは
ありません。鉢中央部の下部は,茎葉が茂ってくると光があたりにくくなり,葉が枯
れてきますが,株の内部をよく見てその前に鉢中央部の茎を若干切り戻して,株内部
に光が当たるようにするとよいです。この方法では安定して長く花を楽しめます。水
やり,施肥などの管理もしやすく,風通しなどがよくなるので病害虫の発生も少なく
なります。
枝数が増えて込み入ってくると,次のような状態になるので,細い枝や不要な枝を取り
除いて(整枝をして),株の内部の光や風通しなどの環境条件を改善し,残りの枝の生長
を促します。
@風通しが悪くなって病害虫が発生しやすくなる。
A蕾の数は多いが,花が小さくなる。
B下葉が黄化して枯れやすくなる。
木や枝が大きく伸びて全体の姿が乱れた場合には,全体を小さくする,あるいは樹形を
整えるために枝の一部を切り落とす,いわゆる剪定をします。
花が咲く木の場合は,開花習性(開花に必要な温度,日長などの環境条件や植物の生育
状態)や,花芽分化時期(花芽ができる時期)をよく知って剪定の時期を決める必要があ
ります。
たとえばハイビスカスは,今年度に伸びた新しい枝の先端に次々に花芽ができます。で
すから,秋に温度が下がり,花が咲かなくなり,春先に新芽が伸び出すまでの間に枝を切
り詰めます。
5 挿し芽の省力化,大きな挿し穂で挿し芽を成功させ,生育期間
を大幅に短縮する画期的な挿し木(芽)の技術
新しい技術では,できるだけ長い穂を挿します。挿す部分の不要な葉や枝を取り除くだけ
で,上方の葉や枝,蕾や花もそのままにして挿します。その結果,挿し穂調整の省力化と,
大きくなるまでの栽培期間の大幅な短縮ができます。また,後で述べますが,挿し芽期間中
の水やりも大きく省力化できます。 (用語解説)
挿す部分を挿し穂,挿し穂が樹木など硬い品目を挿す場合は挿し木,草花など挿し穂
が柔らかい品目を挿す場合は挿し芽と言います。
排水がよく,清潔なことが重要です。鹿沼土,バーミキュライト,赤玉土,セル育苗用
専用用土などが適しています。セル育苗をした時に,発芽しなかったり,十分苗が成長し
なかったりした場合の用土を,コスト削減のため挿し木に使うことがありますが,茎腐れ
がほとんどなく発根もとてもよいです。
葉が多いと,気孔からの蒸散が多くなり,しおれやすくなります。葉がしおれると光合
成能力が小さくなり,発根が遅れ,ひどい場合には挿し穂が枯れてしまいます。
そこで,葉の枚数を少なくしたり,葉が大きい場合には一部を切り取って小さくしたり
して,葉を調整します。
葉の枚数を少なくするため,挿し穂の長さは短くなります。一般的には5〜15a程度の
長さに調整します。品目によっては,茎の硬い部分は発根が悪くなるので,先端の柔らか
い部分を挿すため,挿し穂は短くなります。
そろった苗をたくさん得たい場合には,穂の長さを短くします。親株が少ないと,長い
穂では採れる数が少なく,そろいも悪くなります。
日中は葉がしおれやすいので,葉のしおれぐあいを見てその都度葉水をします。葉水を
かけ過ぎると,発根するまでに葉や茎が腐れてしまうことがあります。葉がとてもしおれ
ているのに葉水を忘れると,枯らしてしまうことがあります。
このように,発根するまでは葉のしおれ具合を注意深く観察する必要があります。
用土は花木については,鹿沼土を使用します。その理由は,鹿沼土は過湿になりにくい
こと,また乾いてくると白っぽくなり,用土に水分があるかないかが一目でよくわかるか
らです。
鹿沼土の微塵が穂の切り口をふさぐと,水揚げが悪くなる場合があるので,予め微塵を
抜いておくか,挿し芽後に鉢底から抜ける水が透明になるまで鉢土に十分水を注ぎます。
新しい技術では,できるだけ長い穂を挿します。挿す部分のじゃまになる葉や枝を取り
除くだけで,上方の葉や枝,蕾や花もそのままにして挿します。
このような方法では,挿し穂調整の省力化と,大きくなるまでの栽培期間の大幅な短縮
ができます。挿し穂が大きく,葉もたくさんついているので,発根すれば鉢上げ後の成長
がとても速くなります。また鉢上げ直後から,観賞価値が高い苗ができます。
すべての品目で試した訳ではありませんが,シコンノボタン,ハイビスカス,クロトン
,サザンカ,ランタナ,カポック,ツツジなどでは50aを超える挿し穂でも上記方法では
十分発根しました。シコンノボタンでは80aの長い穂でも温度が高い時期では,20日程度
で十分発根しました。もちろん花や蕾はそのままにし,挿すのにじゃまになる下葉を取り
除いただけでした。生産者がこの方法を用いると,出荷までの期間が大幅に短縮でき,ハ
ウスの回転率が著しく高まります。
(写真6) (写真7)
写真6のユーフォルビアは穂の長さは10a以内と短かったのですが,花をつけたまま挿
し芽をしたところ,2週間程度で発根しました(写真7)。葉はもともと少なかったのです
が,発根時にはほとんどというよりも,葉が一枚もなく枯れてしまった穂が多くなりまし
た。葉が一枚もついていない小さな穂も挿してみたのですが,6本の内5本は発根しまし
た。茎の中にある貯蔵養分で発根したのだと思われます。一般的に挿し穂は,花や蕾があ
ると開花にエネルギーが取られて,発根が遅く(悪く)なると考えられていますが,ひょっ
とすると花を咲かせ子孫を残す(種をつくる)ために,養分を吸収しようとして早く根を
出そうとするのかもしれません。
@ハイビスカス,クロトン,シコンノボタンなど花木の効率的な挿し木技術
挿し穂の長さに応じた大きさの鉢に,挿したときに挿し穂が倒れない程度に鹿沼土
を入れます。挿し穂は,倒れないように鉢のふちに沿って,挿し穂の先端が鉢底に届
くように挿します。中央の部分が空いていれば,そこにも挿します。葉や茎が多少重
なりあってもまいません。
挿しにくい場合には,先に穂を鉢のふちに沿って立て,鹿沼土を少しずつ入れて挿
すか,針金や竹串などで穴を開けてから挿します。茎がやわらかい草花などについて
は,そうします。
Aキャットテイル,ハツユキカズラ,黄金カズラなどツル植物の効率的な挿し芽技術
長いつるを親指を除く片手4本の指に茎をぐるぐる巻きつけて,3号鉢の7分目ぐ
らいに入れた用土の上に置きき,葉が隠れないようつるの上に土をかぶせます。つる
が長い分,節が多くなるので発根数と量が増え,成長が速くなり,観賞できるまでの
大きさになるのがとても早くなります。
(写真8)
挿した鉢は,それよりも大きな受け皿に置き,
挿し木を終えた時だけ鉢土と葉全体が湿るよう上
から水をかけます。その後は受け皿に深さ1〜2
a程度水が溜まるようにし,水は減少したら,随
時足します。受け皿に水があると,毛管現象で,
鉢土への水分供給がなされます(写真8:3月18
日挿し芽,ペチュニア小輪系,穂の長さ8〜10a
,鉢は高さ6×直径6aの2号鉢,受け皿は直径
36aの12号鉢,1鉢に4本,鉢数合計は17鉢)。鉢
土の表面が,水分不足で白っぽくならないようにします。
ただし,水に浸かった茎が腐れる恐れがあるので,水は多く入れ過ぎないように注意し
ます。葉は,受け皿から水を十分吸い揚げるので,しおれません。水揚げが悪い品目は,
切り口を水につけて,十分水揚げをしてから挿します。
鉢は,直射日光が当たらない場所に置きます。水温が上がると,挿し木の基部が腐敗し
やすくなります。品目や時期などによって異なりますが,花木はおおむね30〜40日で,草
花は15日前後で,鉢上げできるぐらいに発根します。
経費削減のため,鹿沼土の代わりに庭土や,使用済みの鉢土や開花終了後の株などが長
く放置されていた場所(フラワーパークかごしまのバックヤード)の土を用土にして,コ
リウス,レモンマリーゴールド,宿根サルビア,ペチュニア,アジサイ,ランタナなどを
挿し芽しましたが,問題なく発根しました。
ただし,庭土や使い古した用土では,病気が発生する場合があるので注意が必要です。
問題があれば,趣味の園芸では,専用用土に変更すればよいだけです。
この方法では,鉢上げが省け,そのまま植栽できます。植栽までの期間も若干ですが短
縮できます。病気が気になる場合には,本来の鉢上げ用土に挿し芽し,発根後肥料を施す
と,そのまま販売も可能です。
品目によっては,時期によって発根に差があるようですが,ほとんどの品目は,温度さ
え十分であれば挿し木は可能と思われます。時期としては,湿度が高い梅雨時期がベスト
だと思いますが,これまでの経験から最低夜温が15度できれば20度以上の時期であれば,
どの時期でもよいと思います。
中には針葉樹のイブキ類などのように,1〜2月の低温期が適期だとされる品目もありま
す。
光が強く,温度が高いと葉からの蒸散量が多くなり,葉がしおれやすくなります。同じ
理由から,風が強い場所も避けます。また,雑菌の繁殖も多くなり,茎葉の腐れが発生し
やすくなるので,明るい涼しい日陰で行います。
@葉がしおれる
●水揚げを十分にしてから挿し木をする。
●葉の枚数を減らす。先端の葉が展開していない柔らかい部分はしおれやすいので,
切り捨てる。
●遮光し,温度を下げる
A葉はしおれないが,発根が少ない,もしくは発根が遅れる
●品目によって,茎の硬さが発根に影響するので,茎の硬い部分がだめだった場合,
茎の柔らかい先端部分を挿してみる。その逆もためす必要あり。
●発根促進剤を使用する。
●密閉挿し(ビニール被覆をする)をして湿度を高める。
B茎や葉が腐れる
●過湿になると病気が発生しやすくなるので,葉水が多過ぎないようにする。高温は
湿害を助長するので,遮光し,温度を下げる。
●病気が発生しやすい品目は,挿し穂の間隔を空け,風通しをよくする。
C挿し木が適さない
●椿は発根が極めて遅く,3か月場合によっては1年ぐらい経過しないと発根しませ
ん。魚柳梅については,これまで色々対策をとってきましたが,挿し木が成功でき
ませんでした。
サルビア,ニチニチソウ,アゲラタム,ポーチュラカ,ペチュニア,マリーゴールド,
ペンタス,ハツユキカズラ,オウゴンカズラ,キャットテイル
,ディフェンバキア,ドラセナ,パキラ,クロトン,ハイビスカス,ツツジ,ランタナ,
アジサイ,シコンノボタン他多品目
コスト削減のため,一度使用した用土や庭土を使用しています。うまく発根しなかった
り,病気が発生したりしたら,購入した清潔な用土を使用すればよいと思います。これま
で,自宅では挿し木用土を購入したことはありません。
毎年春と秋に草花の種を播くので,発芽しなかった分を挿し芽用土として利用しています
。挿し木をした鉢は明るい日陰に置いて,朝夕2回葉水をかねて水やりをします。
少々水をやり過ぎても,これまで過湿で茎腐れを起こしたことはありませんでした。コス
ト削減のため,何度も使用しています。消毒は特にしていません。使用後はよく乾燥させて
います。
洋ランや観葉の用土として使用していますが,植え替え後の古い用土を1か月程度水に浸
けたものを再利用しています。最近は,鹿沼土を使う機会が増えました。
アジサイで使用したことがありますが,ほとんど発根しました。つる性のキャットテイル
などは,全て庭土を使用しています。ペチュニア,バーベナタピアン,シコンノボタン,ラ
ンタナなども庭土で発根しました。
3号鉢に挿し木をしますが,発根後はそのまま植栽できます。病原菌がいなく,排水がよ
ければ,庭土も挿し木の用土として使用できないことはありません。
ちなみに,多肉植物の挿し芽用土は全て庭土を使用しています。
6 下葉の枯れを防ぐ方法
美観を損なわずに開花を長く楽しむ,病気の発生を防ぐ,株枯れを防ぐためには,次のよ
うな下葉の枯れ防止対策が必要です。大切なことは,株が茂ってきたら,株の内部をよく見
て,いち早く葉の枯れに気づくことです。最初の一枚が少し黄色くなり始めた時に気づける
ようになればプロの栽培技術者です。観察力,それが大事です。
@水やりを適切に行い,土壌の過湿,過乾燥を防ぎ,根を健全に育てること
A施肥を適切に行い,肥料のやり過ぎや肥料不足がないようにすること。
B〜Eに問題がなく,水やりを適正に行っているのに,草丈が伸びない,下葉が枯れ
るということであれば,肥料不足が考えられるので追肥をします。
B株の内部に光や風がよく入るよう密植,過繁茂を避けること。品目に応じた適正な株間
,過繁茂にならない適正な施肥や適期整枝・切り戻しをすること。
C病害虫発生があれば,早めに防除すること。病害虫発生の原因を明らかにし,対策をと
ること(この章の11 農薬をできるだけ少なくして病害虫を防ぐ方法を参照のこと)
D高温多湿,低温,強光,弱光下で下葉の枯れが助長されるので,適温,適日照になるよ
う環境条件を適正に整えること。
E栽培期間が長くなり株が老化すると,下葉が上がってくるので,植え替え,もしくは切
り戻しをすること。
7 鉢替えの目安と鉢替えの方法
このことについては,次項を判断の目安とします。
@草丈が伸び,茎葉が茂り,鉢と植物のバランスが乱れてきた。茎も倒れかけている。
A根が鉢一杯に広がり,新しい根が伸びる余地がない。根の色は褐色になっている。水
やりをしても,水が鉢底にすぐに流れ落ちてこず,鉢土表面にしばらくとどまってい
る。
B株の老化などで,下葉が枯れ上がってきている。
購入したばかりの鉢苗については,一回り大きなサイズの鉢に植え替えます。鉢の種類は
プラスチック,陶器,素焼きのいずれでもかまいません。軽くて取り扱いやすいのはプラス
チック製です。
まず,排水穴から土がこぼれないように鉢底網を敷きます。自宅では古くなって取り換え
た網戸の網を使っています。プラ鉢で,底が網目になっているものは,鉢底網は不要です。
また,鉢底に排水や通気をよくするために軽石などの鉢底石を入れる場合もありますが,小
さな鉢では不要です。排水の悪い土は鉢用土として使うことはないので,自宅では大きな鉢
でも鉢底石は使ったことはありません。特に購入用土については,排水は非常によいので,
鉢底石は必要ないと思います。
(写真9) (写真10)
(写真11) (写真12)
(写真13)
まず,鉢底に用土を3分の1程度を入れます。用土は自宅では庭土,なければ赤玉土6と臭いのしない完熟たい肥4の混合用土を用いています。その上に大さじ一杯(6号鉢で5c,5cの表示があるさじを使用)で,化成肥料(NPK成分:8-8-8)と粒状苦土石灰を入れ(写真10),根に肥料が直接触れないようによくかきまぜます(写真11)。この上に苗を置き(写真11), 最終的な植え込み高さ(鉢上部から2a程度下)になるよう,肥料の含まれていない用土を入れ(写真12),鉢替え終了とします(写真13:新しい水やり方法を実証するため鉢土表土に鹿沼土を敷いた)。写真の植物は,アネモネです。
なお,品目や植物の大きさなどによって異なりますが,株が古くなった場合には,地上部や地下部(根)は全体の2分の1から3分の1程度に切り戻してから,新しい用土に植えます。また,高温多湿,低温に弱い品目は,その時期に入る前に,切り戻し後,あるいは挿し芽で養成した苗に植え替えます。切り戻しは,必ず植物が元気なうちに行います。通常どおり上から水やりをする場合には,2週間程度経ってから上記化成肥料小さじ一杯(5c)を表土に均一に施用します。水やは,鉢表面に敷いた鹿沼土が白っぽくなった時に行います。 鉢受け皿に水を入れて吸水させる場合は,上述のとおり,追肥はおおむね植え替え1か月
後,植物の種類や生育状況,鉢の大きさによって異なりますが,目安として,受け皿に緩効
性肥料(IB化成)を3号鉢で3粒,4号鉢で4粒,5号鉢で5粒程度施します。生育状況
を見て粒数を増減します。
今後は,初心者でも取り組みやすいように省力化考え,肥料は植え付け直後に,受け皿の
必要なものは受け皿に,そうでないものは鉢表面にIB化成を同上追肥と同じ粒数を施す方
法を実施していきたい,と考えています。
8 露地栽培における適切な肥料のやり方
肥料のやり方がわからない場合は,とりあえず基肥,追肥ともマニュアルに示された基準
どおりにやります。慣れてくれば,草丈,茎葉の茂り具合,葉の色を参考にして追肥の時期
や量を調整できるようになります。
ただし,長期に渡って化学肥料だけに頼ると,微量要素欠乏症状の発症,土壌微生物のバ
ランスが崩れることによる土壌病害の発生,土壌の硬化が懸念されます。ですから,完熟た
い肥などの有機物を合わせて十分に施すことが大切です。
以下に,肥料の基本的な知識も含めて,適正な肥料のやり方を説明します。
植物の生育に最も必要な肥料養分であるチッソ(N),リン酸(P),カリ(K)を肥料
の三要素と言います。チッソは葉や茎など体を大きくし,リン酸は開花結実,呼吸や光合成
に,カリは根の発育,細胞内の浸透圧調整,寒さへの抵抗性に関係します。三要素の次に必
要とされるカルシウム(細胞壁を強くし,体をじょうぶにする),マグネシウム(光合成をす
る葉緑素の形成に必要)を含めて,肥料の5大要素と呼ぶこともあります。
こうした養分以外に,ごくわずかですが,植物の生育に欠かせない鉄(Fe),亜鉛(Z
n)モリブデン(Mo),マンガン(Mn),銅(Cu),ホウ素(B)などの養分を微量
要素と言います。
基肥の量は,花の種類や前作の残りの肥料分などによって異なりますが,できれば植え付
け1週間ぐらい前までに,チッソ(N),リン酸(P),カリ(K)の各成分が8〜10%程
度の肥料を,u当たり100g程度(各成分量が8%の肥料なら125g程度)を目安として施し
ます。
ちなみに,肥料袋に10-10-10と記載があれば,チッソ,リン酸,カリの各成分がそれぞれ
10%ずつ含まれているということを意味しています。20kg入りの袋であれば,各成分が
(20×0.1)ずつ入っていることになります。
ただし,肥料が多すぎると,アゲラータムや,品種によってはマリーゴールドなどは葉が繁
り過ぎて花数が少なくなったり,開花が遅れたりします。トレニアなどは,草丈が伸びすぎ
て倒れやすくなります。コリウスや,夏花壇の花ではありませんが,葉ボタンやアルタナン
セラなどは斑の色が鮮やかに出なくなります。
このような花は,基肥は3分の1程度と少なくします。生育が悪いようであれば,追肥で
調整するとよいでしょう。
品目や生育状況によって異なりますが,各成分が8〜10%程度の化成肥料を,u当たり50
g程度(各成分が8%の肥料なら,60g程度)施します。基肥の半分の量になります。鉢やプ
ランターでは,速効性の液肥を品目や生育に応じて,説明書に書かれた既定の濃度で施用す
る場合もあります。
肥料が不足すると,次のような症状が現れます。
@草丈の伸びが悪く,分枝数(枝数)も少なくなるなど,株全体の生育が悪くなり,病気
にかかりやすくなる。
A下葉から次第に葉の色が薄くなる。
B花や果実が小さく,数も少なくなる。
C特定の養分,例えば鉄が不足すると,クロロシス(葉脈の部分は,網目状に緑色が濃い
が,その他は葉の緑色のもとになる葉緑素が形成されずに白化する)が発生する。カル
シウムが不足した場合には,トマトでは果実のお尻の部分から黒く腐れる「尻腐れ病」
,落花生では空さが多くなるなどの欠乏症状が発生する。
このような症状を見て,草丈の伸びが悪い,葉の色が薄いのは肥料が足りないせいだと即
断して,追肥の量や回数を増やしている方が多いのではないか,と思います。その前に,考
えなければならない大切なことは,水は十分に足りているかどうかです。土壌中に肥料はあ
っても,水分がなく,根が吸収できるような形になっていない場合には,植物は肥料を利用
できません。
適度に雨が降り,水やりをしているにもかかわらず,葉の色が薄くなるなど上述のような
症状があれば,明らかに肥料不足を考えてよいでしょう。
花ではありませんが,トマトの尻腐れ病や,落花生の空さや発生などについては,発生し
てからでは手遅れになるので,植え付け前に苦土石灰などを施用しておきます。
生育が悪いと,心理的にたくさん肥料をやりたくなります。しかし,肥料をやり過ぎると
,ナメクジに塩を与えた時に,ナメクジが小さくなるのと同じで,根が濃度障害をおこして
弱り,生育が衰え,ひどい場合には枯れてしまうことさえあります。
また,草丈が伸びすぎて倒れる(倒伏する),茎葉が茂りすぎて(過繁茂)通風が悪くな
り病害虫が発生しやすくなる,サツマイモなどで発生するいわゆる「つるボケ」(つるばか
り伸びて収量が少なくなる現象),などの問題が生じます。
ここで,もう少し科学的な施肥について述べてみたいと思います。よく生育を見て追肥の
量を加減するといわれますが,植え付け後の草丈の伸びを参考にするのが最もわかりやすい
,と考えます。
まず,1作目は基準どおりに肥料を施します。そして,植え付け後の草丈をできれば10〜
15日おきぐらいに計ります。サラリーマンの方であれば,2週間に1度,日曜日に調査して
もよいでしょう。出蕾期,開花期(開花始めと終わり)には必ず調査を実施します。調査用
紙を予め作成しておけば,記録は簡単です。パソコンにデータを入力すればさらによいでし
ょう。
1作目のデータは,次作に活用できます。例えば,1作目の最終草丈が,自分が思うとお
りの草丈になったとすれば,次作の施肥量は1年目とほぼ同じでよい,と思います。1作目
の最終草丈が伸びすぎて倒れるほどになったのであれば,基肥の量を3分の1程度減らしま
す。その後,それでも1作目の各時期のデータと比較して,草丈が伸びていれば,追肥の量
や回数を少しずつ減らして行きます。水やりについても,過乾燥にならない程度に減らして
いきます。草丈が1作目のデータとほぼ同じ程度になってきたら,肥料を1作目のやり方に
戻します。
逆に最終草丈が短かった場合には,その程度によりますが,とりあえず基肥の量は基準ど
おりにして,追肥の量や回数を増やします。あわせて,過湿にならない程度に水やりの回数
を増やします。
なお,極端に草丈が伸び過ぎた場合には,は種や植え付け時期を遅らせ,逆に短すぎた場
合には早めます。この場合,コスモスなどのように短日植物であれば,その性質を考えて,
適正な草丈になるように植え付け時期を決めます。
9 台風による倒伏を防ぐ方法
倒伏を防止するには,次のような方法があります。
@土を深く耕し,地上部を支える根を地中深く広くしっかり張らせる。
A多肥や密植などにより,茎が細く軟弱徒長しないようにする。
B草丈が高くなる品目や品種は支柱をする。
C土寄せをする。
D草丈が高くなり過ぎた場合には,切り戻しをする。
E適期に種を播き,草丈が高くならないようにする。たとえば,短日性植物のコスモスを
早く種まきすると,日長が短くなる秋にならないと花芽ができないので,草丈がかなり
高くなる。7月下旬から8月上旬に播くと,適正な草丈になる。
(写真14)
少々の風であればしっかりと支柱をし,土寄せを
すれば防ぐことはできます。大型台風の直撃がどう
しても避けられない状況になったときには,草花は
10〜15a程度の高さに切り戻します。
なお,回復できないほどの被害を受けることもあ
るので,切り取った枝はさし芽をしておくとよいで
しょう。マリーゴールドはさし芽後約一週間,トレ
ニアやサルビア,日々草などたいていの草花は二週
間程度で発根し植え付けられるようになります。
サルスベリ,ノーゼンカズラ,バンマツリ,シコンノボタンなどは,枝を透かしたりして,できるだけ風の抵抗を少なくします。
基幹となる下枝は,幹が小さい内に30〜50aの高さで切り戻し,太くしておくと,ある程
度枝が伸びても強風に強くなります(写真14:フラワーパークかごしまにて2月4日剪定)
。
なお,海岸近くに花壇がある場合には,塩害の恐れがありますので,台風通過後は速やか
に茎葉に水を十分かけ塩分を洗い流します。
10 楽々除草
除草の省力化は,特に庭が広い場合には大きな課題となります。第1章と重複するか所もありますが,再度総合的にまとめてみます。
予算があれば,通路などはレンガや敷石で埋めるとよいでしょう。きっちりとセメントづけして,すき間を埋めないとそこから雑草が生えてきます。ただし,セメントづけすると,やり替える場合が大変です。 自宅では,やり替えがしやすいように通路などには砂利を敷いています。砂利を敷く前に,除草(草殺)シートを張っておけば,砂利の量を少なくできます。砂利は,小さいものは風に飛ばされたり,雨水で流されたりするので避けます。 砂利の上に溜まった落ち葉や花木の大きな花殻などは,ほうきでは集めにくいので,小型の電動ブローワー(3〜4千円)で吹き寄せて掃除をしていますが,小さい砂利は吹き飛ばされてしまいます。
カバープランツとしてのふさわしい条件は,
@ほどほどの繁殖力があり,雑草を抑える力が強いこと
A観賞価値が高いこと
B刈り込み,水やり,病害虫防除など手入れがあまりかからないこと
C寒さ,暑さに強いことなどです。
こうした点を考慮すると,第1章で紹介したハツユキカズラが最適なカバープランツであると思います。黄金カズラ,アジュガなどは繁殖力が強く増えすぎて,狭い敷地では管理が大変です。
耕うん整地してすぐに,種まきや植え付けをすると,雑草も一緒に生育します。耕うん整地をし,速やかに水やりするか,雨が降りそうであれば雨にうたせて,しばらく放置しておきます。雑草が発芽し始めたら,晴天時に基肥を施し,耕うん整地を行うと自然と除草ができます。労力や時間にゆとりがある場合は,実施されるとよいと思います。
雑草ができるだけ小さいうちに,移植ゴテや手ガマで軽く中耕します。先人の教えに,「駄農(ダメな農家)は草に追われ,普農(普通の農家)は草を追い,篤農(優れた農家)は草を見ず」という言葉があります。草が大きくなって,しかも種ができて地面にたくさん落ちてから,苦労して草取りに追われるようなことはしないようにしたいものです。 敷きわらや,後述する有機物マルチ栽培をするのも一つの方法です。
基本的には手取りが最も環境にやさしいと言えます。できるだけ手取りをお勧めしますが,庭の面積,労力や時間などでどうしても手取りできない方もいらっしゃることと思います。そのような方が登録された除草剤を活用されるのはやむをえないと考えます。
仮に砂利の下に除草シートを張っていても,長い間には花壇から雨で流れ込んできた土が溜まり,いつの間にか雑草が生えるようになってきます。雑草だけでなくトレニアなど草花のこぼれ種からの芽生えもはびこってきます。
(写真15)
たくさんの小さな雑草を抜き取るのは,敷地が広いと通路だけでもけっこう時間がかかります。そこで,時間がない場合や,暑い日や寒い日には除草剤を有効に活用するとよいでしょう。
自宅では,容量が500ccの小さなハンドスプレー(写真15,噴口までの柄が長いものが安全性が高くて便利)で100倍に薄めた浸透移行性除草剤(アミノ酸系除草剤,原料はグリホサート,花壇以外の非農耕地用)をして散布することがあります。スポット散布ができ,散布量をノズルを回しながらで微調整できるため,薬液の飛散がないようにして散布していますが,念のためマスクとゴム手袋を着用しています。この方法だととても短時間(70坪の敷地で30分)に,わずかな薬液量(500cc)で除草ができます。
なお自宅で使用している浸透移行性除草剤は,地面に落ちると,速やかに土壌に吸着され不活性化されます。その後2週間程度で,微生物により自然界にあるアミノ酸と水に分解されます。土壌や地下水を汚染することのない登録の取れた安全な除草剤であるとされています。
11 農薬をできるだけ少なくして病害虫を防ぐ方法
近年農業だけでなく様々な分野で,環境にやさしい,安全,安心,低コストがキーワードになっています。そこで,ここでは家庭で,農薬を使用しないでも,ある程度いや十分満足できる方法を検討してみましょう。
基本的には,
@事前に発生しやすい病害虫の生態や発生時期を知って,対策を検討しておく
A病害虫のいない健全な種苗を植える
B病害虫の発生しにくい品目,品種を植える。
C病害虫が発生しにくく,植物が健全に育つ環境条件を作る
D発生した病害虫被害をできるだけ最小限に防ぐこと
がポイントになりますが,具体的には次のようなことを実施する必要があります。
苗を購入する時には,まず害虫が発生していないか,よく観察します。アブラムシやカ
イガラムシ(花木,観葉植物,果樹では要注意),ハモグリバエ(葉の中で,幼虫が白い
筋状の線を描くので,俗称でエカキムシとも呼ばれる)などは目につきやすいのですが,
ダニ(葉裏に多い)やスリップスは小さいので見つけにくいかもしれません。ただ,ダニ
やスリップスが多いと,葉にカスリ状の小斑点が多数見られ,葉が白っぽくなります。ス
リップスの被害は,葉にギザギザを伴うこともあります。
害虫の被害株は,一般的に葉が食害されて穴が開いたりするのでわかりやすいのですが
,中には病害と間違いやすい症状があります。たとえば,サルビアファリナセア(ブルー
サルビア)やトレニアなどで見られますが,葉が細長く縮れたようになった場合には,チ
ャノホコリダニの被害を受けています。
キクでは,サビダニが発生すると,葉に輪紋症状(黄褐色の輪ができる)が現れますが
,このような被害株を発見したら,ただちに処分します。チャノホコリダニやサビダニは
,茎の先端にいますが,残念ながら肉眼では見えません。
次に,花や葉にカビの発生や,病気による斑点(病斑)がないか,地際の茎が黒く枯れ
ていないか調べます。特に,下葉や株の内部の葉が枯れていないかよく見ます。
病気が発生した場合,病気(病斑)の広がりや病斑の数,病斑が上位や隣の株の葉に伝
染していないか絶えず注意します。
さらに,茎が伸び過ぎて細く弱々しくないか(軟弱徒長していないか),苗が老化(根
が鉢底から多数はみ出し,鉢土の表面にも根が露出して,全体的に葉色が薄く下葉が枯れ
ている)していないか,よく見てみましょう。苗のできが,その後の生育や収量に大きく
影響することから,昔から苗半作,苗八分作とかいわれますが,病害虫の発生がなく,葉
や根が若々しく,苗ががっしりとしまった健苗を植え付けすることが,栽培成功のポイン
トです。
初心者の場合は,野生のバラや,野菜であればかんぴょうなどのように,病気に強い植物
を台木にした接ぎ木苗を利用するとよいでしょう。ただし,購入価格は,通常の苗の4〜6
倍程度で,高くなります。
カーネーションなどのように育種が進んだ品目では,立ち枯れ病の原因となる病原菌の一
種に対して,フザリウム抵抗性と銘打った品種が開発されています。また,抵抗性品種とま
では書かれていませんが,近年百日草の種類で,リネアリス(プチランド),ザハラ,プロ
ヒュージョンのように,従来のものより病気に強いと,カタログや種子の入った袋に紹介さ
れているものが増えてきました。事実これらは,雨が多くても,従来よりも病気にかかりに
くい品種であるといえます。このように,同じ品目でも,品種間で病害虫のかかりやすさは
違います。
病害虫の発生が多く,無農薬栽培は難しい(収量や品質が著しく低下する,また栽培管理
にかなり手間がかかる)と思われる品目・品種については,栽培経験のある人や種苗店に,
苗や種を購入するときに聞いてみるとよいでしょう。初心者の場合は,そのような品目・品
種は避けたほうがよい,と思います。たとえば,バラについては,スリップスの被害がかな
り少ない赤色の品種から栽培するとよいでしょう。黒星病などの発生が少ない品種を選択し
ます。
なお,ここ数年,自宅ではクロウリハムシの発生が非常に多く,ナデシコ類については育
苗中植え付け直後の苗が小さい時点ではなはだしい食害を受けています。防虫ネットで覆っ
た育苗トンネルの中で,ある程度大きくなり,枝数が増えるまで育ててから植えると,被害
が軽減されるかもしれません。ただし,その手間を考え,他の花を植えています。発生が少
なくなるのを,しばらく待ちたいと思っています。
湿地に生える植物を除いたほとんどの植物を栽培する時に,最も基本的な栽培の条件です
。排水が悪ければ,まず根が傷み,腐れてきます。そうなると,水や養分の吸収ができなく
なり,地上部も生育が衰え,ひどければ枯れてしまいます。じめじめと湿気が多いところで
は,当然病気の発生も多くなります。
排水の悪いところでは,排水路を設け,高畦栽培をします。
湿度が高いと病気の発生が多くなりますが,風通しがよくなると,地表面や葉や茎の水分
がよく乾き,病気の発生が少なくなります。害虫の発生も風通しの影響を受けます。
れに伴い,その名のとおりススがこびりついたように葉が真っ黒になるスス病が発生します
。サザンカや,夏みかんなどの柑橘では,カイガラムシが大発生し,スス病が発生しやすく
なります。
このような状況になっても,整枝(風と光が株の内部によく入るように,枝数を少なくす
ること)を徹底し,風通しをよくすると,アブラムシはしばらくするといなくなってしまい
ます。このことは,サルスベリで経験しました。カイガラムシも,次年度には驚くほどに少
なくなりました。
このことについては,柑橘のスイートスプリングで経験しました。スス病は,アブラムシ
やカイガラムシが出す分泌物を養分として広がりますが,それらの害虫がいなくなると消失
します。
なお,病害虫の発生が多い品目では,風通しを悪くする原因となる,肥料のやりすぎによ
る過繁茂や,密植を避けるようにするとよいでしょう。下葉を欠くことも有効です。
風通しがよくなると,株の内側に植物が呼吸に必要な酸素や,光合成に必要な光と二酸化
炭素がたくさん供給されるようになり,植物は元気になります。
野菜ほどではありませんが,花でも同じ品目や,同じ仲間の植物を毎年同じ場所に栽培し
続けると,@特定の養分だけが吸収されて,養分の偏りが発生する,Aその植物を加害する
特定の病害虫が次第に増えることなどにより,生育が悪くなる現象,いわゆる連作障害が発
生しやすくなります。これを避けるためには,科の異なる植物を交互に栽培する「輪作」を
実施します。
自宅の花壇でも,長年パンジーやビオラを栽培していましたが,一か所の花壇でここ数年
,地ぎわが黒く腐れて枯れる「茎腐れ病」が発生するようになりました。目下この場所では
,パンジー以外の花を栽培しています。
肥料をやりすぎると,過繁茂(茂り過ぎること)になり,風通しが悪くなって,病害虫が
発生しやすくなります。また,倒伏の原因にもなります。 逆に,施肥量が少ないと,生育が衰え,病害虫への抵抗力が少なくなります。ユリ類の炭
疽(たんそ)病や灰色カビ病は,その典型的な事例です。害虫では,ツツジのダニやグンバ
イムシ(ツツジの葉裏につく。汁を吸われ,葉が白くなる。相撲の行司が使うグンバイの形
に似ている)の被害が顕著になります。
ガーベラでは,ダニやスリップスで枯れてしまうのではないかと思われるぐらいに,葉が
茶色くなっていても,肥料と水を適正に施すと,葉が生き生きと回復して,花もきれいに咲
く場合もあります。このときのガーベラは,よほど肥料が少なくて,元気がなかったものと
思われます。
ダニ,スリップス,アブラムシのように小さな害虫については,捕殺は困難ですが,たい
ていの害虫については,捕殺は有効な防除手段です。アブラムシについても,茎の先端にま
だ数匹しかいないような状況であれば,捕殺は可能です。被害を拡大しないためには,病気
同様,早期発見が大切です。
ヨトウムシなどは,卵が一か所にまとめて産み付けられています。注意深く葉裏を見ると
,卵は見つけることができます。卵や,孵化したばかりの小さな幼虫が1枚の葉に群がって
いるのを発見できれば,捕殺の効果は非常に高まります。
また,それぞれの虫の生態をよく知っていると,つかまえやすくなります。たとえば,ヨ
トウムシは,漢字では夜盗虫と書きますが,夜や朝夕,曇天の日には茎の先端にまで這い上
がってきて,葉を食害します。太陽がぎらぎらと輝いている昼間は株もとの枯れ草などの下
にじっと潜んでいるので,つかまえるのは難しくなります。同様にナメクジも,雨が降って
いれば昼間に出てくることはありますが,基本的には夜型です。夕方,ナメクジをよく見か
ける場所に,野菜くずをおいておくと,夜になるとたくさん寄ってきます。また,セル育苗
用のトレイを木やアジサイなどの茂みの下に放置しておくと,トレイの裏側にたくさん集ま
るので一網打尽にします。
花を栽培した時に,よく発生する害虫で,捕殺できる主なものは次のとおりです。
スズメガの幼虫・・・カラー,クチナシ,ホウセンカ
ナメクジ,カタツムリ・・・マリーゴールド,ペチュニア他
ヨトウムシ,カブラヤガなどのネキリムシ・・・発芽したばかりの苗
ハマキムシの幼虫・・・ムクゲ,ホリホック
チュウレンジバチの幼虫・・・バラ
クロウリハムシの成虫・・・カーネーション,ナデシコ類など
ハナモグリ,マメコガネ成虫・・・バラの花
コガネムシの幼虫・・・草花の根
オンブバッタの成虫・・・アジサイやペンタスなど
(病気その他→クリックするとリンクします。)
◆害虫→クリックするとリンクします。 セズジスズメ,ヨトウムシ ,ハマオモトヨトウ,アオバハゴロモ,アブラムシ,クロウリハムシ,グンバイムシ,コナカイガラムシ,コガネムシ,ゴマダラカミキリ,スリップス,虫えい(虫こぶ),ハダニ,ハモグリバエ,ホオズキカメムシ |
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★セスジスズメの若齢幼虫 7月26日撮影。植物はカラー。自宅では,サンパチェンス,ペンタス,ホウセンカも被害を受けました。 |
★セスジスズメの老齢幼虫 8月6日撮影。植物は庭の雑草。名前は不明。体長5〜7センチ。スズメガ科。 |
★ヨトウムシ幼虫 6月5日夜に撮影。植物はダリア。ヨトウムシ類の一種。漢字では,夜盗虫と表記。昼間は,株元など日陰に潜んでいます。早朝や曇天の日には,目に着くところにいることもあるので,捕殺できます。 |
★ヨトウムシ幼虫 9月2日撮影。植物はペンタス。体長は4センチ程度。体色は個体によって異なります。 |
★ヨトウムシ幼虫 8月27日撮影。植物は葉ゲイトウ。体色がこんなに白っぽい個体は初めて見ましたが,ヨトウムシだと思われます。 |
★ハマオモトヨトウ幼虫 11月22日撮影。植物はゼフィランサス(タマスダレ)。体長は4センチ程度。自宅ではアマリリス,スイセンも被害を受けました。ハマユウ,アマリリスなども食害されます。 |
★アオバハゴロモ幼虫 6月25日撮影。植物はアジサイ。コナカガラムシと違って,大きくなった幼虫(写真)は触ると飛び跳ねます。見栄えが悪いだけで,被害はほとんどありません。 |
★アブラムシ成虫 5月20日撮影。植物はジキタリス。体長は1〜3ミリ程度。体色は黒,茶,緑など色々なものがいます。気づかないうちに,新芽を中心に葉や茎にびっしりと発生していました。多発すると,アブラムシの分泌物にスス病が発生し,真っ黒くなることがあります。オルトラン粒剤などが有効です。毎年発生する場合には,発生前に散布しておきます。1か月程度は予防効果があります。 |
★クロウリハムシ成虫 8月3日撮影。植物はポーチュラカ。花や葉を食害します。自宅では,ダイアンサス,ペチュニア,カリフォルニアポピーなどの特に花びらが食害されました。4月中旬〜6月,10〜11月(温度が25度以上の時期まで)に多い時には一日に50匹以上捕殺したこともありました。プラグ苗のダイアンサスが丸坊主に食害されたこともありました。 |
★グンバイムシ被害 6月17日撮影。植物はツツジ。被害葉は,カスリ状に白くなります。植物体が大きくなると,粒剤の効果が減少しますが,草丈20〜30センチ程度の株では,オルトラン粒剤は有効でした。 |
★グンバイムシ被害 11月3日撮影。植物はボケ。新葉には被害がなく,葉が展開して成熟すると被害が出始めます。被害がひどいと,葉が真っ白になります。ただし,開花時には葉が落ち,花はきれいに咲きます。 |
★グンバイムシ成虫 5月28日撮影。植物はツツジ。体長は3〜5ミリ。葉裏にいる相撲の軍配に似たムシが吸汁します。自宅では,宿根ガザニアでも被害がありました。オルトラン粒剤などの散布で防除は可能です。 |
★グンバイムシ被害 11月3日撮影。植物はボケ。茶褐色の斑点は,フンで,これがグンバイムシ被害の特徴です。 |
★コナカイガラムシ(卵のう:卵を保護している袋状のもの) 8月23日撮影。植物はアブチロン(チロリアンランプ)。植物体が大きいと,粒剤の効果はありません。その場合は,多発しないうちに歯ブラシでかき落とします。令和5年は,ポーチュラカ,宿根バーベナ,アマリリスにも発生しました。 |
★コナカイガラムシ被害 6月17日撮影。植物はエレモフィラニベア。発生が増えると,ムシが出す分泌液にすす病が発生し,白銀の枝が黒くなります。草丈が20〜30センチ程度なら,オルトラン粒剤などが有効です。 |
★コナカイガラムシ成虫(メス) 11月3日撮影。体長は2〜5ミリ。植物はハイビスカス。植物体が大きな場合には,粒剤は有効ではありません。発生が少ない内に,歯ブラシでかき落とします。オスには翅(はね)があり,飛びます。 |
★コガネムシ幼虫 7月27日撮影。プランター(38×68×28×センチ)に植栽したピーマンの根を食害し,葉がひどくしおれました。被害を受けていない株と比較して,早くから葉色がさめ,次第に水をやっても葉のしおれが回復しなくなりました。株の周りの土を掘り返すと,計13匹の幼虫が発見できました。大鉢植えのゼラニウムも被害にあいました。成虫,幼虫ともカナブンと似ているので,ひょっとしたらカナブンかもしれません。見分け方については,ネットを参照ください。 |
★ゴマダラカミキリ成虫 6月20日撮影。体調2.5〜3.5センチ。ミカン類,カエデ,ヤナギ,プラタナスなど多くの樹木の基部に産卵し,幼虫に内部を食害され,放置すると枯死します。自宅では,一度ミカン類のスイートスプリングが被害にあいました。基部に穴が開き,木くずが出ている場合には,内部に幼虫がいるので,殺虫剤を注入します。成虫が発生する5月下旬頃から,ミカン類など樹木をよく観察すると,成虫を発見できるので捕殺します。 |
★スリップス(アザミウマ)被害 5月16日撮影。植物はマーガレットマックスマムの赤系。花色が赤以外の品種では被害が見られませんでした。花色が赤でも,ボンザマーガレットのように被害がないものもありました。 |
★スリップス(アザミウマ)被害 5月22日撮影。植物はカラー。花色が黄,白の個体では被害が見られませんでした。 |
★スリップス(アザミウマ)被害 5月28日撮影。植物は宿根バーベナ。体長は1〜2ミリと小さく,動きが速いので見つけにくい虫です。カスリ状の葉の裏にダニがいなければ,スリップの被害です。 |
★スリップス(アザミウマ)被害 8月27日撮影。植物はジニア。被害が軽い時期に,粒剤を散布すると防除できます。 |
★スリップス(アザミウマ)被害 6月7日撮影。植物はダリア。新芽部分を吸汁されると,葉が委縮したり,奇形葉になります。葉にギザギザの症状が現れることもあります。 |
★虫えい 8月10日,散歩途中自宅外で撮影。植物はクサギ。ハエやハチ,アブラムシなどの一種が葉に産卵,あるいは吸汁により,細胞が異常増殖,肥大し,突起状の小さな塊りが生じます。この小突起を虫えい(虫こぶ,ゴール)と呼びます。ヨモギ,サクラ,クリなど多くの植物で被害が見られます。虫えいを知っていたら,花(昆虫?)博士と呼ばれるかもしれない,と思って紹介しました。 |
★ハダニ成虫 5月28日撮影。植物はサルビア。ハダニはクモの一種です。体長は0.5ミリ前後。 |
★葉裏のハダニ 5月28日撮影。植物はサルビア。最初は葉裏に発生します。初期は,葉にごく小さな白い斑点が生じます。数が増えると,葉表や花に移動して吸汁します。 |
★ハダニ被害 8月2日撮影。植物はマリーゴールド。被害葉は,かすり状に白くなります。このように数が増えると糸を引き,風に吹かれて移動します。人の体に付いて移動することもあるので注意します。 |
★ハモグリバエ被害 10月11日撮影。植物はペチュニア。体長約2ミリのハエ(マメハモグリバエやナモグリバエ)による被害。葉肉に産み付けられた卵から孵化した幼虫が,葉に白い曲線状の食害痕を残します。自宅では,ガーベラ,キンギョソウ,マリーゴールド,菜の花など花だけでなく,自家野菜のトマト,ナスにも被害が発生しています。花にだけ発生初期に粒剤を散布しています。ミカン類などの被害は,ハエでなく,体調約3ミリのミカンハモグリガによるものです。 |
★ホオズキカメムシ成虫 8月2日撮影。ホオズキ,トマト,ナス,ピーマンなどナス科の植物に発生します。最初は灰色ですが,成長するにつれて黒っぽくなります。植物は自宅プランター栽培のピーマンで,毎年発生します。ガムテープにくっつけて捕殺します。カメムシ類は触れるといやなにおいがしますが,このカメムシはそれほどでもないので,手で捕まえることもできます。 |
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◆病気その他 ウドンコ病,炭疽病,灰色カビ病,葉焼け |
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★ウドンコ病 5月29日撮影。植物はコレオプシス。開花が進むにつれて病気が広がります。 生育後半に肥料や水の不足,過湿による根腐れなどで生育不良になると発生が助長します。野菜のカボチャはこの現象が顕著です。トレニアは,秋になり低温が重なると,発生し始めます。 |
★ウドンコ病 11月25日撮影。植物はガーベラ。ペチュニアにも発生します。ペチュニアは,ウドンコ病にかかりにくい品を栽培し,農薬散布はしないようにしています。なお自宅では,7〜9月の高温時期は発生はほとんど見られていません。 |
★炭疽病(たんそ病) 8月27日撮影。植物はアジサイ。斑点病,褐斑病など見分けがつきにくいような病気がありますが,これまでの経験から,肥料不足やかん水不足などによる生育不良を改善すると,改善するようです。前年は発生したものの,翌年は施肥量を増やし,極端な土壌の乾燥をなくしたところ発生を見ませんでした。 |
★灰色カビ病 12月1日撮影。植物はペチュニア。温度が比較的低い時期に発生しています。雨にあてないようにすると発生は少なくなります。露地は雨に強い品種を植えます(第7章1を参照ください)。 |
★葉焼け 8月15日撮影。植物は鉢植えのペトレア。庭で開花した鉢を1週間程度室内に飾った後,室外に移動。移動後3日目に,新葉に症状が現れました。ひどくなると葉が内側に巻いてきます。緑が濃く,葉が硬い下葉(古葉)は影響はありませんでした。移動後は温度が33度,日差しが強い晴天でした。室内で育てた植物は,急に日差しが強い戸外に出すと日焼けをします。1週間程度だから,問題ないと思ったのが間違いでした。 |
昆虫と聞けば,すぐに害虫をイメージしますが,害虫を食べてやっつけてくれる,私たち
人間にとって有益な昆虫もいます。それが,いわゆる天敵です。ナナホシテントウムシやハ
ナアブの幼虫は,アブラムシを捕食します。クモやカマキリは,チョウやガなどの成虫や幼
虫を食べてくれます。ハチの中には,チョウやガの幼虫の体内に卵を産み付け,孵化した幼
虫がチョウやガの幼虫の体内を食い尽くす,寄生蜂と呼ばれるものもいます。チリカブリダ
ニのようにダニを捕食するダニもいます。その他にも天敵はたくさんいます。このような天
敵の力を最大限に活用するためには,できるだけ無農薬にする必要があります。
近年では,農薬をできるだけ少なくするために,天敵が農業に利用されることが増えてい
ます。
雨による跳ね上がりで,土から病原菌が伝搬することを防止するため,敷きわらなどを用
いたマルチ栽培をします。
キンギョソウやパンジーなどの草花は,高温時期には遮光による温度管理やは種用土,水
やり管理に十分注意しないと,立ち枯れ病が発生しやすくなります。品目ごとの発芽適温(
種子の袋に記載されている)を考えて,適期に種を播くようにします。
病気(特に灰色カビ病)になりやすい品目には,植物(葉や花)に直接水をかけないよ
うにします。雨のかからない屋内,軒下で栽培します。
病株や病葉は,日頃から観察を怠らず,病気が広がらないうちに,見つけ次第速やかに
取り除きます。枯れ葉や咲き殻は,灰色カビ病などの発生原因となるので,同様に除去し
ます。
灰色カビ病の病原菌は腐生菌で,最初は枯れ葉や咲き殻などの死んだ組織にとりつき,
次第に生きた花や新芽などの軟らかい組織にも広がっていきます。なお,灰色カビ病は,
やや低温で,雨が多い時期に発生が多くなるので注意します。雨が予想される前日には咲
き殻を取っておくとよいでしょう。
農薬を散布した時には,その農薬が有効であったかどうか確認することが大事です。虫
についてはわかりやすいですが,病気については病斑が増えていない,病斑が大きくなっ
ていない,病斑が乾いてきている,病斑が他の葉や隣接した株の葉に移っていない,この4
点を必ず確認します。
12 その他栽培技術の基本
花を上手に育てるには,基本的な栽培技術を理解しておく必要があります。ここでは,初
心者の方のために,そのポイントを紹介します。
植物がすくすくと生育するためには,何よりもまず根が順調に育たなければなりません。
そのためには,土づくりから始める必要があります。
@土が深く耕され,軟らかい。
このような土で育つ植物は,根が地中深く,広範囲に伸びるので,養水分の吸収が高
く,生育が旺盛になり,干ばつや強風などにも強くなります。
●土の耕し方
土を深く耕す時には,スコップが便利です。土が固い場合には,フォークを使う
ととても楽です。クワは野菜栽培で畦を立てたり,土寄せをしたりするとき以外は
使ったこはありません。
●耕うん作業の省力化
このことについては,すでに第1章18ページに述べたとおりです。
A排水(水はけ)がよく,保水性(水持ち)もよい。
B植物に必要な栄養分が過不足なくある。
C根が生育するのに適正な土壌酸度(次項参照)である。
D土壌微生物のバランスが適正である。
このような条件を満たすよい土をつくるためには,完熟堆肥を十分施し,土を深く耕す
ことです。堆肥は,ほんのわずかではあるものの生育に不可欠な微量要素(8 露地栽培
における適切な肥料のやり方◆肥料の3要素の項を参照のこと)を含んでいます。
また,堆肥は土壌中の微生物の養分となり,その活動により,排水や保水性のよい土(
団粒構造化が促進される)になります。土の小さな粒子同士が,微生物によりくっつけら
れて,より大きな粒子(団粒)になるわけです。土の粒子が大きくなると,粒子間の隙間
が大きくなり,土の通気,排水や保水性がよくなります。
土壌酸度はpH(ペーハー)で表され,1から14の範囲に分類されます。pH7が中性
で,7から数字が小さくなるにつれて酸性が強くなり,逆に7から数字が大きくなるとア
ルカリ性が強くなります。
1 ← 酸性 → 中性7 ← アルカリ性 → 14
日本は雨が多いので,カルシウム(Ca:石灰)やマグネシウム(Mg:苦土),鉄(
Fe),カリウム(K:カリ)などの陽イオンが流亡し,土壌は酸性化しやすくなります
。
ツツジやブルーベリー(ツツジ科)は,酸性土壌を好みますが,一般的に植物は中性前
後の土壌で生育がよくなります。土壌の酸性が強いと,植物の生育が悪くなるので,植え
付け前に,苦土石灰などのアルカリ性の資材を散布して,酸度を矯正します。
土壌酸度については,家庭では簡易土壌酸度測定器(pHメーター)を購入すれば調べ
ることができますが,ほうれん草の種を播いてみれば酸度矯正の必要があるかどうかがわ
かります。ほうれん草は酸性土壌に弱く,酸性が強ければ,生育が極端に悪く,ひどい場
合には発芽不良にさえもなります。
石灰などの資材は,基肥の化成肥料は酸性なので,できるだけ同時に散布しないように
します。植え付けの2週間以上前に散布,耕耘し,土によくなじませておきます。pHを
矯正するのに必要な石灰の量(中和石灰量)は,pHだけでは単純には決められません。
土壌の種類が違えば,pHが同じでも,中和石灰量は異なるので,正確には分析試薬や
機器を用いて調べる必要があります。粘土分が少なくなり,砂に近くなるにつれて,矯正
するのに必要な石灰の量は少なくてすみます。ただし,砂質土壌は,降雨や水やりによっ
て,養分が流失しやすので,あわせて堆肥などの有機物を多く施さないと,pHがすぐに
もとに戻りやすい性質があります。
家庭では,中和石灰量を求めることはできないので,通常は1平方メートル当たり100g
程度の苦土石灰を散布するとよいでしょう。酸性が強く,ほうれん草の生育が悪いような
土壌では,おおむね200gをめどに散布するとよいでしょう。次作の散布量は,その後の生
育状況などを見て決めます。
水が長時間溜まっていると,過湿で根腐れします。排水のよい場所に植えるのが原則で
すが,排水の悪い所は,必ず植え付け前に排水溝を十分に掘って,高畦にするなど,水が
溜まらないようにしておきます。
初めて取り組む場合は,育てやすい品種や品目から始めるとよいでしょう。育てやすいと
は,病害虫が発生しにくい,雨に強い,低温あるいは高温に強い,土壌の乾燥に強いなどで
す。何事も初めての場合は,何はともあれ成功し,達成感を得ることが大事です。難しい品
目には,栽培技術が向上するにつれて挑戦していけばよい,と思います。具体的に何を選択
するかは,本で調べたり,栽培経験者や苗販売店に聞いてみたりするとよいでしょう。
ちなみに,草花ではクリサンセマムノースポール,ビオラやパンジー,カリフォルニアポ
ピー,ツルコザクラ,フロックス,ベゴニア,トレニア,ポーチュラカ,ペンタス,メラン
ポジューム,コリウスなどがよいでしょう。
なお品目選定にあたっては,日当たり,温度,風当たり,雨のかかり具合など庭の環境条
件を考えて決めることが重要です。
初心者が失敗しやすいのは,雨が多かったせいで病気で株を枯らしてしまうことです。
ニチニチソウ,ガザニアガズー,マリーゴールド,マツバボタン,ペチュニアなどは長雨
には弱い品目です。もちろんこれらの品目も,栽培方法をマスターすれば上手に育てられ
ます。
排水対策を十分行うことが原則ですが,次の品目は比較的雨に強いと言えます。
メランポジューム,宿根サルビア,ペンタス,トレニア,ポーチュラカ,ハツユキカズ
ラ,ガーベラ,矮性ダリア,ベゴニア,ユーフォルビアダイアモンドフロスト(スター,
スノー),コレオプシス,レモンマリーゴールド,ベゴニア,エキナセア,アガパンサス
,キルタンサス,ゼフィランサスなど
「日当たりがよい」という栽培条件は,必ずしも終日陽が当たらないといけないという
ことではありません。日当たりを好むほとんどの品目は,午前中日が当たれば問題はあり
ません。植物は,葉で養分をつくる光合成については午前中が活発で,午後からはその養
分を体の各部 に送り(養分の転流),生長していきます。養分の転流と植物の生長は,
特に夜に温度が低くなってから盛んになります。
ユリ類などのように,午後はあまり日が当たらないほうがよい品目があります。特に土
壌の乾燥が激しくなりやすい真夏の,午後からの強烈な日差しについては避けた方がよい
品目は多いと思われます。
ベゴニアやホスタ(ギボウシ),クリスマスローズ,カラーなどについては,日当たり
を好まないように思われますが,自宅のような暖地でも,6月下旬頃までは,西日が強く
当たらなければ日当たりのよい場所でも育てることができます。
ちなみに,暗くない,明るい日陰であれば,本来そのような場所に適したインパチェン
ス,ベゴニアなどだけでなく,パンジー,ビオラ,クリサンセマムノースポール,トレニ
ア,ポーチュラカなども十分花を咲かせることができます。
サボテン,多肉植物は,雨のかかりにくい軒下での栽培が適しています。雨の降る露地
でも,排水がよく軽い霜が降りる程度であれば栽培できる多肉植物はあります。
ペチュニア,ゼラニュームなど花が雨に弱い品目は,雨のかからない軒下が適していま
す。ただし,最近は,ペチュニア,ロベリアなどについては,雨の影響がかなり軽減され
ている品種が見受けられるようになってきました。灰色カビ病などが心配されるプリムラ
類についても,排水や風通しがよいなど条件がよければ,意外と露地でも十分開花します
。
栽培マニュアルや種子の袋に書かれた温度よりも,実際は低い温度で冬越しできる品目
は案外あります。生育できない低温にさらされる時間(期間)が短く,それまでの生育状
況,風当たり,日照時間,花壇の土壌条件(排水性,耕土の深さ,肥沃度など)などの条
件がよければ,冬越しができる場合があります。ヒポエステスなどのように,地上部は枯
れても,春に新芽が出てくることもあります。
それぞれの地域で,冬越しができるか実際に栽培し,自分自身で確認することが大切で
す。夏越しについても,同様な考え方をすればよいでしょう。
種から育てると,たくさんの苗ができます。種まきや育苗にかかる労力,経費,利用する
苗の数,適期に苗が得られるかなどを考えて,種をまくか,苗を購入するか決めます。
栽培面積が多い場合には,経費を考えると,種を利用したほうがよいでしょう。「セルトレ
イ」を利用すれば,意外と簡単に苗を作ることができます。ぜひ,挑戦してみましょう。
鉢やプランター栽培のみで,植え付け本数が少ない場合には,苗を購入したほうがよい,
と思います。
自宅では,秋に植え付けたパンジーなどの開花が終わる5月上〜中旬頃と,この後に植
え付けたトレニアなどの開花が終わる10月下旬〜11月上旬頃に植え替えをしています。種
は,次項のとおりセルトレイに播いています。花の品目やセルの大きさなどによって異な
りますが,植え付けのおおむね20〜30日前にどの品目も同時に種播きをしています。
省力化のため鉢上げはせず,セル苗を直接植え付けていますが,天候他諸事情で植え付
けが遅れそうな場合や,前作の花がまだ観賞価値が高い場合には,ポリポット(2〜3号鉢
:直径6〜9a)に鉢上げすることもあります。
なお,は種時期については,発芽適温を考慮しますが,インターネットなどで気象庁の
データから,自分の住所に近い観測所のデータを調べ,参考にします。ついでに,初霜や
遅霜の時期についても調べておくとよいでしょう。霜の発生は,晴天で最低温度が4度以
下になる時期が問題になります。
写真16
@育苗箱(写真16)
種は,格子状に小さく仕切られたます目(セル:部
屋の意)のある育苗箱(セルトレイ)に播きます。た
くさんの苗を短期間で育てたいときには2.5a角のま
す目が二百穴(10×20穴)程度ある育苗箱を選びます
。ます目が小さいと,早く根が土に絡むので,苗は小
さいものの早く植え付けすることができます。それに
育苗箱,用土,育苗箱を置く場所が少なくてすみます
。
ただし,ます目が小さくなると用土の乾燥が速くなるので,水やりの回数が増えま
す。天候がよい場合には,1日に3回必要になります。
ます目の大きさは各種あり,野菜になりますが,インゲンやエダマメなどのように種
が大きい場合には,葉物野菜より大きなます目のものを使用します。2.5p角のセルは
,インゲンやエダマメには小さすぎて,種が膨らむと双葉がセルの中でつかえて発芽
できなくなりました。エダマメの発芽率は,インゲンに比べるとかなりよかったので
すが,それでも発芽できず腐れてしまうものがありました。
また,ある程度苗を大きくして早く開花や収穫を楽しみたい場合には,大きなます
目のトレイを利用するとよいでしょう。ただし,ます目の大きなものについては,根
が土に十分絡むまでの時間がかかるので早めに種を播く必要があります。苗数が多く
なると,用土や箱数が増えるので経費も多くなります。
Aセル苗の特徴
セルトレイで育てた苗(セル苗)は,しっかりと根が土に絡んでから植え付けます
。二百穴のトレイでは,一般的には種後2〜3週間で根が土に絡んだ小苗ができます
。自宅ではほとんどこの苗をそのまま鉢上げせず植え付けていますが,この育苗方法
はとても省力的です。
また,は種や植え付け後はたっぷりと水やりする必要がありますが,畑に水道など
がない場合には,セル苗は植え付け時の水やりは少なくてすみます。植え傷みがほと
んどなく,植え付け後の活着(根が張り,しおれないようになること)が早いことが
大きな特徴です。さらに,この育苗方法では発芽率が高く,管理がしやすく鳥害も受
けにくいので,状況に応じてセルトレイを有効に活用していただければと思います。
ただし,野菜のダイコン,ニンジン,ゴボウなどのような直根になるものは,この
育苗方法には向きません。直播きします。
Bは種用土
用土は,立ち枯れ病などの病気の発生防止,順調な初期生育を考えると,肥料分が
あり,pH(酸度)調整や消毒がされた市販の専用は種用土を用いた方が無難です。
こうした専用の用土は,水をやり過ぎても過湿で根腐れを起こす恐れはありません。
むしろ,苗が大きくなり,晴天の温度が高い日には,1日に2〜3回たっぷりと水や
りしないと,用土がすぐに乾燥して,うっかりすると苗が枯れてしまうことがありま
す。
C種播き(は種)の方法
まずトレイに用土を入れ,表面を軽くならします。日々草やサルビアなどは,別の
トレイを上から重ねて軽く押さえ,五_程度へこませてから種を播き,覆土後表面を
ならします。トレニア,マツバボタン,ペチュニア,キンギョソウなどの微細な種は
その上に直に播き,覆土はしません。写真16は同じ規格のトレイを上から重ねて押さ
え,上のトレイをずらした状態です。
大きな種は,1粒ずつ指でつまんで播きます。小さな種は,親指と人差し指で数粒
つまんで,二つの指を微妙に動かし種を押し出すようにして播きます。慣れれば,キ
ンギョソウなどのようなかなり小さな種もほぼ一粒ずつ播けるようになります。二粒
以上落としてしまった場合には,発芽後間引くか,苗が足りない場合には分けて植え
ます。あるいは,そのまま植えます。
キャベツやハクサイなどのような結球する野菜では,間引きが必要ですが,その他
の枝分かれする葉物野菜や花は間引きをしないでそのまま植え付けてかまいません。
間引かないと,それぞれの株は小さくなりますが,全体としては1つの株が枝別れし
て成長したのと変わらない状態になります。
は種後用土が下の方まで湿り,トレイを持ち上げて,重さを十分感じるまでたっぷ
りと水やりします。用土は,最初は水をはじきやすいので,少しずつ数回に分けてジ
ョロで水やりし,徐々に湿らせます。なお,微細な種子は,種子が流されてしまう可
能性があるので,予め水やりして用土を落ち着かせてから播きます。
なお,用土は乾きやすいので,1日に2回以上は水やりし,用土を乾燥させないよ
うにします。排水がよいので,水のやりすぎで,過湿になり根腐れになったり,病気
が発生したりするようなことはありません。トレイでの育苗で,失敗するのは,用土
を乾燥させ過ぎて苗を枯らしたり,苗の生育が悪くなったりすることです。
Dセル苗の鉢上げ
(写真17)
前作の開花が長くなり植え付けが遅れそうなときには,鉢上げをします。台の上に,セルトレイ,用土,用土入れ,用土を入れた受け皿,ビニールポット(3号),苗取り用の細長い棒などを揃え,手前に腰掛を置くと作業がとてもしやすくなります(写真17)。鉢上げだけでなく,各種作業をするときには,常に疲れない作業姿勢や作業効率を事前に考えておくようにします。 写真には写っていませんが,鉢上げが終わった鉢を入れる育苗箱も手の届く位置に置いておきます。用土を入れておく容器は,底の浅い大きな受け皿を使うと土入れが簡単です。用土は,肥料の入った花専用の用土を使うと便利です。自宅では,庭土をバケツに入れ,NPK成分が各8%の肥料一握りを混ぜて,鉢上げ用土にしています。
。
発芽率のよいものについては,プランター,鉢など苗の数が少なくてすむ場合は,直接
それらに種をまいてもよいでしょう。管理のしやすい小さな花壇についても,直播きです
ますこともできます。
発芽に必要なものは,土壌の水分,温度,酸素ですが,これらが適当でなければなりま
せん。金魚草,ペチュニアなど発芽に光を必要とするものも,中にはあります。
@土壌水分,酸素
土壌水分が多すぎると,種や発芽後の根が酸素不足で腐ることがあります。少なす
ぎると,種が水分を十分吸収できなくて発芽不良になります。ちなみに種皮が硬いア
サガオなどは,種皮を少し傷つけるか,一晩水に浸けてから播くと発芽が良くなると
言われていますが,そうしなくても他の種と同じような水分管理でほとんど発芽しま
す。
ヒマワリなどの種を露地で播いた場合,播いた深さが異なると,土壌水分が適湿で
あれば,深く播かれた種ほど発芽が遅れます。水やり量(土壌水分)が少ないと,土
壌表面近くはより乾燥しやすいので,浅く播かれた種は,発芽が遅れたり,発芽しな
かったりすることがあります。発芽をそろえるためには,種播きの深さを一定にする
必要があります。土壌の表面をでこぼこがないように十分平らにしてから,人差し指
と親指で種をつまんで,人差し指の第一関節のところを目安に埋め込むと,ほぼ一定
の深さに播けます。
A温度
高温や低温で発芽しなかったり,発芽が遅れ,そろわなかったりします。特に高温
条件下では,立ち枯れ性の病気が発生しやすくなります。発芽適温になってから播く
ことが重要です。ただし,パンジーや金魚草などの種播きや育苗を,8月にカンレイ
シャで遮光するなど温度を下げる工夫が上手にできれば,早くから開花を楽しむこと
ができます。
なお,発芽適温について,種子の袋や栽培マニュアルなどに記載してありますが,
中にはヒマワリなどのように,発芽適温が20〜25度(4月下旬〜5月)と高温が必要
とされている品目でも,かなり低い温度でも発芽する場合があります。自宅(喜入町
)では,3月の中旬頃には,こぼれダネからヒマワリが発芽しています。発芽適温は
栽培マニュアルどおりであるかもしれませんが,意外と適温の幅が広い品目もある,
と思われます。マニュアルなどにとらわれず,発芽適温外の温度の時期に,試験的に
種を少し播いてみてもよいでしょう。ひまわりは早く播ければ,台風のこない早い時
期に倒伏の心配をすることなく開花させることができます。
B種子や球根などの休眠
種子やユリ類などの球根の中には,高温乾燥の時期(生育に適さない不良環境)を
乗り切るために,休眠するものもあります。一定期間,適正な高温や低温処理,ある
いは吸水処理(水に浸ける)を行えば,休眠を打ち破り,発芽を促すことができます
。たとえばテッポウユリについては,このような処理をし,9月から順次ハウスに植
え,秋から冬に開花させることができます。
トルコキキョウやスターチスなどは,種子や苗を低温処理(春化処理あるいはバー
ナリゼーション)し,同様に花を咲かせることが可能です。生産者は,通常花が咲か
ない時期に,このような栽培方法で切り花の出荷をしています。
開花結実した株から,自然とはじけ落ちた種(こぼれ種)が翌年発芽し,たくさんの苗
を苦労せずに手にいれることができます。次の花を組み合わせれば,庭植えで多少面積が
多くても,毎年楽に花を楽しめます。
@夏,秋咲き
トレニア,ポーチュラカ,ニチニチソウ,ペチュニア,エキザカム,イソトマなど
A冬,春咲き
クリサンセマムノースポール,ビオラ,リナリア,紫ハナナ,チドリソウ,スイー
トアリッサム,ツルコザクラなど
なお,F1品種(一代雑種)は,その性質が1代限りになります。種が得られても,発芽
した苗は,系統が分離して,元の親とはかなり異なる色や形のものになるので,自家採種
には適しません。F1品種以外のものであれば,自家採種で育苗することは可能です。
苗を増やす方法のひとつです。詳細については,別項を参照下さい。新技術を紹介して
います。ブライダルベールやマリーゴールドなどのように,早いものであれば,挿し芽を
してから,1週間以内に植え付けできるほどの苗を得ることができます。たいがいの草花
は2〜3週間程度で発根し,植え付けできるようになります。アジサイ,ツツジなどの花
木であれば,1〜2か月で,苗が得られます。
ポーチュラカなどは,地面に直接挿し芽をし,2〜3日水やりしておくだけで,簡単に
苗を増やすことができます。ポーチュラカは,こぼれ種で毎年増えますが,放置しておく
と黄色が増えてきます。混色もきれいですが,同じ色で埋め尽くされた花壇は魅力的で,
目が引きつけられます。1株あれば,100株以上に増やすことは難しくはありません。
なお,パテント品種(登録品種,知的所有権の問題)は,個人で楽しむ範囲であればよ
いのですが,勝手に増やして,他人に譲渡や販売することは法律で禁じられているので注
意が必要です。
最も大事なことは,根を風や日射で乾かさないようにして植えることです。土が乾いて
いたら,あらかじめ水やりして軽く湿り気を与えておきます。苗には,植える前に十分水
やりしておきます。植え終わったら,速やかにたっぷりと水やりします。植える苗の量が
多ければ,植え終わった分から順次水をかけます。活着(苗の根が伸びて,日中日が照っ
ても葉がしおれなくなる状態)するまでは,十分に水やりします。
鉢苗の場合,植え付け後間もない内に,苗がしおれ,引き抜いて根を調べてみても,ネ
キリムシなどの害虫や,立ち枯れ病などの病気による被害ではなく,原因がはっきりしな
いことがあります。この原因は,恐らく水やり不足である,と思います。植え付け後の苗
の根は,新しく植えられた土(環境)よりも,今までの鉢土(環境)の中にいる方がなじ
みやすく,中々外へ出ようとはしないのではないか,と考えられます。特に,鉢の中で根
がびっしりとつまっている苗の場合には,すぐに新しい根が伸びにくく,そうなりやすい
と思われます。
このように,根が今までの鉢土の外に伸びていないために,水やりが不足すると,苗が
しおれやすくなるのだ,と考えます。そこで,そのような状態の苗については,鉢の下の
方の根を ,3分の1ぐらいもみほぐしてから植え付けるようにするとよいでしょう。
品目,品種によっておおよその株間の目安はあります。基本的には,購入した種子の袋
に書かれた数字を参考にすればよいでしょう。土が見えないように早く花で一杯にしたい
,雑草がはえないようにしたいと思えば,苗に余裕があり,切り花にしない草丈の低いト
レニア,パンジーなどの草花であれば,株間を狭めても問題はありません。一定の面積に
苗の数が多くなれば,ひとつひとつの株は小さくなりますが,全体としての花数に変わり
はありません。
また,品目,時期によっては病害虫が発生しやすくなるので適正な株間を保つようにし
ます。
地温を上昇させる効果は,堆肥やワラ,腐葉土などの有機物で植物の株元を覆うと,次の
ような効果があります。
@ポリエチレンフィィルムなどより劣るが,冬期は地温の低下を和らげ,生育,開花を
促す。霜や凍結による根の被害を防止,あるいは軽減できる。
A夏は,地温の上昇を和らげる。
B雑草が生えないようにする。
C土壌の乾燥を防ぐ。
D雨で肥料が流亡するのを防ぐ。
これらの有機物は徐々に分解して肥料にもなり,また土づくりをする上でもとても有益で
,環境にやさしい栽培方法なので,お勧めです。
なお,堆肥や腐葉土を,雑草防止を目的として利用する場合には,雑草が芽生え始めた時
に地表面を覆うと効果的です。